とある百合好きの駄文置場。二次創作SSやアニメ・漫画等の雑記中心。ゆいあずLOVE!

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ゆいあず!!シリーズSS EP04 『軽音旅情浪漫譚 #5 ~梅咲く宮と願い絵馬~』

※追記からどうぞ!



金閣寺からバスに乗ること数分――。
到着したのは京都市上京区にあるとある神社で、名を北野天満宮と言うらしい。


「きたの…てんまんぐう?」


唯は門の中央にでかでかと書かれた“天満宮”という文字を見つめながら腕を組んで首を傾げた。頭の上には大量のはてなが浮いては消えていたが、結局答えには辿り着かなかったのか、フルフルと首を横に振った。
それで終わってしまえばよかったものを、唯はその矛先をそのまま私に向けて。穢れを知らないつぶらな瞳を私に向けてくる。いつものことだと言ってしまえばそれまでだが、何故か少し嫌な予感がして「うっ…」と一瞬たじろぐ。


「ここってどういう神社なの澪ちゃん?」


まぁ予想通りと言えば予想通りの質問。嫌な予感は見事的中である。


「わ、私に聞くな。私だって初めて来たんだから、聞かれたって困る」
「えー、澪ちゃんなら知ってると思ったのにー」


私ならって・・・さすがに過大評価しすぎだぞ。
頼りにされるのは悪い気分ではないけど、なんでもかんでも私に話を振るのはやめてくれ。

それと、今更だけど一つ訂正しておこう。
唯が穢れを知らないっていうのは間違いだ。たぶんこの中で唯ほど穢れを知っている女子はいないだろう。梓と同じく、軽音部で最初に大人の階段を駆け抜けていった純真無垢の皮を被った淫娘。
それが平沢唯と言う名の少女。
少女ではあるが処女ではない。洒落じゃないぞ?
穢れを知ってもなおその瞳を向けることのできる唯には正直感服する。


(唯の天然はそのうち世界を滅ぼしそうだ…)


親友の将来の行く末にいささか不安を覚えながら、やれやれと首を横に振って見せる。

と、ふいに背後から迫ってきた影に肩をガシっと掴まれた。
誰だ? そう思って振り返ってみると、最初に目に入ったのは広いオデコだった。
太陽に照らされた眩しいそれは、自己主張しすぎなほど光りを放っている。


「あ~らぁ~みおちゅわんは勉強不足ですわねぇ~、そんな事も知らないンですのぉ~」


悪ふざけ全開、お嬢口調で小ばかにした態度を取るオデコの塊は、言わずと知れたバカ。いや、律。
幼馴染として長い付き合いだけに、私に対する接し方には遠慮がない。皆無と言ってもいい。まぁそれは別にいいけど、それならそれで私だって遠慮はしない。
何故なら、今更遠慮するような関係でもないのだから。


「お前だって知らないだろ!」


ゴツンっ!?

もはやお約束になりつつある律への鉄拳制裁。景気のいい音を響かせたのは私の拳か律の頭かそれは分からないがとりあえず。律の頭の上にはそれを象徴するかのような形のいいコブがぽっこりと。


「うぅ…ぐすっ…み、みおしゃんはどうしてそんなに暴力的に育ってしまったの? そんな子に育てた覚えはないですじょ…?」


律は涙目になりながら、腫上がったコブをさすさすと撫で回す。


「ぜんぶお前のせいだろ。それにお前に育てられた覚えはないぞ」


とは言ってみたものの、律に育てられたというのはあながち間違いでもないかもしれない。
今の私の性格は、律との付き合いによって身に付いたものだと言えなくもないし。律がいなければ今の私はないといっても間違いじゃないかも。大袈裟に言わせてもらうなら、私の人生に律と出会わなかった未来なんて想像もできなかった。
いい意味でも悪い意味でも。


「ムギちゃんはこの神社の事知ってる?」


私と律のやり取りなんてどこ吹く風。唯の矛先は私からムギに向けられていた。
律に聞かないあたりさすがと言えるが、まぁ当然と言えば当然の選択である。ムギは金閣寺のことも詳しかったし、天満宮のことももしかしたら知っているかもしれない。
私自身もそう思っていた。
だが、予想に反してムギは首を縦には振らなかった。


