とある百合好きの駄文置場。二次創作SSやアニメ・漫画等の雑記中心。ゆいあずLOVE!

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ゆいあず!!シリーズSS EP04 『軽音旅情浪漫譚 #6 ~命短し恋せよ乙女~』

※追記からどうぞ!



待ったなしの修学旅行――。
軽い昼食を挟んだのち、次の観光地へと向かった。
そこは音羽山の中腹にあるとある建造物。
金閣寺にも並ぶ国宝に指定された大事な文化財で、
「清水の舞台から飛び降りる」
という言葉で有名な清水寺と呼ばれる場所だった。


「えーと…おべんとばこ…教室に…わすれたから…回収よろしく…っと…お姉ちゃんより」
「おーい唯! メール終わったかぁー? 行くぞー!」
「ほーい! 今行くよー!」


背後から聞こえてくる律と唯のやり取りを耳に入れながら、清水寺の本堂へと足を踏み入れた。古い木造の柵に手を掛け、恐る恐る足元に目を向けて見たが、その途端にカクカクと膝が笑い出した。


(た、高い…!)


ゴクリと唾を飲み込み、ただの一言も言葉を発することが出来ない。
そりゃ清水の舞台が高い場所にあるのは知っていたけど、実際に舞台に立つのは初体験だ。
こんなの見せられたら私に限らず誰だって尻込みしてしまうに違いない。

そうさ、こんなの怖いに決まってる。
落ちたら死んじゃうんだぞ? 
死んだらゆ、幽霊になっちゃうんだぞ? 
そ、そんなの怖いに決まってるじゃないか!


「わぁ~高いわねー。こんなところから飛び降りたらケガだけじゃ済まないかも。さすが清水寺ね」
「け、ケガ!? い、いやいやムギさん…?」
「あ、あれおかしいかな? す、擦り傷くらいかしら?」
「……」


傷どころか死ぬだろうというツッコミはこの際入れないことにした。
ビビりの私と違い、ムギは何てことないようなひょうひょうとした顔で柵から身を乗り出していた。
背中を一押ししただけでも落下してしまいそうな乗り出し方に私は堪らずムギに声をかける。


「お、おいムギ…!お、落っこちちゃうぞ…!」
「ふふ、大丈夫よ。この程度の高さなら死にはしないから」


どうやらムギにとって清水の舞台は“この程度”の域らしい。
それが大袈裟に聞こえないあたりがムギのすごいところだった。
末恐ろしいやつだ…。


「うふふ♪ それより澪ちゃん」
「な、なんだよ…」
「ほら見て。ここからなら京都の町並みがよく見えるよ」
「え…」


ムギの指差した先に目を向た瞬間、一瞬サァァっと強い風が吹いた。
髪を押さえながら目を閉じて、そーっと瞼を開く。
するとそこには見る者すべてを魅了するような絶景が広がっていた。


「おおっ…!」


それは思わず声が出てしまうほどの光景。京都の綺麗な町並みが眼前に広がっていた。
こんなものを見せられては写真を撮らずにはいられない。手が無意識のうちにカメラに伸びていた。
さっそくその景色をカメラに収めようとシャッターを押したのだが、


「うおぉぉーすげー!!」
「すごいすごーーい!!」
「ッ!?」


撮った瞬間、私の両脇から何者かがニョキっ!と飛び出してきた。律と唯だった。


「あ、あぶなっ!?」


危うくデジカメを清水の舞台から飛び降りさせるところだった。
とりあえずは無事だったけど危ないことこの上ない。


(心臓飛び出るかと思ったぞ…)


もしデジカメと一緒に私まで飛び降りてたらどう責任取るつもりだよまったく…。


「いい眺めだなー! っていうか高っ!?」
「ここから飛んだら鳥になれるかも!」
「…ああなれるだろうな」


もちろん一瞬だけだが。




 ◇




清水寺の裏手にはとある小さな神社があるのはご存じだろうか。
名を地主神社と言って、実は京都が初めてな私でもこの場所の存在だけは事前に知っていた。
何故なら地主神社は縁結びの神様が祀られている神社で、若い女性やカップルには人気のスポットだからだ。
縁結びについて調べていたとき真っ先に発見したのがこの神社の名前だった。

え? どうして縁結びのことについて調べてたかって?
そ、そりゃあ私も若い女の一人だからな。気にならないって言ったら嘘になるし。
ちょっとくらい縁結びの神様のご利益にすがってもいいんじゃないかなーって。


「だ、だからって別に気になる人がいるわけじゃないぞ! た、ただその一応だよ一応! こ、これから先、もしかしたらってこともあるかもしれないし! 保険だよ保険!」
「誰に話しかけてんだよ澪?」
「り、律!? い、いやその…」
「もしかして妖精さんにでも話かけてたのー?」
「いや唯…妖精さんて…」


それじゃ私が痛い人みたいじゃないか!
私が妖精さんと話しているのがさも当然のような表情で語る唯に文句の一つでも言ってやろうかと思ったその時だった。

ビュンっ!

