とある百合好きの駄文置場。二次創作SSやアニメ・漫画等の雑記中心。ゆいあずLOVE!

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メルルのアトリエSS トトリ×ミミ 『人気者の憂鬱』

※ED「人気者の今日」の補完的な話。ネタバレ注意報。

追記からどうぞ。



緑多い茂る自然に囲まれし場所――アールズ。
未開拓の小さな王国だったかの地も、たった5年という短い期間に目まぐるしい発展を遂げた。
その影で活躍したのが一人の錬金術師であることは皆が知っている。
メルルリンス・レーデ・アールズ。
彼女は王族の姫でありながら錬金術に魅せられた一人であり、師匠の教え、そしてその身一つで歩み始めた錬金術師を以て、アールズ開拓を見事成功させた功労者でもある。
彼女と――そして他全ての協力者によって国は発展、人は集まり、今や昔のアーランドとも肩を並べるほどの大国となったアールズ王国。
そんなアールズ王国も今や、アーランドとの合併を結び、無事に共和国制へと移行したのである。

その日からひと月余りが経った頃――。


『人気者の憂鬱~人気者の今日After~』


アールズ王国の姫としての責務を果たし、名実共にアールズの錬金術師となった私ことメルルは、今日も仕事に錬金術に素材採取にと目まぐるしい日々を送っている。
……はずだったのだが。

20120215-3.jpg

どうしてこうなった?

「メルルは私と魔物退治に行くのよ!二人っきりでね!だからその手を今すぐ離しなさいトトリ!」
「むうー、それはこっちのセリフだよミミちゃん。メルルちゃんは私と素材採取に行く約束してたんだもん。ミミちゃんこそさっさと諦めてその手を離してよ」

何をどう間違ったらこうなるのか。あるいは最初から間違いだらけだったのかもしれないけれど。
とにもかくにも自分の意思とは無関係の方向で頭を悩ませなければいけない状況に訝しげに思いながら、自分が撒いた種が原因であるのは重々承知なのであまり大きな事が言えないのもまた事実。

今日はトトリ先生と素材採取の約束をしていた。
今日はミミさんと魔物退治の約束をしていた。
同日同時間に二つの約束。つまりはダブルブッキング。
そうなってくるとどっちかの約束はお流れになってしまうのだが…、

「ちょっ、ちょっと二人とも、少し落ち着いてください!」

どちらの約束を果たすかで揉めに揉めるトトリ先生とミミさん。
一触即発になりつつある二人に割って入る形で――と言うよりすでに二人の間で四苦八苦しているのだが、二人とも変に意地を張っているのか、私の言葉に耳を貸そうともしない。

「ミミちゃんが先に離してよ!」
「トトリが先に離しなさいよ!」

ああ…普段は目を背けたくなるくらい仲睦まじい二人なのに…。
私情友情愛情の果てに二人は永遠の友情を誓い合ったはずなのに。
どう頑張っても私には目の前にある現実が信じられなかった。

(…やっぱり夢だよね、これ…)

両耳の鼓膜を刺激する二人の怒声を聞き流しつつ頭を振るう。
あの日、ミミさんからトトリ先生へ手渡された虹のかけらのペンダントはちゃっかり先生の胸元で……ってあれ今日はしてないんですね。

(おかしいなぁ…いつもはちゃんと掛けてるのに)

それこそ仕事中でも関係ない。時間さえあれば胸元に掛かったそれを見つめて熱い溜息をつくトトリ先生。恋する乙女のような眼差しで、誰か大切な人を思い浮かべているような表情で、これでもかと言うくらいうっとりしてるのに。

間接的にも当事者である私はあの日の事を思い出し今一度頭を横に振った。

とにかくこれは夢だ。夢じゃなきゃ幻だ。幻想だ。あまつさえ錯覚だ。私は必死にそう思おうとしながら空を見上げて溜息一つ。夢なら覚めてと目を閉じた。
しかし現実はそう甘くない。どんなに現実逃避したところで目下の惨劇が変わるはずもなかった。

「わ、私もメルルとお出掛けしたいんですが…」

ふとケイナの声がして反射的に目を開けるが状況は何一つ変化していなかった。むしろ悪くなる一方のような。トトリ先生もミミさんも私の言葉には耳を貸さないくせにケイナの言葉には耳聡く反応したようで、

