とある百合好きの駄文置場。二次創作SSやアニメ・漫画等の雑記中心。ゆいあずLOVE!

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ゆいあず!!シリーズSS EP04 『軽音旅情浪漫譚 #14 ~終わりよければすべてよしⅠ~』(終)

※追記からどうぞ。



その後のことを少しだけ語ろう――。

色々な意味で怒涛に過ぎ去った修学旅行だったが、あれからしばしの時が過ぎ、それは旅行明け通学初日の放課後のことである。
懐かしき学び舎、懐かしき顔ぶれに気分が浮き足立つのもほどほどに、私達は放課後とある場所へと足を運んでいた。もちろん放課後という時間帯、私達の向う先なんて一つしかない。

懐かしき部室――桜高音楽室。

つまるところ我々桜高軽音部、通称『放課後ティータイム』は、旅行明け早々から通常営業だった。
音楽室が軽音部の占領地帯となって早2年余り、音楽室で過ごす優雅なひとときは、紅茶とお菓子の香りが鼻腔を擽るたびに心がホっと落ち着いてやまない。
そしてしみじみと思うのだった。

私達は本当に帰ってきたんだな、って――。


「なんていうか…ムギのお茶の味も随分と久しぶりな気がするな…」


なんとも言えない甘い香りの湯気が沸き立つ紅茶の水面に息を吹きかけ、一口一口味わいながら小さな幸せを噛み締めて、ホゥっと熱い吐息を漏らす。


「そうね、なんだかたった2、3日の旅行だったはずなのに6ヶ月くらい旅を続けていたような気がするわね」


ムギは頬に手を添えてそっと首を傾けると苦笑気味にそう言った。


「……ずいぶん具体的な数字が出てきたな、6ヶ月って……」


あまりその事には触れてやるな、ムギ。
そこには海よりも深く山よりも高い大人の事情というものがだな。
まぁ深い事情は置いておくとしても、


「とにかくさ、無事に帰ってこれたわけだし、こうしてティータイムも楽しめてるし、素直に喜んでおいた方が得な気がするぞ」


ムギは納得の表情で頷いた。


「修学旅行も本当に楽しかったけど、こんな風に当たり前の日常を過ごすことがこんなにも幸せだったなんて初めて気付いたわ。もしかしてこれが『失って初めて気付く』ってことなのかしら? まぁもともと失ってはいなかったけど、ティータイムも本当に久しぶりだし……具体的に言うなら半年ほどね」


だからそのネタはもういいって。神様が草葉の陰から涙を流してるぞ。錯覚だと思え錯覚だと。それが無理ならせめて見て見ぬフリをしてやれ。


「なぁ律、お前も黙ってないで何とか言ったらどうだ?」
「んー…」


どこかぼんやりとして溜息ばかりついていた律に呼びかけてみたのだが、返ってきたのは生返事だった。
いったいどうしたんだ? もしかして、女の子の日とか言うんじゃないだろうな?
久しぶりのティータイムだというのに会話にも参加せず、眉間に皴を寄せて黙々とケーキを頬張る律。どこか哀愁が漂っている。これを変と思わずなんと言えばいいのか。
いつもは元気の塊といっても大袈裟じゃないあの律がだぞ? さすがの私も気になって仕方がないじゃないか。
不審に思う私を余所に、律はその呼びかけにたっぷり10秒ほど間をおいて、しぶしぶといった感じで重たい口を開いた。


「…久しぶりのティータイム、いいよな、幸せだよな…変わらない味、変わらない部室、変わらないその他諸々…」
「ならどうしてそんな厳しい顔してるんだよ? 何かあったのか?」


そう言うや否や、律は突然クワっと目を見開き、ビシッとある一点を指差して叫んだ。


「あれを見ろっ!変わらなくて良かったね~的な流れの中で一番変わらなくていいのが変わってんじゃねーかぁ!空気嫁よバカヤロー!!」


律は涙ながらに心の叫びを上げる。指差した先に私とムギの視線が集中したわけだが、その先で見たものは律の言動を裏付ける決定的な証拠が存在して、


「あずにゃん分補給ぅう♪ ホッペすりすりしちゃうよ~!今日はいつもよりすりすりしちゃうよ~!」
「きゃんっ、も、もぉー唯先輩ったらくすぐったいですよぅ。じゃー私も唯先輩に負けないくらいすりすりしちゃいます! 唯先輩分補給です!」


