とある百合好きの駄文置場。二次創作SSやアニメ・漫画等の雑記中心。ゆいあずLOVE!

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唯梓SS 『大好きな人』

※追記からどうぞ。





「あずにゃんって好きな人いる?」


そんな事を唯先輩の口から問われたのはいつもと変わらぬ放課後のことだった。
部活らしい部活をしていない軽音部は、今日も今日とてティータイムという名のミーティングに勤しみながら、音楽とはまったく無関係な雑談に興じていた。そうしていたのも束の間、何の前触れもなくその質問は私の身に降り掛かったのだ。


「突然なんですか。藪から棒に」


唯先輩が突拍子もない事を言い出すのは今に始まったことじゃないので特に驚くこともなく呼びかけに答えた。唯先輩にしては珍しいが質問事態もそれほど驚くようなことでもない。女子高生という身分を考えれば恋バナなんて不思議でもなんでもないから。


「んー? 何となく、かな。で、いるの? 好きな人?」


何か意味深なものを感じて、睨みつけるような視線で探りを入れてみる。
しかし唯先輩は意に介した様子もなく首を傾げながら私を見つめ返すだけだった。
ホントに何となくで聞いてきたのかこの人は…。


「まぁいいですけど。好きな人なんていませんよ別に」


私はそっぽを向きながら溜息混じりにそう告げた。
生まれて此の方、恋愛なんて縁も所縁もない。初恋だってあったかどうかも定かじゃない。音楽一筋に生きてきた私からすれば「音楽が恋人」と言えなくもなかった。
我ながら寂しい青春だとは思う。いや、音楽に掛ける人生だって立派な青春か。
吐き捨てるように言い放った私の言葉に唯先輩は、


「え~? あずにゃん好きな人いないの?」


心底驚いたように目を見開いて、おまけに口まであんぐりと空けた。
まるで好きな人がいなければおかしいみたいな言い方だった。
私はそんな唯先輩の様子に少しムッとして無意識に目を吊り上げ口をへの字に曲げる。
そして半ば投げやりに、


「まるで好きな人がいないとおかしいみたいな言い方ですね。そう言う唯先輩はどうなんですか? いるんですか好きな人?」


そう聞き返してみた。どうせ唯先輩のことだから好きな人なんているはずない。そう踏んでいた。実際唯先輩の周りにそう言う話は聞かないしね。なのに唯先輩は困る様子もなくニコっと笑って、


「もちろんいるよ~」


と、予想もしていなかった答えを私に突きつけたのだ。
その驚愕の事実は私に思いのほかダメージを与えた。まるで鈍器に殴られたようにクラリと視界が歪む。そして何故か胸がキュッと締め付けられた。


「へ、へぇ~…そ、そうなんですか。ま、まぁ唯先輩も女の子なんですし、好きな人の一人や二人いてもおかしくないですよねぇ」
「えへへ~♪」


その無邪気な笑顔を見るだけで胸に黒いものがモヤモヤと渦巻きだす。
自分でも理解が及ばない感情の放流に私はただ平静を装うことに必死だった。


「で? だ、誰なんですか…その好きな人って? 私の知ってる人ですか?」


別に聞く気はなかったのだが自然と口を告いでいた。


「うん! もちろん知ってる人だよ」
「そそっそうですか。だ、誰なんです?」


私が知ってる人で唯先輩と接点がある人なんて実はそう多くはない。
もしかしたら案外近くに唯先輩の好きな人はいるのかもしれない。いったい誰だろう?と考え込むこと数秒、唯先輩から予想もしていなかった人物の名が告げられた。


「えーとね、ムギちゃんだよ」
「はぃっ!?」


ムギちゃんって目の前でケーキ頬張って幸せそうにニコニコなさっているムギ先輩のことですか!? そんなバカな!! 唯先輩の好きな人がムギ先輩だったなんて、そんなバカな話…って、ここにあるし!


「あら?」


むろんムギ先輩も反応を示した。そりゃそうだ。突然愛の告白を受けて無反応を決め込める人間なんてそうはいない。いないのだが、当事者のムギ先輩は何故か特に驚いた様子もなく、相変わらずおっとりぽわぽわした笑みを浮かべていた。
もう少し驚くなり慌てふためくなりあってもいいんじゃないだろうか?


「うふふ♪ ありがとう唯ちゃん。嬉しいわ」
「えへへ、どういたしまして!」


何だこれは。いったい何の茶番劇だ。なんて思ってしまうのは私がおかしいからなんだろうか。愛の告白を受けても友達同士のようなやり取りを崩さない二人に怪訝な瞳を向けた。
そうするや否や、唯先輩の視線が今度はムギ先輩から澪先輩に移動した。


「あとねー。澪ちゃんも好きだよ!」
「なッ!?」


二股ですか! それはさすがに節操がなさ過ぎるんじゃないですか!