「「何か言った!?」」
「い、いぇ何も…グスン」

百戦錬磨の猛者すら裸足で逃げ出す御二方の眼力になす術もないケイナ。
涙ながらに意気消沈。もはや戦う気力すら湧かないのか項垂れたまま念仏を唱え始める。

「…うう…どうせ私なんて…」

世界最強のメイドとしてその名を欲しいままにしたあのケイナを一瞬で黙らせるなんて。今のこの二人なら神様だって一瞬で消し炭に出来るのではないだろうか。

(ああ、可哀相なケイナ…ごめんね、私が約束を二つ入れちゃったばかりに…)

ただ一人の幼馴染(実際はライアス君もなのだが)を助けてあげられない不甲斐ない私をどうか許して欲しい。でも私も色々と一杯一杯だからね。特に腕の痛みが半端なくて。

「ねぇねぇメルルちゃん。メルルちゃんは私と採取に行きたいよね」
「え、えーとそれは…ど、どうでしょうね…あはは」

下手な事を言えず苦笑いで返すヘタレな私。
この際だから魔物退治も素材集めも一緒にしてしまえばいいじゃないかと思ったが、何故かそれ以上先は喉に言葉が引っ掛かって出てこない。理由はなんとなしに分かっていた。悟っていた。それだけは言ってはいけないと本能が訴えかけていた。
口を噤む私に痺れを切らしたのかトトリ先生はさらなる行動に出る。

「ねぇねぇメルルちゃーん」
「ちょっ!? と、トトリ先生?」
「っ…!?」

トトリ先生は上目遣いで猫撫で声を発しながらまるで誘うように私の腕を胸にキュッと挟んでくる。普段のトトリ先生なら絶対にやらなそうな行為。ていうかまずやらない。
これ本当にトトリ先生ですか? 偽者なんじゃないですか?
しかもそれは私を誘惑していると言うよりは私の隣の人物に見せ付けているだけのように感じるのは気のせいだろうか。いや気のせいじゃない。現にトトリ先生の視線は私の事などまったく見ていない。
どう頑張って見てもその先にいるお隣様一直線だ。
つまりミミさんまっしぐらってことで。

「あ、あのトトリ先生、お願いですからちょっと離れ――うぼらっ!?」

トトリ先生の柔らかさをその腕にダイレクトに感じながらもそう促すと、瞬間、おおよそ女の子が――元お姫様が発したとは思えない呻き声をもって右腕がメキメキと軋み始めた。

「あいだだだっ!! ちょっ!? ミミさん!? 腕! 私の腕が変な方向にぃいいいい!!!」

一流の冒険者であるところのミミさんの腕力はそこら辺の一般兵士とは比べようもない。腕に走る激痛は相当なもので一歩間違えれば脱臼やら骨折は免れない。

「トットトトトトリっ!? いいい今すぐその手を離しなさいっ!! 私だって…ごにょごにょ…トトリに…ごにょ…そんな…ごにょ…ないのに…ごにょごにょ…羨まっ…じゃなくて! メルルが嫌がってるじゃないの!」

ミミさんの憤怒のオーラを撒き散らしながらそう言った。
――私を一直線に見つめながら。

「ちょっ!? ど、どうしてそれを私に言うんですか! ト、トトリ先生に直接言ってくださいよ!」
「は、はぁ!? なな何を言うのかしら? わわわ私はトトリの魔の手からメルルを助け出そうと……と、とにかく離れなさい! 今すぐ! 槍の錆びになりたくなかったらさぁ早く!」
「ひぃっ!?」

とは言うものの、やはりミミさんの視線はしっかり私を貫いていた。逸らす事なく私の目を指し貫いて鬼神の如き形相。そう形容するのが一番か。
今すぐ離さなければその首を飛ばすと言わんばかりに目で訴えかけ、当然腕はメシメシと嫌な音を立てる。

「だ、誰か助け…! け、けいなぁぁーー! へるぷみーーー!」
「えー別に嫌じゃないよね? メルルちゃん? ね?」

そして困ったのは何と言ってもトトリ先生の方だ。トトリ先生に比べればミミさんはまだ可愛いものだと思う。
トトリ先生、もしかして狙ってやってます?
ミミさんの憤怒などお構いなしに、まるで火に油を注ぐかのように私の腕を取りながらぐいぐいと容赦なく柔らかなソレを押し付けてくる子悪魔トトリ先生。ささやかではあるのだかが、柔らかくて気持ちいいのは確かなので少し気恥ずかしくて顔が緩みそうに――。