つまりは唯と梓、二人が人目もはばからずイチャイチャしてる姿が目に写った。
なるほどな、律が鬱になるのも頷ける。私だって直視しただけで精気を持っていかれそうだ。
唯は放課後が始まるや否や、どこかしらから梓を引っ張り連れてきたわけだが、その後は二人ともソファにぴっとりと寄り添いながら腰掛け、まるで犬猫がじゃれ合うようにお互いの体を擦り付けていた。
愛情を、ぬくもりを確かめ合うようにな。
もちろんそれがいけないことだとは言わない。だが、激しくTPOをわきまえろと言ってやりたい。無駄とは思うけどな。


「ふおぉぉ…!! あずにゃんのホッペが、ホッペがぁ、ぷにぷにのぽにょぽにょでぇぇ…!」
「んっ…唯先輩のほっぺも柔らかくて気持ちいいですよ…」


ちゅっ☆
ふいに耳に届く星が飛び散るような軽快なリップ音。
もちろんそんな音が聞こえたからには何が起こったかだいたいの想像はつくだろう。ホッペを重ね、左右に首を振るようにすりすりしていたのだ。間違いが起こったってなんら不思議じゃない。
ていうかこの場合、本当に間違いなのか? 間違いなんだよな二人とも?


「んっ…わ、私の唇にあずにゃんの唇がぶつかっちゃったよあずにゃん。 あずにゃんがあんまりすりすりするから唇同士がこっつんこしちゃったよぉ。 もーあずにゃんのばかぁ」
「バカはどっちですか。人のせいにしないでくださいよ。明らかに唯先輩が勢いつけすぎたせいです」
「むーあずにゃんってば、旅行から帰ってきたら少しは素直になってるかと思ったら、相変わらずツンにゃん100%だね」
「別にそんなことないです。私はいつだって素直な良い子です」
「えー、そうかなー。でもまぁ、そんなところも可愛いけどね」
「あっ!足が滑った!」
「え? ちょっ、あ、あずにゃっ…」


ちゅむっ☆
ふいに聞こえた星の飛び散る瑞々しいリップ音。
もちろんそんな音が(ry


「んむっ!?」
「ぷはっ…ごめんなさい唯先輩。足が滑って間違って唇がくっついちゃいました。もう、唯先輩がそんなところに顔置いとくのが悪いんですよ。ぶつかっても文句言えないんですからね」
「…ソファに座って、足が滑ったも何もないと思うんだけどなぁ。そこんところどうなのかな? あずにゃん?」
「気のせいじゃないですか?」
「あっ!あずにゃんの後ろにトンちゃんが!!」
「え…? って、トンちゃんが音楽室にいるのは当たり前じゃないでむぐっ!?」


ちゅぷっ☆
ふいに(ry


「えへへ♪ ごめんねあずにゃん、あずにゃんが急に振り向くから唇がぶつかっちゃったよ♪」
「むー!今のは私の進路に唯先輩が顔セットしておいたからでしょー!ちょうどぶつかるようにセットするなんてあくどいです!卑怯です!」
「とかなんとかいって、逆に吸い付いてきたような感じがしたけど、それはどういうことなのかな? あずにゃん?」
「……気のせいです」
「その間はなぁに? 今、一瞬間があったよね?」
「気の迷いです」