「ごめんなさいね…。ここは私もよく知らないの…」
「が、ガーン!? む、ムギちゃんまで…!」


ムギの返答に大ショックを受けた唯は、大袈裟に仰け反った。
京都に着いて以来、異様にテンションが高かった唯だが、先刻金閣寺であずにゃん3号と戯れたおかげか、その元気にも拍車が掛かっている。梓と離れ離れになって少しは大人しくなるかと思っていたが、とんだ思い違いだった。


「ぜ、絶望した! ムギちゃんの無知さに私は絶望したぁぁ!」
「……ッ!?」


某漫画の決めセリフを置き土産に脱兎の如く駆け出した唯は、そびえ立つ3つの鳥居を駆け抜け、あっという間に楼門をくぐり抜けて中へと入ってしまった。
さて、そんな唯の捨てセリフに対して予想外にダメージを受けていたのはもちろんムギである。
置き去りにされたムギはただただ無言で唯の後姿を見つめていた。


「……」


もちろん唯としては冗談で言ったのだろうが、ムギにとってはそうではなかったらしい。
ムギのアイデンティティと言っても過言ではないその特徴的な眉毛が、珍しく逆立っている。その鋭い眼光に恐れをなしたのか、周りの木々達がざわざわとざわめき立つ。
も、もしかして怒っているのか…? あのムギが…?


「む、ムギ?」
「む、ムギしゃん?」


彼女から只ならぬオーラを感じて恐る恐る声をかける私と律。いや、この場合声をかけざるを得なかったと言うべきか。今声をかけなければ、私たちもそのプレッシャーに飲み込まれてしまいそうだったから。


「………」


しかしムギからの返事は無言の一点張り。もちろんただの屍でもない。
無言を貫いていた彼女は、返事と言わんばかりにおもむろにポケットに手を突っ込んだ。自前の携帯を取り出し、残像すら見えるほどの高速でカカカっとキーパッドを叩き始めた。どうやら電話をかけているらしい。
携帯を耳に押し当てた瞬間、通話はスタートした。
ムギの表情には一点の穏やかさは感じられない。真剣そのものだった。

電話の相手は誰だ?


「斉藤? 私よ」


その名を聞いて、相手はどうやら琴吹家の執事さんらしいことが分かった。


「突然だけど、今すぐ北野天満宮について調べてちょうだい。ええ、京都の神社よ。そう、すべて。天満宮に関するすべての歴史をあらってほしいの」


大至急お願いね、と続けるムギ。それは通話終了の合図だったらしい。
携帯の電源ボタンをピっと押し、いそいそと携帯をポケットへと仕舞い込んで、


「ふぅ、これであとは連絡を待つだけね。待ってて唯ちゃん!」


そう言ってフンスっと気合の入った鼻息をついたムギの表情は、いつもの穏やかな笑顔に戻っていた。ニコッと微笑んで見せるムギ。しかし今この時は、その笑顔が逆に恐く感じた。ビクっと体を反応させ、ゴクリと唾を飲み込む私と律。しかしそんな私たちの心情など知りもせず、ムギはいつもの調子で話しかけてくる。


「さ、二人とも。唯ちゃんに置いていかれちゃうよ? 早く行きましょ♪」
「「あ、ああ…」」


ムギはクスっと小さく笑い、くるりと踵を返した。
唯の後を追うべく歩き出した彼女の後に続くように私と律も後を追った。


(…なんか、ムギの新たな一面を見た気がする…)


唯の何気ない一言を本気と捉えたムギ。
先ほどの電話の内容から察するにムギの考えは大体読める。


(そ、そこまでするか? 普通…)


だが実際、それを当たり前のようにやってのけるのが琴吹紬という名のお嬢様だ。
きっとこの後、天満宮についてのすべてを知ったムギは自信満々になって唯に語るのだろう。


「ムギって、意外と冗談通じないよな…」
「意外でもないけどな。結構頻繁に信じてるぜ? 私の冗談とか」
「ま、まぁ確かにな…」


それだけムギが純粋だって言うことなんだろうけど、その純粋さが逆に心配だった。
そのうち変な人に騙されておかしな書類に判子を押さないことを祈るばかりである。




 ◇




天満宮の境内は意外に広く、あちらこちらに梅の木と牛の像が立ち並んでいた。
キョロキョロと辺りを見回しながら境内を歩き回っていると、ふと1体の牛の像の前で見慣れた女子生徒とクラスメイト数人を発見。牛の像を取り囲むように何かをやっていたので、とりあえずその女子生徒に声をかけてみる。