「わ、私もか? あ、ありがとな。わ、私も好きだぞ」


二股宣言にもかかわらず澪先輩は多少照れながらではあるがその気持ちに応じる。しかも澪先輩も唯先輩のことを好きなんて。いったい何をどこで間違った。
もしかして私は夢でも見ているのか?
そう思ってホッペを思い切り抓ってみるが痛みがあるだけで目が覚めることはなかった。
つまり夢じゃなく現実ってことだ。


「あ、もちろんりっちゃんも好きだからね?」
「……」


こんなの絶対おかしいよ! み、みみ、三股なんて! ハーレムエンドでも目指してるんですか貴女は!とはさすがの私も思わなかった。私だってそこまで鈍感じゃない。最初は確かに唯先輩に好きな人がいると聞いて気が動転していたが、さすがにここまで来れば唯先輩の思惑を嫌でも察してしまう。


「へへ♪ サンキュー唯! 私も好きだぜ!」


律先輩の反応も他二人と変わらない。これで確信した。つまり唯先輩の言う『好き』は友達としての、仲間に対しての『好き』ということ。つまりLoveではなくLikeってことだ。
一瞬でも私の常識が通用しない異世界に迷い込んだのかと肝を冷やしたが、それが友達としての好きというならば話は別。それは一気に納得に変わった。


(な、なんだ…そういう事か)


さっきまでのモヤモヤした感情の渦巻きは消え、代わりにやってきたのは安堵だった。しかし安堵したら安堵したで、今度は別の問題が浮上する。今の唯先輩の好きな人の中に私は含まれていたか?


「あ、あの唯先輩? 唯先輩の好きな人ってそれだけですか?」
「え? ううん、もっといるよ」
「そ、そうですか。やっぱりそうですよね!」


ホッと胸を撫で下ろす。なんだ、やっぱり言い忘れただけか。催促したみたいでちょっと恥ずかしいけど、他の皆さんの事を言って私だけ言われないっていうのもちょっと寂しいものがあるし。
私はそっと深呼吸をしていつ唯先輩に好きと言われても応えられるように気持ちを新たにした。
しかし、


「えーとね、他には…憂でしょ、純ちゃんでしょ、和ちゃんでしょ、さわちゃんでしょ、あとは~…」


指折り数えながら好きな人を述べていく唯先輩。だがいっこうに私の名前が出てこないのはどうして? というか軽音部のメンバーが先に出たのだから順番から言って律先輩の次は私なんじゃないだろうか。
そしてそこで私はある一つの結論に至る。


(もしかして…唯先輩って、私のこと嫌いなのかな…)


それは一番考えられないことで。一番考えたくないことだった。
好きかどうかは別として、普段のスキンシップを鑑みれば可愛がられている自信は多少なりあった私にとって、それは地獄の底に突き落とされたかのような仕打ちだった。
私の心はズーンと深い海の底の闇に沈んでいく。


「――え~と、だいたいこんなところかな!」


結局、唯先輩の口から私の名前が語られることはなかった。


「…ぐすっ…」


自然と目尻から涙が溢れ、頬を伝う。


「わわっ、ど、どうしたのあずにゃん! どっか痛いの? 保健室行く?」


突然泣きだした私に慌てた様子で駆け寄る唯先輩。チラリと見えた唯先輩の表情は心配の一色で染められていた。こんな風に心配してくれるのに。どうして唯先輩は私のこと…。


「ゆ、唯先輩はっ…わ、私のこと嫌いですか…!」


気付いたときには核心に触れていた。


「え?」


唯先輩は目をパチクリさせながら何を言われているのか分かってないような様子で疑問符を浮かべる。


「だ、だって…さっきの名前の中に、私の名前入ってなかったです…だ、だから私のこと嫌いなのかなって…」
「あ、なるほど。そういうことかぁ」
「そういう事って…どういうことですか?」


目元を伝う涙をゴシゴシと制服の袖で拭いながら聞き返すと、唯先輩は私の頭をよしよしと撫でながらほわっとした柔らかい笑顔を浮かべて、


「だって、あずにゃんは『好きな人』じゃなくて『大好きな人』なんだもん」
「え…そ、それって…あ、あの…っ!」


つまりそれは。
それはたった一人だけに与えられた。
特別な想いのつまった好きってことで。


「えへへっ、あっずにゃ~ん! だぁ~い好きっ!!」
「にゃっ!」


予告も無しに飛び掛ってくる唯先輩に成す術もなく抱きしめられ、私の体は唯先輩の胸の中にすっぽりと納まった。
お日様の匂いがする。いい匂い。それは私の大好きな匂いだった。
日向みたいな温かい体温に抱かれながらその心地よさに思わず目を細める。まるでゴロゴロと喉を鳴らされた猫みたいに私は自然とこの人に身を委ねていた。


「……唯先輩ってなんかズルいです」
「そーお?」
「そうですよ…。落とすだけだけ落としといて、最後の最後に欲しい言葉をくれるんですから」
「いやぁ~そんなに褒められると照れちゃうよぉ~♪」
「褒めてないですよ。まったく。これっぽっちも」
「えぇっ!?」


きっとこれから先もずっと。
こんな風に唯先輩に振り回される日々が続いていくんだろうなって。
そんな事を考えつつもそれも案外悪くないかなって思っている自分がいたのはもちろん内緒だ。



おしまい



【あとがき】
あずにゃんは天然唯先輩に一生振り回され続けるような気がしないでもない。
唯先輩って天然ジゴロな気質があるのであずにゃんも気が気じゃありませんね。
頑張れあずにゃん。




[ 2011/07/23 22:22 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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