なぁ一つ聞いていいか? この桃色閉鎖空間っていつまで続くんだ?
そんな私の心の声に反応したかのように、律は諦めたようにふるふると首を振って溜息をつき、


「…たぶん止まらねーよ。放っておいたら未来永劫チュっチュしてるよ。唇ふやけるよ。何とかしろよ」


お手上げのポーズでムギに目くばせした。


「うーん…でも、良く考えたらこれはいつもの事じゃないかしら? 旅行前から特に変化は見られないけど?」


ムギはティーポットをテーブルに置き、まるで探偵が推理をするときのように、顎に手を添えるポーズで律の瞳を静かに見据えた。


「お前の目は節穴かムギッ!! むしろ破壊力増してるよっ! パワーアップだって立派な変化だよっ!」


確かに、と律の物言いにムギはポンっと両手を叩く。


「つまり二人のイチャイチャもとうとう第二段階に移行したということね。引き離されたことで二人の愛もさらに熱く燃え上がったということかしら。でもまだよ。ゆいあずは変身する度にパワーが増していくの。しかも二人はその変身をあと2回も残している……この意味が分かるかしら、りっちゃん?」
「わかんねーよ! てか変身じゃなくて変態の間違いだろ? しかも最終段階まであと2回かよ。そこは次で最後ってことにしとけよ。ていうかそもそも段階なんてあんのかよ?」
「あるのかないのか、それこそまさに“神のみぞ知る”ってところね」
「やれやれ…。ていうか澪、お前はアレ見て何とも思わないのか? 人前でチュッチュチュッチュとバカみたいにイチャついてるあいつら見て? ていうかあいつら私達がいること忘れてるんじゃないか?」


唯と梓の話で持ち切りの私達を他所に、当の本人達はまるで私達など最初から空気だと言わんばかりに乳繰り合っている。
恋は盲目とはよく言うが、これは少し度が過ぎているように感じてならない。


「ねぇねぇあずにゃん。旅行中、私がいなくて寂しかった?」
「たった数日会ってなかったぐらいで何女々しいこと言ってるんですか。ぜんぜん余裕のよっちゃんでしたよ。だいたい唯先輩こそ、私がいなくて寂しかったんじゃないですか?」
「…えへへ、実はその通りなのです」
「っ…もう、バカ…。そ、その…わ、私も…」
「え?」
「わ、私も…本当は…すごく寂しかったです…唯先輩がいないだけで胸にぽっかり穴が開いたみたいでした。唯先輩と電話でお話したときのこと覚えてますか? あの時、私本当に嬉しかったんですよ? 唯先輩をすぐ傍に感じてるみたいな気がして…すごく幸せな気持ちになったんです」
「あずにゃん…」
「唯先輩…」


上気した頬、潤んだ瞳、お互いに見つめ合いながら、もう言葉はいらないとばかりにどちらからともなく顔を近付けそっと唇を重ね合わせる二人。ちゅっちゅっと啄ばむようなキスはやがて感触を確かめるような熱いものに変わっていく。


「大好きだよあずにゃん…」
「私も大好きです、唯先輩…もうどこにもいかないでください、ずっと傍にいてください」
「うん、あずにゃんが望むなら、いつまでも」


愛を確かめ合う二人は熱い抱擁を交わし、そこにある幸せの重みを噛み締めていた。
一見幸せそうな恋人同士のやり取りに見えるが、いや実際そうなのだが、でもそれはそれ、これはこれ。そんなものとは無縁の生活を現在進行形で送っている私からすれば、


「うん、正直目の毒だ。猛毒だ」


健全な女子高生なら多少なり興味はあっても、何事も限度というものがある。二人の乳繰り合いの限度は、大気圏を突き抜けて冥王星の彼方まで届かんばかりだった。
とは言え、私もいい加減この手の展開には慣れっこだったので、


「でもまぁ、私は見てみぬフリというかなんというか、とにかく視界にいれないようにしてたからな」


私は二人のアツアツハリケーンを目に入れないように顔を逸らしていた。二人のこれは今に始まったことじゃない。しかもそれから逃れられない運命だというのなら、せめて防御や回避する術を学ぶのは至極当然の選択だろう。


「いいな澪は。私もいい加減スルースキル覚えたいぜ。だいたいさー、あいつらはキスを何だと思ってんだよ? キスってのはそうそう気軽にしていいもんじゃねーだろ。 ボタン押すみたいに何度も何度も押しつけやがって。 そういうのは二人きりの時にムードとかそういうの考えてしろってんだ」


ほぅ、なるほど。律はムードを大切にすると。
これは脳内メモリに保存しておかないと…。


「りっちゃんったら、見た目によらず意外と古風なのね」


律の乙女チックな発言に、ムギはどこか驚きの表情で目を見開いた。
もちろんそんな風に言われてはさすがの律だって憤慨せずにはいられない。


「うがー! 見た目関係ねーしぃ! そんなに私が言うとおかしーのかよ!」


ムギは心外だと言わんばかりにふるふると首を横に振った。


「ううん、からかってるわけじゃないの。素直に関心してるのよ。りっちゃんには是非ともその気持ちを忘れずにいてほしいわ。いつか澪ちゃんと本番を迎えるときのためにね」
「はぁ? あ、あのムギさん? それはどういう――」


