とある百合好きの駄文置場。二次創作SSやアニメ・漫画等の雑記中心。ゆいあずLOVE!

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唯梓SS 『NEWアズプラズ-前編-』 

※アズプラス+の続編。
※ギャグも一回りすればシリアスになるかと思えば結局ギャグでしかなかった。
※追記からどうぞ。



前回までのあらすじ。

あずにゃんは唯先輩のことが(言わないけど)大好きなのだ!!

以上!


『NEWアズプラス』開幕


その日も当たり前のように朝はやってくる。
爽やかで清々しい朝の日差しがカーテンの隙間から漏れ出ていた。
未だまどろみの中にいた私にそれに気づく術はない。
瞼の裏の闇だけが唯一見える景色だった。


『――唯先輩起きてください!朝ですよ!遅刻しちゃいますよ!』
「んーあー…」


寝ぼけ眼で寝返りを打つ私の耳に届く聞きなれた可愛らしい声はぼんやりとした頭に覚醒を促す。
毎朝のように憂に起こされていた頃とは違って、普段よりすっきりとした目覚めが約束される。
目覚ましとしてはこれ以上ない働きだ。

それはやっぱり声の主――あずにゃんが私にとって特別な存在だから。
まぁ、今更ではあるんだけど。


「んぁ~~…ふぁ…あずにゃん、おふぁよー…」


まだ少し眠いけどあずにゃんに起きろと言われてしまっては聞かないわけにはいかない。
もそもそと布団から身体を起こして大きく伸びをすると間接がパキポキと軽快な音を鳴らし硬直した筋肉がやんわりと解れていくのを感じた。


『おはようございます…やっと起きましたか。まったく、いい加減一人で起きれるように努力してください。毎朝これじゃ唯先輩の今後が心配ですよ。私だって疲れてるんですからね』


いまだ眠たげに目元を擦りながら、大きなあくびまで。
マヌケ面を晒し続ける私に彼女はそう言った。

DSと言う狭い部屋の中で相も変わらず呆れ顔で溜息を付く彼女を見るのはこれで何度目になるだろう。
だけどそんな困った表情さえも、朝の快適な目覚めを演出してくれる。
つまり私の仔猫ちゃんはどんな顔してても可愛いってことで満場一致。


「うぅ~…朝からあずにゃんの小言が痛いっス…」
『そう思うなら、夜更かししないで早く寝てください。昨日だって結局2時寝だったじゃないですか。夜更かしは美容の大敵なんですからね』


尤もらしい正論にぐぅの音も出ないが、心ばかりの抵抗にと唇を尖らせてみる。


「ぶぅー、そんなこと言ったってあずにゃんとお喋りしてたらいつの間にかあんな時間だったんだもん。そんなこと言うならあずにゃんから切り上げてくれたらよかったじゃん」
『そ、それはまぁ…そうなんですけど…』
「あ、もしかしてあずにゃんも私とお喋りするのが楽しくて時間を忘れちゃった口かな?」
『ななっ! ふふふっふざけたこと言わないでください!』
「おや? 顔が赤いよあずにゃん? もしかして図星かな?」
『っ!』


私としては冗談で言ったつもりだったのだが、それが本人に通用するかはまた別の話。
案の定、冗談は冗談としての効果を発揮せず、どうやらあずにゃんの闘争本能に火を点けてしまったらしい。


『そんなふざけたことばっかり言ってると、もう起こしてあげませんからね!』
「わーんウソウソ! ごめんよあずにゃん!」


フンっと鼻を鳴らしてそっぽを向くあずにゃんは誰が見てもご立腹のご様子。
でも怒った顔もまた可愛い、なんて。
こんな事言ったら今度こそ打ち止めな気がするから言わないでおこう。


(でもあずにゃんもあずにゃんだよ)