私達の横を過ぎ去る赤い旋風を目撃した。
なんだなんだ、と目を見張る私達を余所にその赤い旋風は物凄い勢いで階段を駆け上がっていく。


「私はこの時を待っていたぁあぁーーーー!!!」


そんな叫び声を上げながら駆け上がっていく赤い旋風。いや、あれはもはや弾丸か。
その赤い弾丸の正体とは、私達3年2組の担任であり、軽音部の顧問でもある山中さわ子先生その人だった。


「「「「さわちゃん(さわ子先生)…」」」」


重なる声。さわ子先生の必死な背中を見つめながら、私達は顔を見合わせハァっと溜息を付く。


「必至だね…さわちゃん」
「そうだな…」


私もああはなりたくないと思う。切実に。


「まぁ…相変わらず恋愛運にだけは見放されてるみたいだしなぁ。そりゃ神様にもすがりたくもなるだろうさ」
「女子にはモテモテなのに…もったいないわぁ」


律はともかくムギの物言いには若干引っ掛かるものがあったけど、それはまぁ気にしないことにする。
確かにさわ子先生の表の顔は、優しさや気品に満ち溢れ、誰の目に見ても美しいと言えるだろう。一種の芸術のように光り輝いてキラキラしている。そんな甘いマスクに騙され…い、いや憧れている生徒達は一人や二人じゃないし、実際、学校でのさわ子先生の人気は群を抜いていた。

でも。

それでもやはり現実は厳しいのだろう。
それはさわ子先生のあの必死さを見れば一目瞭然だった。


さわ子先生の後を追うように鳥居をくぐると途端に鼓膜を突く黄色い声。
キャーキャーと女の子の声が響く境内。とりあえず私達は、地面に堂々と鎮座した、異彩を放つ大きな石の横に移動した。


「なるほど、これがあの有名な“恋占いの石”か…」


恋占いの石と書かれたその石を見つめながら、夢にまで見た実物を前にして少し感慨深い気持ちになる。
とりあえず写真に撮っておこう。


「ねーねー澪ちゃん。あれ何やってるのかな? 目瞑ってこっちに向かってくるよ? もしかしてスイカ割りしてるの?」
「…どこにスイカがあるんだよ…」


唯の的外れな発言に溜息をつきながら首を振る。
見れば反対側にも同じような石があって。
その延長線上をとあるクラスメイトが目を瞑りながらふらふらとした足取りでこちらに向かってくる。


(ああ、なるほどな…)


そのクラスメイトの行動にはもちろん意味がある。事前に調べてきた私はその理由を知っていたし、実際この地主神社のメインイベントと言っても過言ではないだろう。


「くくっ」


ふいに律が悪戯を思いついたような子供のような顔で笑い出した。


「バカだな~唯は。割るのはスイカじゃなくてこの石なんだよ」
「え、えぇぇ!? こんなおっきな石どうやって割るの!?」
「手刀で。スパーンっとな!」


スパーーンっ!!

間髪入れずにとりあえず律の頭に手刀を決めてやった。


「ひ、ひでぇことしやがる…」


痛がる律の文句を聞き流しながら無視を決め込む。
まったく、罰当たりなこと考えやがってこのバカは。
この“恋占いの石”が真っ二つになった日には、全国の恋に恋する乙女達が路頭に迷うことになるじゃないか。


「律の言ったことは嘘だからな」
「え、そうなの?」
「ああ、ホントは――」
「じゃあちょっと聞いてくるね!」


説明しようとした矢先に駆け出していく唯の後ろ姿に少し目尻が熱くなった。


「頼むから人の話は最後まで聞いてくれ…」


溜息交じりの呟きは虚空に消えて跡形もなくなった。
そんな私の心情などお構いなしに、唯はとある一人の女子生徒の前に止まり声をかける。


「ねぇエリちゃん」
「あれー唯? どったの?」


エリと呼ばれたその少女。本名は瀧エリ。
サイドテールがチャームポイントの彼女は、私達のクラスメイトであり、今“恋占い”をしているもう一人のクラスメイトの連れだということが分かる。そのクラスメイトといつも一緒だからという理由もあるが、さっきから瀧さんの「頑張れー!」という声援が引っ切り無しに贈られていたから。