律は聞き捨てならないムギの妄言にすかさず問い返そうと試みるが、


「おいムギ!何意味分かんないこと言ってるんだよ!どうして私が律と本番的な何かを迎えることが決定事項みたいな言い方してるんだよ! 私にはそんな気全然――!」


私はその言葉を遮るように慌てて割って入った。するとムギは目をぱちくりさせながら、意味ありげな視線を私に寄こす。まるで計画通りと言わんばかりに口の端を歪ませて、


「あらまぁ? じゃあ私が貰ってもいいのかしら?」


と、挑発的な視線を送りながら私に食って掛かる。
そう言われて一瞬思考が停止し息が詰まった。
だがここで負けたらムギの思う壺だと悟り、


「す、好きにすれば…いいじゃないか…っ!」


内心焦りが支配しつつも、震える唇でムギに言い返してやる。
しかしムギにとってはそれすらも予想通りの回答だったのだろうか、口元に手を添えてクスっと笑みを漏らした。


「ふふ、素直じゃないんだから、澪ちゃんってば。もちろん冗談だから心配しないでね?」


最初から心配なんてしてないと言おうものなら、またあらぬ反撃を受けそうだった。どうせ何を言ってもムギの手のひらで踊り続ける運命なのだ。言い返したいのはやまやまだが、それでも私はしぶしぶながら口をつぐんでいた。
でもまぁそうか…冗談か。よかっ…い、いや、別にどうでもいいけどさ。
胸に手を添えて、ふぅっと一息つき緊張感を和らげると、それと同じくして律の口から溜息がつかれた。
またか。


「おいおい、あの二人またチューしやがったぞ。これで何回目だ? 小一時間眺めてたけど、そろそろ3桁行くんじゃねーの?」


小1時間って、そんなになるまで見てたのか。そりゃ気分も萎えるよな。


「正確にはまだ30回目よ。3桁にはまだまだ先ね」
「って、ちゃんと数えてたのかよムギ!」
「え、ええ。当然よね?」


何当たり前の事言ってるの?と言わんばかりに小首を傾げるムギ。
律が驚くのも無理はない。私だって心底驚いた。
ムギの趣向から考えて二人の乳繰り合いにもまったく反応を示さなかったのは珍しさの極みだったが、まさかちゃんと数えていたとは。実はちゃっかりその目に二人のキス映像を映し出し、脳内で保存していたのだろう。
なんて抜け目のない奴。琴吹紬、相変わらず恐ろしい子だ。


「一応聞いておくけど、どこかに隠しカメラでも設置してないだろうな?」


もしそうなら即刻止めさせないといかん。軽音部から犯罪者を出すわけにはいかないのだからして。すでに犯罪者の域まで到達してるような気がしないでもないが、そこは気にしない方向で許してくれ。


「うふふ、大丈夫よ。今日はそんな野暮なことはしていないから。二人にも気兼ねなくイチャイチャしてもらいたいしね。それに久しぶりの恋人同士の邂逅、邪魔するなんてそれこそ神が許しても私が許さないわ」


ムギは一呼吸置いてから「それに…」と続けて、


「カメラなんてなくても十分すぎるほど眼福だしね。目からうろこよ、う・ろ・こ♪」
「そうか、それは良かった…って全然良くないぞ!」


唯と梓にしても、ムギにしても、明らかな違いは旅行前よりも遥かに絶好調だということ。これは軽音部的には由々しき問題だ。旅行明け初日からこれじゃあ先が思いやられるぞ。


「まぁまぁ落ち着けって澪。それに二人のアレもせいぜいあと2、3日がピークだろ? こういうのは燃え上がるのも早いけど冷めるのも早いってな」
「そ、そうかな…そうだといいけど」


律の言葉に胸のつっかえが取れた気がした。もちろん律の言葉に確証なんてないが、それでも多少なり心が安堵したのは確かだった。


「燃え上がれ~♪ 燃え上がれ~♪ 燃え上がれ~♪ ゆいあずぅ~♪」


そしてそれに対を成すように、安堵を不安に変える存在がいるのもまた確かなのである。


「歌うんじゃないムギ! お前は連邦の白い悪魔か! ていうか焚きつけるなよ! これ以上燃え上がったらあの時の悪夢が…悪夢がっ! あぁあ…いやぁあぁーー!」


トラウマスイッチON!!
あの日、この場所で起きたあの事件。私にとってはトラウマ以外の何物でもない記憶が奥底から蘇る。頭の中を駆け巡るようにフラッシュバックする。