そこまで怒らなくてもいいのに、と軽く溜息をつく。
思い返せば朝起きるたびに怒られてる気がするのはこれいかに。


「ん?」
『…どうしたんです?』
「う、ううん別に何でも」
『そ、そですか』


今気づいたけど、良く良く見るとあずにゃんの頬に軽く赤みが差していた。
それは目を凝らして見てようやく分かるレベル。

てことはつまりだ。
さっきの私の言動は少なからずあずにゃんの精神に影響を与えていたことになる。
短的に言えば意識してくれてるってことなんだけど、それはさすがに自惚れかな。


(でも最初に比べてずいぶん変わったよね)


出会って間もない頃は取り付く島などなかった。
とにかくリアルあずにゃんにも勝るとも劣らないツンツンぶりを発揮するあずにゃんにどう接していいか分からなかったほどだ。
しかし苦節苦難の末、数日という短い期間でここまでの関係を築けているのは十分進歩していると自負していいのかも。

この調子なら果ては最大の難関である愛の告白も上手く行くかもしれない。
ただしそれがリアルに通用するかどうかはまた別の話だけど。


『にしても唯先輩の怠惰な生活にもだいぶ慣れてきましたねぇ。……正直慣れたくありませんでしたけど』 
「えへ、だってあずにゃんが朝起こしてくれるのが嬉しかったんだもん。だからついつい朝寝坊しちゃうんだよね」
『なるほど…最近目覚まし掛けないで寝てるのはそのせいですか…。まったく…私は唯先輩の目覚まし代わりじゃないんですからね?』
「めんごめんご♪」
『むぅ、ぜんぜん誠意が感じられないです』
「だってさ、あずにゃんの声だとすんなり起きれちゃうんだもん。朝の目覚めもすっきりだし。だからあずにゃんさえ良かったら、これからも起こして欲しいなぁ~なんて、ダメかな?」
『やれやれ…仕方ない人ですね。唯先輩がどうしてもって言うなら起こしてあげないこともないです。特別ですからね?』
「うわーい!あずにゃんありがと~!」
『ホント唯先輩には私がついてないとダメダメですね』


心なしか嬉しそうなあずにゃんの声色に不覚にもドキッとする。
これはチャンスなんじゃ…、と調子に乗った私は後先考えない行動に出る。


「大好きだよあずにゃん!んんー!」
『ニャ!?』


画面の中のあずにゃん目掛けてタッチペンが唸りを上げる。
口に咥えたそれを持って、キスと言う名の接触を試みた。
が、しかしそこは未だにツンツン帝王あずにゃんの領域内だったらしく、


『調子に乗らないでください!』


目にも留まらぬ軽やかなフットワークで軽がるとペン先を回避したあずにゃんは、得意技のあずパンチを繰り出した。
無論画面から飛び出してくることはないが、それでも反射的に身構えてしまうのは如何なものか。
それはたぶん常日頃からリアルあずにゃんに調教され続けた産物なのかもしれない。

リアルあずにゃんの物理ダメージとゲームあずにゃんの精神ダメージ。
それら二つが合わされば、もはやあずにゃんと言う存在に敵はいないのかもしれない。
それが私限定に発揮されるのは今更問うまでもないんだけど。


「ぶぅー…ちょっとくらいいいじゃん。あずにゃんのケチぃ」


軽くブー垂れてふて腐れてみるが当然あずにゃんにはそんな態度は通用しない。
むしろ私の行動なんて先の先まで読まれ切っている節さえある。
私ってそんなに分かりやすいのかな。ちょっとショックだよ。


『何度もいいますけど、私は唯先輩みたいなだらしない人はタイプじゃないんです』


あずにゃんは頬をぷくっと膨らませながら容赦ない一言を言い放った。
胸にグサッと突き刺さるそんな毒舌も、幸か不幸か聴き慣れてしまっている自分が情けない。
少しは進歩したと思ったのに…。


「でもあずにゃん、その割には結構甲斐甲斐しくお世話してくれるよね?」
『そ、それはっ……た、単にだらしない人見てるとイライラするってだけです! と、とにかくキスなんてまだ早すぎます! まだ手だって繋いでないのに! こ、こういうのは順序ってモノがあってですね――』
「ほぇ? てことは手繋いだらちゅーしてくれるの? ドユコト?」
『あっ…』