「アカネちゃん何やってるのかな?」
「んん? あーあれね、えっと…」


唯がついに核心に迫る。
私が説明しようと思っていたけど、まぁ誰が説明したって同じことなので特にこだわる必要もない。
ちなみにアカネちゃんというのは先でも述べたとおり今実際に“恋占い”をやっているもう一人のクラスメイトだ。
本名は佐藤アカネ。瀧さんの親友であり幼馴染であるらしく、仲は相当にいい。


「あの二人っていつも一緒よね。なんだか唯ちゃんと梓ちゃんみたい」


ムギの瞳が妖しく光る。
こいつもまた何か変な事考えてるな…。


「そうだな」
「りっちゃんと澪ちゃんもね」
「ぶっ…そ、そうか…? わ、私達はあそこまで仲良くは…」
「うふふふふ♪」


意味深な含み笑いにムッとすると、ムギは「あらあら♪」とはぐらかして。
逃げるように唯と瀧さんの方へと歩み寄って行った。
まったく、なんだって言うんだよ。


「アカネがさぁ、どうしてもやりたいって聞かなくって」
「ふんふん。それでそれで?」
「だから私は言ってやったわけだよ。『仕方ないなぁアカネは。ちょっとだけだよ?』ってさ」
「うん?」
「うん」
「え?」
「え?」
「……」
「……」


何やら深刻な顔で疑問符を浮かべる唯と瀧さん。
しかし次の瞬間、私は奇跡を目の当たりにすることになる。


「あれ? そういえばアカネってば何やってんのかな? なんか当たり前のように応援しちゃったけど」
「うおーい!!」


なっ!? ゆ、唯がツッコミを入れた…だと…?
あ、あの唯にツッコミを入れさせるとはあの子相当できる…。
あなどりがたし、瀧エリ…さん。

ボケ専門であるはずの唯にツッコミを入れさせることのできる逸材に私は驚きを隠せない。素直に感動だった。恋人の梓にすらできないことを当たり前のようにやってのけた彼女に、少しばかり尊敬の念を抱く。


(瀧さんってどことなく唯に似てる気がする)


と、そんなことよりもどうやらようやく私の出番が回ってきたようだ。
説明しようとした矢先に出鼻を挫かれる事態が続いたが、もう邪魔は入るまい。


「えーとな。この恋占いの石は――」


意気揚々、自信満々に説明しようとしたのだが、


「アカネちゃんが今やっているのは恋占いなの。ここにある石の先にもう1つ大きな石があるでしょ?」
「うん」
「あるね」


説明を始めたのは私ではなく、ムギだった…。


「この2つの石は“恋占いの石”という守護石で、石から石までの距離はだいたい10メートルくらい。石から石の間を、目を瞑ったまま辿り着ければ恋が叶うと言われているの」


ああ、なるほど…。
結局私はこういう役回りなんだな…。
いいもんいいもん…。私なんて…。


「えぇえー! じゃあアカネってば誰か好きな人がいるってこと!? その人との恋を成就させるためにあんなに必死になってるってこと!?」
「そうなるわね」


コクンと、さも当然のように頷くムギ。
瀧さんは信じられないようなものを見るような目で“恋占い”に没頭する佐藤さんの後ろ姿を見つめていた。
茫然自失。しかし徐々に体を震えてくる。目尻には涙を浮かべ、プクーっとホッペを膨らまして。
そしてついに我慢の限界が訪れて、


「ッ!」
「あっ、エリちゃん!?」


唯の制止も聞かずに駆け出した瀧さん。
ふらふらと向こう側の石に足を進める佐藤さんの背中目掛けて突撃していく。
手を伸ばし、声を張り上げて。


「アカネだめぇえええ!!」
「え? え? ひゃあっ!?」


目を閉じている佐藤さんには何が起こっているか分かっていないのだろう。キョロキョロとせわしなく顔を左右に振りながら疑問符を浮かべていた。そんな佐藤さんの背中にダイブを決めこんだ瀧さん。突然の事に驚いたであろう佐藤さんは、黄色い悲鳴を上げながら、なす術もなく前方へと崩れ落ちた。