――ゾクッ

そんな時だった。
一瞬、背筋がゾッとするような悪寒が駆け巡り全身の神経が硬直、麻痺させる。
ゴクリと生唾を飲み込む。
主に右隣から発せられたそれは無論あの人のもので。
本能的に見てはいけないと警笛を鳴らしつつも怖いもの見たさに視線を横に向けた私はたぶん馬鹿だ。
そう……見なければ良かったと後で後悔してももう遅い。
すでに見てしまった後だったから。

「み、ミミさん…?」
「ナ ニ カ シ ラ?」

鬼が――そこにいた。

メキッ!メキメキッ!ゴキッ!?
そんな嫌な音が絶えず私の左腕から聞こえて。

「いぎっ!? ぎ、ギブギブッ! だ、だから痛いですってばミミさんっ! ああっ! 折れる折れるっ! 腕が捥げるうう!? 取れちゃううううう?!」

軋んだ音を立てる私の腕。力がまったく入らない。感覚すらなくなってきた。やばい。でもミミさんの目の方がもっとやばい。ミミさんのその瞳は安易に語っていた。
一瞬でも邪まな事を考えて見なさい。次はない。眉一つでも動かそうものならこの愛槍で胴体ごと真っ二つに切り裂く、と。
ただの妄想と言われればそれまで、しかしそんな物騒な考えが捨てきれないのはこれ如何に。

「いっ、いやあのだからそのっ!……と、とりあえずそろそろ離れてくださいトトリ先生…!」

命の危険を感じながらも何とかトトリ先生にそう促すが、

「えー…」

やはり離す気配のない困ったトトリ先生。

「そ、そうよっ! いい加減離れなさいメルッ…じゃなかったトトリッ!」
「あ、あれ…ミミさん今一瞬私の名前…言いかけてませんでした?」
「そそそんな事あるわけないじゃない! べ、別に…ごにょ…トトリ…胸が…ごにょごにょ…押し付け…羨ま…ごにょ…なんて事これっぽっちもぜんぜん思ってないんだから!」
「はあ………そ、そうですか」
「ほ、ほらいい加減トトリなんか放っておいて魔物退治に行くわよメルル!」

言いながらミミさんは照れて赤くなった顔を誤魔化すように私の腕に自分のそれを絡めて引っ張り出した。トトリ先生の時同様、そこはかとなく柔らかな感触が腕に纏わり付いて実にこそばゆい。
なんて役得を感じつつ顔が緩みそうになった次の瞬間――、

「――×○▲◇っ!?」

ミミさんのその一言が切欠だったのか、それともその行為そのものが逆鱗に触れたのかは定かではないが、今度は反対側の腕がミシリと音を立てた。
あまりの激痛に声にならない声をあげる私。当然それがトトリ先生の与える痛みであることは百も承知。

「……ミミちゃん。今すぐその腕を離そう。大丈夫だよメルルちゃん。私は先生だから怒ったりしないから、ね?」

しかし感じる悪寒はミミさんの比じゃない。怖い。ただ一言それだけ言いたい。ていうか途中から言ってる事が支離滅裂になってるというか。対象が変わってるというか。

「もう…仕方ないなぁ…今から3つ数えてあげるからその間に離そう、ね?」
「それ本当にミミさんに言ってます?! てかどうして二人とも私の目を見て話すんですか!?」

トトリ先生は全ての感情を無くしたような能面のような表情で私を見る。私は慌てて逸らす。見たら最後。心臓は止まる。先生の般若の形相に比べたらミミさんの鬼の形相なんてドラゴンとぷに位の差がある。 

メキ!ゴキッ!

「うがっ!?…ああ、あのっ!! トトリ先生お願いですからもう少し力を緩めて――」
「いつまで馬鹿やってるのメルル! 素材採取と魔物退治どっちが大事だと思ってるのよ!」
「ええー! そ、それは…」

どっちも。と言ってもたぶん罰は当たらないと思うけれど。
もう何を言っても藪蛇にしかならない気がした。

「一流の冒険者はお互いの背中を守るために単独で行動したりはしないの! 私の背中を任せられるのはメルルしかいないんだから!」
「ふーん。そっか。そうだよね。私と違ってメルルちゃん強いもんね。私なんてバカの一つ覚えみたいに爆弾投げるしか脳がないしね」

それは私も大して変わらないですよトトリ先生!
うに投げてクラフト投げてフラム投げてレヘルン投げてメテオール投げて。投げてばっかりの5年間だったじゃないですか!てかそれ以前に永久機関搭載してるトトリ先生の方がよっぽど凶悪じゃないですか!弱いとか何カマトトぶっちゃってるんですか!?