「和、何してるんだ?」


女子生徒の名前は真鍋和。
桜高の生徒会長にして唯の幼馴染でもあるスーパーウーマンだ。もちろん私たち放課後ティータイムの共通の友人でもあり、いつもお世話になっているので頭があがらなかったりする。


「ああ澪、ちょっとね、牛の像を撫でてるのよ」
「撫でる?」
「ええ」


見れば、和に習って数人のクラスメイトがここぞとばかりに牛の頭を撫でている。
もしかして、牛の像を撫でると何かしらのご利益があるのだろうか?


「ねーねー和ちゃん。撫でるとなんかいいことあるの?」


好奇心の塊である唯が、目をきらっきらさせながら問いかけた。
和はそんな唯の様子にクスっと微笑みながら牛の像を見つめて語り始める。


「北野天満宮は菅原道真を祀った神社でね? 菅原道真は学問の神としても有名で、受験生達からは多くの信仰を集めているの。それで道真と関係の深い牛の頭を撫でることで頭が良くなるっていう話よ」
「へぇ~! 和ちゃん詳しいね! よーしそれじゃさっそく。りっちゃん!」
「おう! やらいでか! そーれ、なでなでなでなで~♪」
「ここがええのんかぁ~♪」


和の話を聞くやいなや、唯と律は自分らの頭が良くなるように願いを込め、牛の像を撫で始める。頭だけでいいにもかかわらず、全身くまなくこれでもかというくらい撫で回していた。撫で回される牛の気持ちになると正直ゾッとする光景だった。


「ば、ばちが当たるんじゃないかしら…」


結果から言えば和の言うとおり二人には天罰が下った。
何事もやりすぎは禁物。二人にはさわ子先生からの愛のムチが炸裂し、二人仲良く説教タイムである。
私はやれやれと思いながらもなんとなくおかしくなって笑ってしまった。


「にしても、和は詳しいんだな。もしかして調べてきたのか?」
「えーと、修学旅行のために調べたわけじゃないんだけど、前に1度本で見た事があったのよ。それで記憶に残っていただけなの」
「へぇー」


さすが和だな、と私は改めて和の博識ぶりに感心を抱く。
ムギ同様、学年で1、2を争うほどの秀才は伊達じゃないのかもしれない。


「他には何か知ってることあるのか?」


和は顎に手を添えてうーんと考え込む。


「あとはそうね…牛と同じくらい梅の花も菅原道真と関係が深いってことかな。飛梅伝説っていうのがあって梅が神紋になっているらしいの。たぶんそういった理由から天満宮の境内には梅がたくさん植えられているんだと思うわ」
「へぇー勉強になるな」
「他にも道真の命日にちなんで毎月25日には天神さんって言われる縁日が開かれるらしいわ。京都市が大学の町らしくて、大学受験合格を祈願する絵馬が多いらしいの。私たちも受験生なんだし、折角だから絵馬を書いていくのもいいかもしれないわね」
「なるほど、それはいいな!」


数ヵ月後には大事な受験を控えている身としては、またとない機会だった。
大学受験成功を祈願して、絵馬の1つくらい書いておいたって損はないだろう。実際に頑張るのは自分自身だとしても、少しくらい学問の神とやらにあやかってもバチは当たらないはずだ。


「ところで澪」
「何だ?」
「……さっきからムギが私のこと睨んでるんだけど、何かあったの?」
「え?」


ムギの視線は一直線に和を射抜いていた。


「~~っ!~~っ!!」


確かに睨んでいるように見えなくもないその表情。
私怒ってます、悔しがってます感はバリバリ伝わってくる。
両の頬をぷくーっと膨らまして、持ち前の沢庵眉毛を逆立てて、涙目でプルプルと震える琴吹家の社長令嬢。どう見ても怒っている。が、そんな怒った顔もどこか可愛らしく映った。


(どうしたんだムギのやつ…)


そんな時、ふと先ほどのムギと斉藤さんの電話を思い出す。


(あっ…もしかして!)