「あいたたっ…あ、あれエリ? な、なにして…」
「ああぁぁっ! 遅かったぁーー!?」
「ど、どうしたの?」
 

何が何だか分かっていない佐藤さん。
背中に引っ付いたまま顔を上げた瀧さんは目の前に鎮座している恋占いの石を恨めしげに見つめていた。
目尻にはどんどん涙が溜まっていく。今にも泣き出しそうだ。


「な、なぁムギ? どうして瀧さんあんなことしたんだ?」
「うふふふ♪ きっとアカネちゃんの恋占いを妨害したかったんでしょうね♪」
「え!? な、なんでだよ?」


親友という関係を考えれば、逆に応援しそうなものだけど。
でももし瀧さんの目的が恋占いの阻止だと言うのなら、それは見事に破綻したわけだ。むしろ最後の一押しをしてしまったのは阻止しようとした本人と言える。


「恋占いがうまくいって欲しくない理由なんてそう多くないと思うけど。誰だって、自分の好きな人が他の誰かのことを想って恋占いなんてしてたら気が気じゃないでしょ?」
「は? それってどういう…」
「まぁでも、あの二人の場合はそんな心配はないでしょうね」


ムギの言っていることはよく分からなかったけど、とりあえず「そ、そうか」と納得したようなフリをしてその場を収めた。
そうして瀧さんと佐藤さんに視線を戻すと、なにやら号泣している瀧さんを佐藤さんが必死になだめていた。


「びぇええええん! アカネのバカァァ! すかぽんたん!」
「な、なんで…? ど、どうしたのエリ?」
「アカネに彼氏なんていらないでしょ! 私がずっと傍にいるんだからぁあ!」
「えぇ!? あ、あの…エリ、それって…」
「アカネを一番好きなのは私だもん! 仏像よりもコーラよりも大好きだもん! それなのに、それなのに…アカネのバカぁ…!」
「あ、あの…えーと…」


瀧さんの突然の告白に佐藤さんの顔がカァーっと茹蛸のように真っ赤に染まる。
そこでようやく私にも合点がいった。
納得したフリがフリではなくなった瞬間だった。


(ああ…ムギが言ってたのはこういうことか…)


その場面を見せられて初めて気付くとは、私ってもしかして相当鈍感なのだろうか。
いや、律ほど鈍感ではないだろうさすがに。


「と、とりあえず泣かないで。ね?」
「うぅ…ぐす…」


佐藤さんは真っ赤な顔でよしよしと瀧さんの頭を撫でる。
優しくて温かみのあるその笑顔にちょっと見とれてしまったのは内緒だ。
その笑顔は、瀧さんの溢れる涙を徐々に止めていく。目尻に残った大粒の涙を指で掬って。瀧さんはくすぐったそうに目を閉じて。それはまるで、女の子なら誰しも憧れる王子様とお姫様みたいな構図に見えた。


「もう…エリはホントに仕方ない子だね」
「ぶー、どういう意味よー」
「ふふ♪ 可愛いってことだよ」
「そ、そんなこと言ったって誤魔化されないんだから! そ、それよりアカネ! 相手は誰なの!? 教えてよ!!」
「もう…そういうところは鈍感なんだから。まぁ強いて言うなら、恋占いのご利益はばっちりだったってことかな。誰かさんのおかげでね」
「へ? それって…え?」
「あとは自分で考えてね♪」


佐藤さんはそういい残すと、座り込んだ瀧さんをそのままに、タタタっと軽快に駆け出しその場を離れた。
一瞬見えた彼女の顔は、耳まで真っ赤に染まっていた。
そしてポツンと置き去りにされた瀧さんもすぐにハッとして立ち上がり、


「ちょ、ちょっとアカネェ! 待ってよぉー! それってどういう意味なのぉー!」


佐藤さんの後を猛スピードで追いかけていった。
残された私たちはただ二人の後姿を見送ることしかできなかったけど。
あとは若い二人次第なので後を追うのは野暮ってものだろう。


(…頑張れ二人とも…)


