とある百合好きの駄文置場。二次創作SSやアニメ・漫画等の雑記中心。ゆいあずLOVE!

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唯梓SS 『けがのこうみょう?』

※拍手SS21
※追記からどうぞ。



唯先輩はよく私に可愛いって言うけれど。
私なんかより唯先輩の方がよっぽど可愛い人なんじゃないかな。
のんびりした声、ほわほわした笑顔、柔らかくて温かい肌のぬくもり。
あの人の全てが「可愛い」で構成されていると言っても誰も驚かないと思う。
そう、まさに天使なのだあの人は。


「はぁ…何考えてるんだろ私…」


言うに事欠いて何が天使だ…アホらしい。
ついに頭がおかしくなったか自分…。

放課後で一人きりの音楽室。残念ながら他の先輩達はまだ来ていなかった。
ソファに座ってボーっと天井を見上げながら漏れ出るのは溜息と卑屈な言葉。


「バカみたい…」


一人になるとどうしても普段考えないようなことが頭の中を闊歩しちゃう。縦横無尽に駆け巡る。
そして何故か、考えることはもっぱらあの人の――唯先輩の事ばかり。


「…可愛い…かぁ…」


で、今は唯先輩によく言われる「可愛い」について考えていた。
何を間違ったのか、特に意識したわけでもないのにふと思い浮かんだのだ。
くだらないってことは自分でも分かってるけど、一度考えちゃうとどうしてもね。

可愛いっていうのは女の子にとって最高の褒め言葉だし、そう在りたいと願う女子が殆どだと思う。
もちろん私だって曲りなりにも女の子なんだから、誰かに――もちろん唯先輩に可愛いって言われるのは嬉しい。
女の子として生まれたからには一度は言ってもらいたい言葉だ。
でも。


「…私ばっかり言われるのも…なんかイヤなんだよね…」


それは常日頃から思っていたことだった。私なんかより唯先輩の方がよっぽど可愛いって。
ホントは唯先輩の方が可愛いのに、私ばかりそんな風に言われてイヤだなって。
言われても「ありがとう」のお礼一つも言えやしないし、挙句の果てに口を告いで出るのは憎たらしい言葉ばかり。

何で唯先輩は、こんな捻くれ者の私なんか可愛いなんて言うんだろ。
可愛いとこなんて全然ないのに…。


「せめて私も、唯先輩に可愛いって言えればいいんだけど…」


唯先輩がくれた「可愛い」の分だけ、私もあの人に返したいと、そう思った。
そうして、先輩がいつもしてくれるみたいに私からあの人に抱きつくんだ。
唯先輩に抱きしめられて嬉しいことも含めて、ちゃんと伝えたい。

伝えたいけど…。


「む、無理だっ…わ、私にそんな事っ…」


――出来るはずがない!!

と、私は自分がそうしている情景を思い浮かべてブンブンと頭を振り乱した。
顔がカアっと熱くなり、ボっと火を噴いた。当然顔は茹蛸みたいに真っ赤っか。
よく考えてみると…ていうか考えなくても分かる。分かりきったことだった。
素直になれない捻くれ者の私に、そんな血迷ったこと死んでもできないと。


「はぁ…ダメだな私…」


ヘタレな自分を前にして、溜息はとどまる事を知らない。
いつの間にか何故こんなことを考え始めたのかという理由すらどうでもよくなっていた。
頭にあるのは唯先輩の優しい笑顔だけ。笑顔で私を優しく包み込む、あの人の全て。
それを思い浮かべながら、思わずギュッと体を抱くように腕を回した。


「やっぱり唯先輩じゃなきゃやだ…」


自然なほど自然に口を告いで出る素直な気持ち。
自分でやってもただ不毛なだけ。それにきっと、他の人に抱きしめられても満足できない。
その言葉の通り、私が求めてるのは唯先輩だけだった。

ハァっと、今日何度目かも分からない溜息をついた。
結局、私はただ逃げてるだけ。分かってるよそんなこと。
肝心なときに一番大切なことから逃げてしまう臆病者。
ヘタレな自分が実に情けない。

もちろんここで終わりたくないし、終わっていいとも思ってない。
でも、日頃から素直になれない人間が素直になるって言うのは一朝一夕で出来るものじゃない。


(それが逃げてるってことなんだよね…)


私はさっきから適当な言葉を並べて「自分には出来ない」と決め付けている。
やる前からこんな事を言っていては、成功するものもしないと何故分からない。

きっかけがあったかなんてもうどうでもいい。
今私は、唯先輩にお礼を言いたい気持ちになってる。それでいいじゃないか。
たくさんの可愛いを“愛情”をありがとうって、たった一言でもいいからあの人に――。

私はギュッとこぶしを握った。それから元気いっぱいに「うん!」と頷いて。


「頑張れ私!負けるな私!」


拳を振り上げて、必死に自分を奮い立たせる。気合は十分。
思い立ったが吉日。やると言ったらやるんです。今日にでも絶対に。
私は私の道を逝く!OK?



「何が頑張れなの、あずにゃん?」

「っ!?」


ふと、私の真横から聞きなれた声がした。
優しくてどこまでも澄んだ甘い声。私の大好きな声。
私は突然声を掛けられて、息を詰まらせた。


「…ゆ、唯先輩…?」
「うん?」


恐る恐る横を向くと、そこにいたのは不思議そうな顔でキョトンとしている唯先輩。
手には鞄を。背中にはギー太を背負って。ポツンと立ち尽くしてる。


「い、いつの間に来てたんですか…?」
「さっきだよ。そしたらあずにゃん、何だか一人で頑張れとか言ってるし」
「そ、そうですか…」


唯先輩の口ぶりは嘘を言っている風には見えなくて。どうやら本当に今来たらしい。
それはその格好を見ても分かるけど、先輩の口から聞かなきゃ安心なんてできないのが小心者の私。
今までの独り言を聞かれでもしていたら、首吊り用のロープを買って帰らなきゃいけないもの。


(にしても…)


部室に入ってきた唯先輩に気付かないくらい考え事に夢中だったとは、我ながら末期かもしれない。


(ホント、良かったぁ…聞かれてなくて…って、あれ?)