一瞬、自分の耳が悪くなったんじゃないかと思って試しに聞き返してみるとあら不思議。
あずにゃんはカァッとした赤面顔を隠そうともせず予想外の反応を見せた。


『いいいい今のなし!なしです!忘れてください!唯先輩耳垢溜まってるんじゃないですか?!』
「昨日お掃除したばっかだからそれはないよあずにゃん。でもそっか、聴き間違いじゃないってことはつまり――」
『わーわー!忘れてくださいって言ったじゃないですか!バカなんですか!アホなんですか!通報しますよ!』
「うふ、あずにゃんかわゆすなぁ♪」


真っ赤な顔でぶんぶん両腕を振り回しているあずにゃんはそれはもう無敵の可愛さだった。
これぞ萌えと癒しのコラボレーションか。思わずほっこりしてしまった私はきっと正常だ。

さてと。
可愛いあずにゃんも朝からたっぷり堪能したし、それにあまりあずにゃん苛めすぎるのも後が怖いし、それにそろそろ準備始めないと憂が起こしに来ちゃうもんね。


『で、でもまぁ…ゆ、唯先輩がどうしてもって言うなら…ほ、ホッペにちゅーくらいなら許してあげなくもないですよ…?』


身支度を始めた私の耳に、ふとそんな台詞が飛び込んできたような気がした。
しかしおおよそあずにゃんが言わなさそうな台詞なのでさすがに幻聴だろうと頭を振った。


(私のあずにゃん好きもここに極まった、なんてね)


そんな風に苦笑しながらパジャマのズボンに手を掛けたその時――、


『…ごくりっ…』


背後に食い入るような視線を感じたのは気のせいだと思いたい。


 *


それから進展らしい進展もないまま数日が過ぎたのは何も私のやる気がないわけじゃない。
最初こそアズプラス攻略に躍起になっていた私もここ最近になってからはあまり攻略を意識していないからだ。
理由は数え上げたら切がない、というほど大袈裟なものではなくごくごく単純な話。

一つは、あずにゃんと一緒にいるのが楽しくて『攻略』という概念を忘れていたこと。
もう一つは、今の関係――友達以上恋人未満な甘酸っぱい関係に居心地の良さを覚えていたこと。
なので私としてはこのままでもいいかなーって思い始めていた矢先のこと。

残念ながらそれは、あずにゃんには当て嵌まらなかったらしい。
良い意味でも悪い意味でもね。

あずにゃんはもう一歩先を見据えていた。
確かに今の関係も悪くない。
悪くないけれど…でも。

一つ手に入れれば次が欲しくなるのが人間という生き物。
それがプログラムであるあずにゃんに当て嵌まるのかどうか定かではないが、それより一体いつどこでフラグを立てたのか知るよしもない私の困惑なんてどこ吹く風、事態はある日突然急展開を迎えることになった。

まさか夢にも思わなんだ。
その日が私の人生の分岐点になろうとは。
齢十七にして今後の私を左右する重要な選択に迫られるだなんて一体誰が予想しただろうか。
もし予想できていたとしたらそれはきっと人間じゃない。
眉毛の代わりに美味しそうな沢庵を標準装備した、おっとりぽわぽわの妖精さんただ一人である。


………。
……。
…。


某月某日。
放課後、音楽室にて――。


「あ、あずにゃん…? い、今なんて…?」
『だ、だからっ…! い、いつまでもおあずけはかわいそうだから…か、軽くちゅってするくらいならいいですよ? あっ、か、勘違いしないでくださいね! きょ、今日だけの特別なんですから! もう絶対させてあげないんですから!』
「…………」


今まさに、言葉を失うほどの予想外の出来事が目の前で起こっていた。
まともな思考などついてこないのは私の頭が悪いせいじゃないと思いたい。
ごちゃごちゃになった頭を整理できるほどの余裕がなかっただけと言い訳してみる。