「ミミちゃんもそう思ってるんでしょ? 私みたいな弱い子には背中は任せられないって」
「っ!? だ、誰もそんなこと言ってないじゃない! 確かにトトリには任せられないけど……でもそれは!」
「ほらやっぱり」
「ち、ちがっ…そ、それは任せたくないからじゃなくて、アンタの背中は私が護るって決め――」
「あーあー聞こえなーい。ふーんだ。別に言い訳しなくてもいいですよーだ。ちゃんと分かってるもん。鰯にも負けちゃうような私がミミちゃんの相棒なんて務まるわけないよね。ふーんだ」
「いや全然分かってな――!」
「どうせミミちゃんは私みたいなちんちくりんでどんくさい子より、メルルちゃんみたいな綺麗で可愛い胸の大きいお姫様が好きなんでしょ?」

あのトトリ先生。私もう姫じゃないんですけど。ていうかそれ以前に綺麗とか可愛いとか本人を前に恥ずかしいこと言わないでください。ていうか胸のところ随分強調しましたね。

「最近のミミちゃん、何かにつけてメルルメルルって。メルルちゃんのことしか話さないんだもん。そりゃそうだよね。私はただの友達でメルルちゃんは大親友だもんね。雨の日も風の日もアトリエの前の石垣に腰掛けてメルルちゃんの様子を窺ってるくらいだもんね」
「そ、それはっ!」
「ふんだ。そんなに好きならメルルちゃんと結婚すればいいよ。ぷいっ」
「!?」

違いますトトリ先生!ミミさんが5年間ストーカーのように様子を窺ってたのはトトリ先生の方ですよ! 少しは察してあげてください!さすがにミミさんがかわいそうです!

「こ、このっ…言わせておけばっ! 何よ! そう言うトトリだってメルルの相手ばっかりで私の相手なんて全然してくれないくせに!」
「えっ!…あー…そ、そんなことない…よ?」
「そんなことあるわよ!」
「…えー…?」

今一瞬考えましたよね。実は思い当たる節があるんじゃないですか先生?
でも確かにミミさんの言うとおりかも。タイミングが悪いのかどうかしらないけど、思い返してみればミミさんとトトリ先生の遭遇率はそんなに高くない。運が悪いと言われればそれまでだけど。

「私がアトリエ訪ねてみれば狙ったようにアンタはいないし!そわそわしてたのが馬鹿みたいじゃない!」
「そ、そうだったの?」
「おまけに決死の覚悟でお出掛けに誘ってみれば仕事があるからって断られるし!」
「えーと…そんな話したっけ?」
「くっ…挙句やっとお出掛けできたかと思えば私なんかそっちのけでメルルと楽しそうにお話してるし!」
「え? だってあれはメルルちゃんに頼まれたからで…」
「錬金術もいいけどちょっとは私のこと気に掛けてくれてもいいじゃないのよ!? 私寂しかったんだからね!?」

ミミさんにしては珍しく自分の心の内を吐露していく。それともただタガが外れてしまってブレーキが壊れただけかもしれないが、トトリ先生に対する不平不満が次から次へと飛び出して止まらない。

「むぅっ…そういうミミちゃんだってたまには私に対して素直になってくれてもいいじゃない!」

いや今とっても素直になってますよミミさん。ピュアトリフなしでここまで素直なミミさんなんて未だ嘗て見たことありませんよ。折角だから一緒にお風呂に入ったり、一緒のお布団で寝たい旨も話してあげれば…いや何でもないです。
と、とにかくちょっとは気付いてあげてください先生!朴念仁にもほどがあります!

「いっつもいっつもツンツンしちゃって!」

先生…それは仕方ないですよ。それがミミさんの運命っていうか。あるべき姿といいますか。とにかくそれをミミさんに求めるのは酷ってやつですよ。

「ミミちゃんが素直になってくれたのなんて私にペンダントくれた時だけじゃない!」

20120215-4.jpg
コレデスネワカリマス

「あの後ちょっとは何か変わるのかなって少し期待してたのに! 自意識過剰な私がバカみたいだよ!」
「んなっ!?」

トトリ先生がそう言った途端、茹ったタコみたいに顔を赤くするミミさん。あの日の事を思い出しているのかも。確かにあれは見てるこっちが恥ずかしくなっちゃうくらいラブラブタイムでしたけども。