「あらあら、澪ちゃんたら相変わらずウブなのね。最近だいぶマシになってきたと思ってたけど…。やっぱり澪ちゃんは澪ちゃんだったということかしら?」


何一人で悟ってるんだよ。実際、本当に『イチャ禁』の時のような悪夢がまた起こってみろ。今度こそ私はうつ病患者として引き篭もり生活を送ることになるぞ。きっと2年は出てこないかもな。


「それともう一つ。りっちゃんのさっきの発言はちょっと聞き捨てならないわね。2、3日がピーク? 冷めるのも早い? バカ言っちゃいけないわ。ことゆいあずに関してはそんな常識は一切通用しないの。だからこそ二人は“ゆいあず”なのよ? 分かるかしら?」
「分かんねーし!! 1から10まで意味不明だし!!」


すまんムギ。私にもさっぱり意味が分からん。

律はこれ以上話していても埒が明かないとばかりに、冷めた紅茶を一気に飲み干し、ぷはぁ~と大きく息をついた。私も律に便乗するようにして、今日のお菓子にフォークを突き立て一口食べてみた。
今日のおやつはイチゴのケーキタルト。珍しくホールケーキなのは久しぶりのティータイムだから奮発したのだろうと思う。
とにかく甘い。ケーキの甘さが口いっぱいに広がって止まない。女の子として生まれたからにはこれも幸せの甘さと言えるだろう。
できることなら糖分摂取はこのお菓子だけにして欲しいが、それができれば苦労しないのはここにいる誰もが分かっていることだった。
唯と梓は自由と正義の名のもとに、全力全開で桃源郷へと旅立っていく。


「唯先輩、ぎゅってしてもいいですか?」
「ふふ、いいよ。おいであずにゃん」
「はいっ…ん」


梓は勢いよく唯の胸に顔を埋めると、頬を上気させて、ほぅっと熱い吐息をつく。


「くすっ、あずにゃんは相変わらず甘えんぼさんだねぇ」
「そんなことないもん…」
「そんなことあるよー」
「ぶー、そんなこと言う唯先輩にはお仕置きです!」


言って聞かない唯に、梓はほっぺを膨らませ、目の前に存在する双丘に手を添えモミモミと揉みしだく。


「きゃんっ! ちょ、あ、あずにゃぁ~ん、く、くすぐったいよぅ…!」
「あれれ? 唯先輩またおっぱい大きくなったんじゃないですか?」
「うぅ…あずにゃんが揉みまくるからだよぅ」
「じゃあもっと大きくしてあげます。いろいろ挟めるくらいに」
「あんっ! だ、だめだよあずにゃん、こんなところで…っ!」


とにもかくにも、ここにいる誰もが二人の行為を止めることができなかった。
ムギなんてそもそも止めるつもりすらなく、さらに燃え上がれと言わんばかりに熱視線を送っているし、私や律に至っては止めるに止められないもどかしい気分を味わうしかなかった。
できることなんてたまに聞こえてくる愛の囁きやら瑞々しいリップ音やらを左から右に聞き流すことだけで、根本的解決には全然なっていなかった。
とりあえず私が願うことは一つだけだ。
律の言うとおり、なるべく早く二人が通常モードに戻ってくれること。これが通常と言われたらそれこそ逃げ場がなくなるが、それでも、ムギの言うような常識外れにだけはならないことを祈るばかりである。


「ハァ…なんだかどっと疲れたよ…」


やれやれと溜息混じりに首を振って見せ、照りつける太陽差し込む窓の外に視線を送った。
外から聞こえてくる運動部員達の元気で張りのある声。それはとても清々しく聞こえ、張り詰めた緊張感や、鬱々しい気分を多少なり和らげてくれた。
部活動に精を出すのが学生の青春だと言うのなら、


「私達…いつになったら部活できるのかな…」


正直、それを言ったら終わりな気がした。



つづく
[ 2011/06/21 01:14 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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