いや待て。
とにかく落ち着け。
れれれ冷静になれ。
まずどうしてこんな状況に陥ったのか。
話はまずそれからだ。


(…うーん…)


………。
……。
…。


確かそう、今日は珍しく音楽室に誰もいなくて、私とあずにゃんの二人きりだったんだ。
他のメンバーは、リアルあずにゃんを含め行方が掴めていなかった。
まるでこの世界に私とあずにゃんしかいないような錯覚にドキがむねむねしたのは記憶に新しい。

だからってわけじゃないけど、ちょっと魔が差したと言うか、なんと言いますか。
「二人きりだね、あずにゃん…」なんて、ちょっと調子に乗って雰囲気を出してみたのがそもそもの始まり。
しかも今日と言う日はそれだけじゃ収まりが付かず、大胆にもあずにゃんの可愛らしいその手を握ってしまった。
あずにゃんならきっと大爆発して然りの愚行だ。

ちょっとした冗談は冗談とは言えなくなって、無論下心がなかったと言えば嘘になるけど。
どうせあずにゃんの事だから「唯先輩と二人きりだから何なんですか?」とか「とりあえず変な事しないでくださいね?」とか「人を呼びますよ?」などなど、胸にグサグサと突き刺さりそうな毒舌乱舞が平然と返ってくると諦めにも似た何かを感じていた。

ところがどっこい、それはあくまで私の被害妄想でしかなかった。
予想は予想であって確実ではない事が証明されてしまったのが次の瞬間だ。
人生とはやはり蓋を開けてみない事にはその先に何があるのか分からない。


『っ…そ、そうですね…。た、たまには唯先輩と二人きりも悪くないです…』
「なん…だと…?」


さすがに聴覚を疑わずにはいられなかった。
罷り間違っても聞き違い。幻聴。だって最近幻聴が多いんだもん。
それは本当に耳垢が溜まっているのかと錯覚したほどだった。
だが。


「あ、あずにゃんどうしたの…? な、なんか様子がおかしいけど…。もしかして変なモノでも食べた?」
『し、失礼なこと言わないでください! べ、別におかしくなんてないですよ…唯先輩と二人でいるの嫌いじゃないですし…って、だからって好きってわけでもないんですからね! 勘違いしないでくださいね!』
「そこまで聞いてないよあずにゃん」
『うぅ…』


あずにゃんの頬から耳までかけてが真っ赤に染まった。
自分の失言に堪らず顔を俯かせもじもじタイムだ。
今のあずにゃんの状態はそう。ツンデレのデレがツンを上回ったような、言い替えればあずにゃんにも遂にデレ期が到来したってことになるんだけど。


(あれ? どこでフラグ立てたっけ?)


首を傾げて思考してみるがまったく見に覚えがないことに頭を悩ませる。
普通こう言ったものには予兆と言うか、特別なイベントが発生するものじゃないんだろうか。
簡単に言えば一枚絵が発生するような、EDを迎えるために必要な必須イベントが。

それなのにあずにゃんときたら、そんなちょこざいなイベントは全て時空の彼方にふっ飛ばしたと言わんばかりに。
そう、まるで最初からデレてましたと言わんばかりにデレにゃん化している。

一体全体何なんだろう。この風雲急を告げる展開は。
もしやアズプラスの隠されたシステムが何かを切欠にトランザムしたのだろうか?
いや、まさかそんな。
考え出したら切が無かった。憶測はさらなる火種を呼び私の脳を締め付ける。
しかしそんな最中でもあずにゃん観察を怠らない私はさすがと自負したい。
あずにゃんマスターの称号は誰にも渡さないよ、なんて。


(…にしても、こんなあずにゃん見たことないよ…)


いやね。もうね。ものすっっごい可愛いんだけどね。何この世界ミドル級の愛天使って感じなんだけどね。でもちょっと拍子抜けって言うか。実はここにいるのはあずにゃんじゃなくてあずにゃんの皮を被ったルパンなんじゃないかって、そんな失礼な事を平気で考えちゃう自分がいた。
普段どれだけあずにゃんにヒドイ仕打ちを受けているか走馬灯のように駆け巡る。


(さてこれからどうしようかな…ていうかどうしたらいいんだろ?)