「ミミちゃんの性格考えたら仕方ないかなって、そう思ったときもあったよ。でもなんだかんだでメルルちゃんとは結構素直に接してるし。私見ちゃったんだからね! メルルちゃんとミミちゃんがアトリエの前で楽しそうにお話してるの!」

楽しそうに話してたって……。
ああ、それたぶんトトリ先生の話をしてたときですよ。
ミミさんってトトリ先生のこと話す時、すっごくイイ笑顔するんですよね。

「ミミちゃんがあんな楽しそうに笑ってるの初めて見たもん! あの笑顔の半分でもいいから私にも向けてくれたらよかったのに! 私の前ではしかめっ面ばかりだし!」
「それは…! だって…恥ずかしいし…ごにょごにょ…」
「だからもうミミちゃんには何も期待しないことにしたんだもん!」
「くっ…わ、私だってねぇ! トトリになんて何も期待してないんだから!」

嵐のような口論を右に左に聞きながら、気付いた時には私の腕は解放されていた。
すでに私の事など目に入っていないのか(最初から私の事なんてみてなかったけど)顔を突き合わせてあーでもないこーでもないと大喧嘩が始まったかと思えば、今にも掴みかかりそうな勢いで、日頃から溜まったお互いの鬱憤を解放していくのだった。
さ、さすがに止めた方がいいよねこれは。

「あ、あのーお二人とも、喧嘩はほどほどに…」
「メルルちゃんは黙ってて!!」「メルルは黙ってなさい!!」
「は、はいぃ~…しゅみませ~ん……グスン」

あはは~♪ 人気者は辛いなァ。なんて冗談はさておき。
うん。分かってる。なんか違うよね。いやまぁなんとなく最初からおかしいなとは思ってたんだけどさ。

「はあ…まったくこの御二人には困ったものですね…」
「あ、ケイナ…復活したんだ?」
「ええ、まぁ」

先ほどまでこの世の絶望を一身に背負いつつ念仏を唱えていたはずのケイナが何食わぬ顔で私の隣に立っていた。

「えーとさ…結局これってどういうことなの?」
「まあ、一言で言うならヤキモチですね」
「え? ヤキモチ? そうなの?」
「ええ。同じ相手にヤキモチを妬き合うなんて御二人らしいと言えばらしいですけど…、それよりメルル。秘密バック持ってます?」
「え? うん…そりゃ持ってるけど…どうするの?」

私は言われるまま秘密バックを手渡しケイナの様子を窺う。秘密バックとはアトリエのコンテナと次元が繋がった便利アイテムなのは言うまでもないが、さて。
ケイナは秘密バックの中を吟味しつつ、うーんと頭を悩ませながらとあるアイテムを取り出す。

「あ、あのケイナさん? どうしてピースメーカーなんて物騒な物を取り出すのでせうか?」

しかもそのピースメーカーは特別製。どんな敵でも一瞬で消し飛ばせるようにと特性強化を極限まで極めた大量殺戮兵器。下手をしたら国ごと吹き飛ばしてしまうほどの危うさを含んだそれを、さすがの私も使う事を躊躇し厳重に封印していたのだが、

「ど、どうしてケイナがそれを…」
「うふふ♪ メルルの事なら何でもお見通しですよ。それに…コンテナの中を整理してるのは一体誰だと思ってるんですか?」
「そ、それは……い、一応聞くけど、そのピースメーカーどうするつもりなの…?」
「え? それは当然あの御二人に向って放つつもりですが、何か?」

笑顔でとんでもない物騒なこと言い出したよこの子!?

「いやちょっ! そ、それはさすがに! せ、せめてフラムぐらいでっ…」
「うふふふふ…私のメルルをダシに痴話喧嘩なんてしてるような人達に容赦する必要なんてないんですよ」

今さりげに私の所有宣言したけど、とりあえず聞かなかったことにしておこう。

「それとメルル」
「は、はい!」
「八方美人も大概にしてくださいね。もとはと言えばメルルが全部悪いんですから。次にこんな事があるようなら……おしおきですよ」

張り付いたような恐ろしい笑みを浮かべながらケイナはそう言うと、

「ミミちゃんのバカ!鈍感!とーへんぼく!」
「なっ、それはこっちのセリフよ! ちょっとは人の気持ちも――」

未だに犬も食わないような痴話喧嘩を続ける二人に向けて、

「うふふ、発射♪」

容赦なく大量破壊兵器を放って見せた。


その日アールズの街はずれが草木も生えぬ焦土と化したのは言うまでもないが、奇跡的にも死者や怪我人は出なかったそうな。


 *


「……酷い目にあったわね」
「あはは…そうだね」

ケイナの暴走によって破壊兵器の的になった私とトトリだったが、爆風の煙に身を隠しつつ命かながら逃げ出すことに成功した。
ここは街はずれにあるアトリエ。
無論、先ほどまでいた場所からそう遠くないので外では未だに断続的な爆発音が響いていた。この調子では城から誰かが駆け付けるのも時間の問題、そう考える。

