※追記からどうぞ!
誰もいなくなった放課後の教室。
夕日に照らされた唯先輩の横顔は、いつもの天真爛漫なものとは違っていて…。
見るもの全てを魅了するような、儚げで――それでいて神秘的な印象を与えていた。
唯先輩の横顔に、私は胸が高鳴っていくのを確かに感じていた。
そしていつものと違う雰囲気の先輩に恐る恐る声をかける。
「ゆ、唯先輩?」
私に気付いた唯先輩は、こちらに目を向けふわっとした優しい笑顔を見せる。
しかしその笑顔にいつもの元気が感じられないのは私の勘違いじゃないだろう。
唯先輩の事を知っている人物が見れば、10人が10人、何かあったのかと聞くはずだ。
「あぁ・・・あずにゃん。来てくれたんだ・・・・ごめんね急に呼び出したりして」
「あ、あの・・・・・それで大事なお話ってなんですか?」
そうなんです。
ただ今私は大事な話があるとかで唯先輩に呼び出されたのだ。
一体何のようだろうとは思ったけど、実はちょっと期待していたりもする。
――もしかして、愛の告白?
なーんてとち狂った事を考えちゃった私だけど、もしそうなら嬉しいな~なんて思っちゃう。
だって…私も、その、唯先輩のこと好きだし…。
「うん・・・・・・あのね・・・・その・・・こんなことホントは言うべきじゃないって分かってるんだけど・・・・・」
「・・・・・・・・・」
どきどきどきどき。
私は胸を高鳴らせながら唯先輩の言葉を待つ。
「あ、あのね!私、あずにゃんのことが好きなの!・・・・・・・・友達とかじゃなくて、一人の女の子として・・・・・だからその・・・わ、私と付き合ってください!!」
キタ――――――――――(゚∀゚)――――――――――!!
これって愛の告白ですよね!!間違いないですよね!!や、やば…顔が…!
私はにやけそうになる顔を慌てて逸らしたのだが、そんな私の態度を唯先輩は別の意味にとってしまったようだ。
顔を逸らされ何も返事がない事をおかしいと思ったのか、唯先輩から暗い雰囲気が漂ってきた。
「ご、ごめんね・・・・・・・やっぱりやだよね・・・・・・・私たち女の子同士だし、気持ち悪いよね・・・・・・・」
な、なに言ってるんですかっ!そんなことないですよ!!
ムギ先輩風に言えばドントコイデスよ!!!
「あ、あのっ!」
「ごめんね!あずにゃん!」
目尻に涙を浮かべて駆け出した唯先輩は、私の横を通り過ぎようとする。
その様子をスローモーションで追いながら私は考えを巡らせる。
いいのか私!このまま唯先輩を行かせてしまって!
いいや駄目だ!このまま行かせたら漢――いや女がすたる!
「待ってください唯先輩!!」
通りすぎようとする唯先輩を咄嗟に後ろから抱きしめた。
逃がさぬよう、ぎゅっと、優しく、いつも先輩が私にするみたいに…。
「あ、あずにゃん?」
唯先輩は私のいきなりの行動に驚きを隠せない。
「もう…逃げちゃだめですよ唯先輩?…私まだお返事してませんよ?」
「で、でもぉ」
唯先輩は今にも泣き出しそうな様子で、私の腕の中でプルプルと震えている。
私も覚悟決めないとね、これ以上唯先輩を不安にさせたくないし…。
「一度しか言いませんからよく聞いてくださいね? 私も唯先輩のことが好きです! 私で良かったらお付き合いさせてください!!」
「え・・・ええ?・・・ほんとに? ほんとにほんと? 冗談とかじゃないよね?」
「もう!冗談でこんなこと言えるわけないじゃないですか・・・・」
「う・・・・・うぅぅ・・・・・ぐす・・・・・・ふぇぇぇん・・・・・・嬉しいよぉ!」
唯先輩は嬉し涙を浮かべながら正面からギュッと私を抱きしめる。
いつの間にか好きになっていたこの感触がすごく気持ちいい。
ちょっと名残惜しかったけど私は一端離れ唯先輩の顔を覗いた。
頬を赤らめ潤んだ瞳で私を見つめてくる唯先輩はすごく魅力的だった。
――もう言葉はいらない。
私たちは目を閉じどちらからともなく唇を重ね合わせた。
初めてのキスの味は――
ざらざらした布の味がした――
――?
ざらざら?・・・・・・布?
明らかにオカシイ。
そっと目を開けてみると…。
「ふにゃ?」
抱きしめていたのは唯先輩――ではなく、巨大な布の塊だった。
その塊は俗世間では枕と呼称されている。
「枕?・・・・・・なんで?・・・・・・唯先輩は?」
本当におかしい。気になった私は辺りを見渡してみた。
(あれ?さっきまで教室にいたはずなのに・・・)
そこにあった風景は見慣れた自室だけ。
「え?・・・・・・・まさか・・・・・・でも・・・・・・そんな・・・・あはは…はは?」
そんな馬鹿なと思っては見たものの、浮かんでくるのは一つの言葉。
これを認めてしまったら、私はすぐさま首吊り用のロープを探さなくてはならない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・夢オチ?」
――ふ
――ふふふ
な、なんて夢を見てるの私っ!?
フロイト先生も爆笑ですよっ、マジで!!
ああもうっ恥ずかしすぎて死にそうだよぉぉぉ!!
「うう・・・・・・ううう・・・・・・誰かいっそ殺してぇえええええ!!!」
清々しい朝の陽気の中、私は一人絶叫した。
ちなみに私の夢が現実になったかどうかは、また別のお話です。
ぐすん。
END
【あとがき】
仕事前にうp!!
最後までよんでくださってありがとうございます!
夢オチって色々できるから面白いです
前作のコメント・拍手してくださった方も本当にありがとうございました!
こういうのは励みになりますね^^
更新頑張ってください