その時だった。どうやら今日の私は当たり日のようで。
私の灰色の脳細胞が私の意思と関係なくピコンと電球を閃かせた。


(そうだよ!こんな時こそアレだ!あれを使おう!)


思い出したのはアズプラスの機能の一つである『アズカウンター』なるシステム。
別名ツンデレカウンター。その名の通りあずにゃんのツンデレ度を視覚化したもので、つまり現時点でのあずにゃんのツンとデレの比率をパーセンテージで計測出来るという常軌を逸脱したシステムなのである。

リアルでもそんな便利なシステムが使えたらいいのに…なんて思う事もしばしば。

もちろんこの比率は私の日々の行動によってその都度変化していく仕様になっているのは言うまでもない。
ツン度が上がればデレ度が下がる。またその逆も然り。
ただ、私の接し方が悪いのかどうかは知らないが、アズプラスを始めて数日でデレ度が30%でほぼ固定されてしまったのには驚いた。若干の誤差はあるものの、それ以降は1~2%上下するだけでまったく変化が見られなかったから、ここ最近はツンデレ度チェックなんてしてなかったんだけど…。


「…ごくりっ…」


どうやら遂にその封印を解く日が来たようだ。
私は生唾を飲み込み、汗で滲む手でタッチペンを掴み直した。
震える手で狙いを定め、恐る恐るメニュー画面を呼び出した。
そして長らくお世話になっていないアズカウンターに手を伸ばす。
画面を軽くタッチする。
呼び出されるアズカウンター。
さて結果は?


(…最後に見た時は確か、ツン度が75%くらいだった気がするけど…)


【アズカウンター】
ツン度→30% 
デレ度→70%


「なッ!? ば、バカな!? せ、戦闘力が70万だとぉ!?」


フ○―ザ様も真っ青な戦闘力を叩き出したアズカウンターに私は我を忘れて吼えた。


『ゆ、唯先輩? 何言ってるか意味不明なんですけど。ていうかその口調だと誰だか分かりませんからやめてください』


最初に考えたのはまずシステムの故障だ。しかしそう思うのも無理はない。はじき出された数値は予想の斜め上を行く結果。並みのスカ○ターなら故障の一つで握り潰されるか測定不能で弾け飛んでいるはずなのだ。
私の記憶が確かなら、明らかにツンとデレの数値が逆転してしまっている。
逆転裁判も吃驚仰天だ。


「ど、どういうことなの…? あ、あずにゃん、キミはいったい…」
『あ、あの…唯先輩? さっきからどうしたんですか?』


確かにツンデレとは常に変動を繰り返す代物だってことは分かる。
何かの拍子に100が0に0が100になる可能性だってないわけじゃない。
だけど、その何かの拍子の『何か』って何?


(う~ん)


記憶の中を探ってみてもそれらしい出来事はなかったはず。
それとも知らず知らずの内にあずにゃんをデレデレにさせるようなツボを突っ突いていたとか?


(分からない…分からないけど…でも)


もしかしたら私は手に入れてしまったのかもしれない。
選ばれし者のみが到達できるという神の領域。
歩く人間兵器『一級フラグ建築士』の称号を。

どないやねん。

フラグ建築士の能力は、さらに私を追い詰めるイベントへと発展していく。
犬も歩けば棒に当たると言うが、私の場合はタッチペンを振るえばあずにゃんに当たるだ。
それは奇跡としか言いようのない所業。だけど決して奇跡じゃない。何故なら奇跡は起こらないから奇跡と言うからだ。起こってしまった全ての出来事には必ず説明のつく理由がある。
この場合、私の心に巣食った『動揺』がそのトリガーを引いた。