「………」
「………」

アトリエに備え付けのソファに身を落としながら私とトトリは無言で天井を見上げる。
なんとなしに居心地の悪さを感じつつも、お互いを意識せざるをえないこの状況。さてどうしたものかと思案していると、ふと肩に確かな重量感を感じた。
優しい匂い。温かなぬくもり。私の大好きな、愛しいそれは。

「トトリ…?」
「…ん」

寄り掛かるトトリに呼びかけると、私の存在を確かめるようにして身動ぎながら、ほうっという熱い溜息をつくトトリ。それからボソリと蚊の鳴くような小さな声で、

「……ごめんねミミちゃん」
「……なにがよ?」
「こんな事になっちゃって。私が変に意地を張らなきゃこんな事にならなかったよね」
「それは……私も同じよ」

意地を張って、くだらないヤキモチを妬いて、それでもやっぱり不安で。
トトリにとってあの子が大事な生徒だってことは知ってるし、それ以上でもそれ以下でもないって分かってるけど、日に日に仲良くなっていく二人を見るのはやっぱり辛かった。
私も、トトリとあんな風に…そう思ったのは一度や二度じゃない。
だから知らしめてやりたかった。トトリにも。私が感じている不安を。
メルルと仲良くしているところを見せつければ少しぐらい私と同じように感じてくれる。そんなバカな事を考えてしまった。
本当に私はバカだ。

「ミミちゃんの事なら何でも分かってるつもりだったんだけどなー」
「そ、そうなの?」
「うん。でも今日の事はさすがに見抜けなかったよ。ミミちゃんがメルルちゃんばっかり気にするから頭に血が上っちゃったみたい」
「わ、私も…同じね、それは」
「私たちって似たもの同士なのかな?」
「そ、そうかもしれないわね」

トトリはクスっと軽く笑って見せる。

「私の事なら何でも分かるって言ったけど…たとえばどんな?」
「え? んー……そうだね。アトリエの前でいつも座ってるのは私が気になるから、とか?」
「ぶふうっ!」
「あとはそうだなぁ…、私が安心して前だけ見ていられるのは誰かさんが私の後ろを護ってくれてるから、とか?」
「うっ……って! し、知ってたの!?」
「ふふ♪ もちろんわかってたよ。もう10年以上の付き合いになるんだもん。ミミちゃんの事なら何でもお見通しだよー」
「そ、そう…そうなのね」

でも一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たりしたいことはさすがに知らないでしょう。し、知らないわよね? メルルから聞いてたりしないわよね? あと私がトトリのこと好きで好きで堪らないのとか。
で、でも…この子なら全部わかってたりして。

「わ、私だってトトリの考えてることくらいだいたいわかってるわよ?」
「今日の事は読めなかったのに?」
「う、うるさいわね! きょ、今日はたまたまよ!たまたま!」
「ふ~ん。そっか。でもそうだね…じゃあこれは知ってるかな」
「え?」

それは刹那の時だった。
気付いたときにはトトリの顔が目と鼻の先にあって、あっ!と思った次の瞬間には私の唇はトトリのそれに塞がれていた。
見開かれる瞳。視界一杯に広がったトトリの顔。
トトリの甘い香りが鼻腔を擽って、柔らかな唇に心臓が張り裂けそうなくらいドキドキして、トトリが唇を離す頃には私の顔は茹蛸みたいに真っ赤に染まっていた。
放心状態。何も考えられない。ただ一つ分かる事はトトリにキスされてたってことだけで。
ボーっとした視界の中でトトリはふにゃっとした可愛らしい笑みを浮かべて。
私の耳元に唇を寄せると、そっと告げるのだった。

「私が、ミミちゃんのこと大好きで大好きで堪らないってこと…知ってた?」



END



【あとがき】
想像力を鍛えるには妄想するのが一番なんだから! byフィリー

妄想せよ若人たちよ!

トトミミは至高なり。
[ 2009/04/04 20:26 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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