一瞬ホッと胸を撫で下ろしたが、よく考えたら安心してる暇も余裕もないことに気付いた。


もしかして、今がチャンス?


見れば、唯先輩以外の先輩の姿は見当たらない。
休むわけじゃなければそろそろ来るとは思うけど、来てしまったら私の計画は水の泡。
さすがに人前で言うには恥ずかしいし、律先輩あたりなんか、からかってきそうだし。
まぁ、ムギ先輩は喜ぶかもしれないけど…。
とにかく人前では絶対にイヤ。

そういうわけで私は「よし!」と今一度心の中で覚悟を決めて。
ソファからすっくと立ち上がり唯先輩に向き合った。
チャンスを無駄にしちゃいけない。今日言わなかったら絶対もう言えない、そんな気がしていた。
今日という日が最初にして最後のチャンス。言うって決めたんだもん。頑張れ私!


「あ、あの唯先輩。ちょっとお話があるんですけど、いいですか?」
「え? うんいいけど。どうしたの改まっちゃって」


確かに先輩の言うとおり、今更唯先輩に改まって話すことはないかもしれないけど。
でも、今日の私にはバリバリあるんです。いけ梓!当たって砕けろ!

…訂正、砕けちゃダメです。


「えーと、ですね…その…」
「…?」


中々話ださない私に対して、唯先輩の頭の上にクエスチョンマークが一個増えた。


「あー…と、そのー…だからですね…」
「あずにゃん?」


さらにもう一個クエスチョンマークが増える。


「ちょ、ちょっと待ってください…い、今言いますから」
「う、うん…」


唯先輩におかしいと思われてることは、さすがに見れば分かる。
このままじゃ日が暮れるころには唯先輩の頭はクエスチョンマークで埋め尽くされているだろう。
もちろん私としても早く言いたいんだけど、それが出来ないから困ってる。緊張で言葉がまるで出てくれない。


(わ、私は唯先輩のことを可愛いと思ってますって…。私なんかより唯先輩の方が可愛いですって…)


いつもたくさんの可愛いを、ぬくもりを、愛情を与えてくれてありがとうって。
そしてこれからもよろしくって意味を込めて私から抱きついてやるんです。
そこで初めて私の願いは達成されるのだから。
でも…。


(うぅ…言えないよぉ…)


いざその時になってみると人間なかなか上手くいかないもので。
「やっぱり私には無理だよ…」っと、今更ながらにヘタレ染みたことを考えてしまう。
そんなどこまでも惨めな私に、唯先輩はクスっと笑みを浮かべて。


「ふふ♪ 落ち着いてあずにゃん。急がなくてもいいからね」
「にゃっ…!」


それから私の頭に手を添えて優しく撫で始めたのだ。
突然のことに驚いた私は、思わず猫みたいな鳴き声をあげてしまう。
は、恥ずかしい…。


「よしよし♪」
「ふにゃ…や、やめてくださいよぉ…ゆいせんぱい…」


柔らかな手の感触、唯先輩に撫でられる事への喜びや気持ちよさから私の全身から力が抜けて蕩けていく。
上目遣いで唯先輩の顔を覗き込むと、先輩はどこまで優しくて温かみのある笑顔を浮かべていた。
いつもは子供っぽい先輩だけど、こんな時ばかり大人の女性に見えてしまう。
唯先輩もやっぱり先輩なんだなってしみじみ思う。

私はいつの間にか、自分の心が落ち着きを取り戻していることに気付いた。
そして思う。やっぱりこの人には敵わないなって。そう思いながらフっと笑みを浮かべた。

澄み渡る大空のようにどこまでも大らかで、そして全てを温かく包み込んでくれる太陽みたいな人。
私の目の前にいるのはそういう人なのだ。そんな貴女だからこそ私は――。

私はふぅっと一息ついて、今度こそ本当に覚悟を決めた。
3度目はない。これで決めてみせる。


「唯先輩」
「ん?」
「唯先輩!」
「なぁに?」
「そのっ…! わ、私は…!」


すうっと大きく息を吸い込み、そして勢い任せに言葉と一緒に吐き出した。
息と共に吐き出された私のありったけの気持ち、それは――。





「唯先輩の事が好きです――!!」





当初予定していたセリフとは似ても似つかないものだった――。



つまりこう言うこと。
『たまに素直になるとろくなことにならない』
これはそういう教訓なんだろうね。


え?そんな事はどうでもいい?
そんな事より、そのあと私と唯先輩がどうなったかって?
べ、別にどうもなりませんよ…いたって普通です普通!
普通過ぎてビックリするぐらいですよ!

日頃のスキンシップが激しさを増したとか。
お昼はお弁当を「あ~ん♪」で食べさせ合ったりとか。
誰もいない部室でみんながいないのをいい事にイチャイチャしてみたりだとか。
週末の休日には手を繋ぎながら二人きりでお出かけしたとか。
そのままお泊りした日のベッドの中からは必ずと言っていいほど猫の鳴き声がするとか。
そんな甘酸っぱい青春の1ページみたいな展開は天地がひっくり返ったってありません。


分かってくれましたか?



おしまい



【あとがき】
ずいぶん昔…と言っても1年くらい前だと思うんですが拍手SSとして書いた21作目です。
ブログの方に持ってきただけなので内容はほとんど変化ありません。あしからず。


[ 2011/07/28 01:11 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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