私は目を細めてフッと笑みを零し、無言のエールを贈った。
二人の未来に幸あらんことを――。


「我おもう、故に我あり。私の存在理由、証明してくれてありがとう」


とりあえずムギの物言いは相変わらず意味不明だった。


「とりあえず鼻血は拭きなさい」
「うふふっ…幸せってこういうことを言うのね」


こうして恋占いにまつわる1つの物語が終幕を迎えたわけだが。
残念な事に物語が1つだけだと決まっているわけじゃない。
その証拠にまた新たな恋占いの物語が、


「よぉーし!今度は私が挑戦するぞぉー!」
「おっ! 唯もやるのか? よぉーし! それじゃ私と勝負だ!」
「おおっ! 受けてたとう!」
「先に石にタッチした方が勝ちだかんな!」
「ふんすっ!」


本当に恋占いなのかと疑いたくなるような。
唯と律の攻防戦が、今始まろうとしていた。


「ていうか唯。お前はもう梓がいるんだから恋占いしても意味ないんじゃないか?」
「ちっちっちっ! 乙女心が分かってないなぁー澪ちゃんは」


まさか唯に乙女心云々言われる日がこようとは思ってもみなかった。
はは…私、乙女心が分かってないのか…。
女の子なのに…。はは…。


「女の子はいつだって恋に臆病なんだよ? あずにゃんとの恋はこの先もずっと続いてくんだもん。二人の絆をもっともっと強く深くするために私頑張るよ! ふんすっ!」
「よーし用意はいいか唯!!」
「おすっ!」


恋占いの石の前に仁王立ちの二人。それはさながら歴戦の勇士を見ているかのよう。
二人は互いに目配せしてコクンと頷きあって。
正面を向いてギュッと目を閉じた。
そして――。


「よぉ~いどーん!」


ノリノリのムギの掛け声で二人は同時にスタートを切った。
いや、これもう恋占い関係ないよな? 


「よっしゃぁぁあ! いくぜぇ!!」
「負けないよ! りっちゃん!!」


とにもかくにも二人の戦いの火蓋は切って落とされたわけだが。
しかしそんな戦いも初っ端から前途多難な色を見せ始める。


「すんっ!すんっ!すんっ!」
「うおぉぉーーい唯っ!!? お前どこ行く気だよっ!! そっちは出口だぞっっ!!」


私は声を荒げて叫んだ。
唯は最初こそ真っ直ぐに進んでいたものの、突然L字を描いたと思ったらそのままUターンしてこっちに戻ってきて。
私たちの真横を通り過ぎ、来た道を逆走し始めた。


「すんっ!すんっ!すーーんっ!」
「すんすんはいいから戻ってこぉぉーーい!!」


私の呼び掛けなど最初から耳に入っていないように止まることを知らない唯の足。
すんすんと鼻息の荒さが増す度にさらにスピードを上がっていく始末。
よくもまぁ目を閉じたまま障害物にも当たらずに突き進めるものだ。私だったら恐くて歩くのもやっとだと言うのに。
いや、視界を奪われていれば誰だってそうだ。
二人の神経がどこかおかしいだけなんだ。


「ってそんな事考えてる場合じゃない。唯を見失ったら大変だ。追いかけないと!」


すでに唯は、器用にも出口にそびえ立つ鳥居を飛び出し階段を駆け下りている。
おい!! ていうかもう目開けてるんじゃないのかアイツ!!
ありえないだろ常識的に考えて!!


「ムギ! 律を頼んだぞ! 私は唯を追うから!」
「えーと…」
「どうしたんだ?」


あはは…と苦笑いを浮かべながら、ムギの頬には珍しくも冷や汗が伝っていた。


「あの、りっちゃんならさっき林の方に突っ込んで行ったんだけど…見失っちゃった…」


ムギが指差したのは恋占いの石など存在するはずもない獣道と言う名の森林だった。


「あああっ、あんのバカりつぅうううう!!!」


その後、軽音部のトラブルメーカー二人(特に律)を見つけるのに相当な時間を要した私とムギは、夢にまで見た恋占いはもちろん、参拝さえさせてもらえなかったのだった。




帰りのバスの中――。


「澪ちゃんコワイ…」
「ありゃ人間じゃねぇ…鬼だ…」


唯と律の頭上には、バカでっかいタンコブが1個ずつ作られていた。
もちろんそれは私の鉄拳制裁が炸裂した副産物。


「なんだって?」
「「すみませんでしたぁぁ!!」」
「あらあら…」


放課後土下座タイムは終わらない。
厳密に言えば、ホテルに到着するまで続くのである。



つづく
[ 2011/04/03 12:58 ] 未分類 | TB(0) | CM(1)
アカエリは唯梓や律澪に優るとも劣らないベストカップルだと思うんですよねぇ
[ 2011/04/15 02:12 ] [ 編集 ]
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