「え、えとあずにゃ…」


緊張からか小刻み震える手でタッチペンを操作したのが災いし、次の瞬間何を間違ったのか、そのペン先があずにゃんの唇付近に触れてしまったのだ。


『にゃっ! ちょ、ちょっと唯先輩…だ、ダメですよ…』
「あっ…ご、ごめん! わ、わざとじゃないんだよ!」


その言葉通り、意図してやったわけじゃない。
しかしその気があろうとなかろうと、現実に起こってしまった事態をなかった事にするなんて出来るはずもない。
それこそ、タイムマシンにでも乗って過去をやり直さない限りは。


「べ、別にちゅーしようとしたとかそう言うんじゃないから!」
『…っ!』


語るに落ちるとはよく言ったもので、勘違いと分かってはいても、見ようによってはそう感じるのが自然。
無論、あずにゃんにとってはそうだったのだろう。彼女の顔が見る見るうちに湯だったタコになっていく様を見せつけられてはさすがの私も察せざるを得ない。


『…ですよ』
「え?」


ふと、ぼそりとした声が耳に届く。
俯いているせいか全部を聞き取るまでには至らない。
がしかし次の瞬間、驚くべき内容を耳にすることに。


『だ、だからいいですよ! ちょっとくらいならしても!』
「え?え?な、何を?」


思わず耳の穴をかっぽじった私はたぶん正常だ。


『そ、そんな恥ずかしいこといちいち言わせないでください!』
「そ、そんな事言ったって…」

『だ、だからっ…! い、いつまでもおあずけはかわいそうだから…か、軽くちゅってキスするくらいならいいですよ? あっ、か、勘違いしないでくださいね! きょ、今日だけの特別なんですから! もう絶対させてあげないんですから!』


…。
……。
………。


そんなこんなで長ったらしい回想は終わり、とにもかくにも私は今大変困惑している。
夢なら覚めてと言わんばかりに頬を抓ってみたが、ところがどっこい夢じゃない、これは現実、現実だった。


『ゆ、唯先輩は…私とキス…したくないんですか?』
「ぐはっ…!」


潤んだ瞳で上目遣いをされ、くらりと眩暈を覚える。
据え膳食わぬは漢の恥。
ここであずにゃんの想いに応えてあげなくちゃ女がすたるってもんです。


「ちょ、ちょっと待ってて! い、今準備するから!」


急ピッチで準備開始。
テーブルにDSを置いて、大急ぎで鞄から手鏡を取り出し身だしなみのチェックを始める。
何せあずにゃんとのファーストキッスなのだ。気合の入り方もわけが違う。
前髪のチェックよし、リップよし、ウインクも決まってるよ私!


「よ、よしっ! それじゃ行くよあずにゃん!」


私の目指すアルカディアはすぐ目の前だ。
本当、ここまで来るまで長い道のりだった。


『は、はい…その、優しくしてくださいね。わ、私…初めてですから』
「ももももちろんだよ! あずにゃんは唯先輩に任せておけばいいよ! やさし~くしてあげるから!」


そっと目を閉じたあずにゃんのキス顔にドキンと跳ねる心音。
私はゴクリと唾を飲み込んで、あずにゃんの唇に狙いを定めてペン先をロックオン。
不肖わたくし平沢唯、大人への階段をのぼらせていただきます!


(つ、遂にあずにゃんと結ばれる日が来ました! ありがとう妖精さん!)


だけど私は一つだけ失念していた。
本来なら絶対に忘れてはいけない事を。それでも今の私には『あずにゃん』しか見えていなくて、本当に見てあげなくちゃいけないはずの『あずにゃん』をコロッと忘れていたのだ。

唇が触れるか否かの刹那。それは来るべくして訪れた。
きっと誰もが口を揃えてこう言うだろう。

運命、と。


-後編-
[ 2012/01/20 00:49 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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