ああなるほど、と私は心の中で呟いた。すぐにムギの怒りの理由に気付く。
たぶんムギはこれから自分が語るはずだったことを和に先をこされてしまって、自分の役目が無になったことに腹を立てているのだと思う。腹を立てているっていうよりは悔しがっているって方がしっくりくるか。ムギは意外に負けず嫌いなところがあるし、やりきれない気持ちでいっぱいなのだろう。


「和…そっとしておいてやってくれ」
「ど、どうしたの? 私何かしたかしら?」
「いや、和は何もしてないよ…ただタイミングと運が悪かっただけなんだ…」
「い、意味が分からないんだけど…とりあえず分かったわ」


ムギの心情を嘲笑うかのように、彼女の制服のポケットから突然携帯の着信音が鳴り響いた。


(ああ、ついに来てしまったか…)


電話の主は、間違いなく斉藤さんで間違いない。そう確信する。
きっと天満宮について調べ終わり、それをムギに伝えるべく律儀にも電話をかけてきたのだろう。
さすが琴吹家に仕える執事なだけあり、仕事も早い。

早いのだが…。

時すでに遅いということは、私を含め、当人であるムギが一番よく理解しているだろう。唯の好奇心も納まりつつある中で、今更天満宮について語ったところで感動も二番煎じにしかならないということを。


(ああ、無常…)


ムギは今日この日、修学旅行を通して人生の儚さを学んだのだった。









「おっ! 絵馬があるぜ!」
「和の話通りだな、受験生の絵馬でいっぱいだ」


その後、和と別れた軽音部一行は、先の話でも出ていた絵馬を掛ける所に来ていた。
そこにはたくさんの絵馬があり、『第1志望合格!』や『大学に受かりますように』などなど。
これから受験を控えている人達の言葉が所狭しと掲げられていた。
しかし中には――。


「あ、でも受験関係ない絵馬も結構あるね」


唯の言うとおり掲げられた絵馬は何も受験の事ばかりではなかった。


「ホントだね。世界平和とか家内安全とか。こっちには安産祈願まであるわ」


絵馬の内容に感心を示しながら、うんうんと頷くムギ。


「まぁ実際、願い事なんて何書いたっていいんだろうな」


願いなんて人それぞれ、受験関係ない人は尚更だろう。


「それよりさ、折角だし私たちも書いていかないか?」
「おっ!澪ナイスアイディ~ア!」
「わぁー書きたい書きたーい!」
「ナニを書こうかしら…?」


というわけで早速私たちも絵馬を書いていくことになる。
一枚の絵馬に、それぞれの願いを書くことに決め、律、私、ムギ、唯の順番で書き連ねていった。
完成した絵馬を最後の唯が威風堂々と掲げて目的は達成。
無事掲げられた絵馬を一同ドヤ顔で見つめていた。

果たして私の、みんなの願いは叶うだろうか――?

みんなの願い事を見つめながらそんなふうに思う。
しかしふと目に入った願い事に「ん?」と疑問符を浮かべた。


『 武道館進出! 田井中律 』
『 志望校に合格できますように 秋山澪 』


まぁここまではいいのだが…。


『 世界征服 生涯是百合 琴吹紬 』
『 生涯あずにゃん! 平沢唯 』


この二つの願いは一体何なのだろうか?


(ムギ…お前は一体ナニを願って世界征服なんて書いたんだ? ていうか生涯是百合ってナニ? 意味分かんないんだけど?)


まぁ深くは問うまい。というか逆に恐くて聞けないぞ、これ。
とりあえずムギにはムギの譲れない願いが、誇りがあるのだろうと勝手に納得することにして。
もう一つの願い事『生涯あずにゃん』について書いた本人に質問してみた。


「なぁ唯」
「なぁに澪ちゃん?」
「生涯あずにゃんってどういう意味なんだ?」
「ふふっ! 聞いて驚きなさるな!」
「あ、ああ…」


事と次第によっては盛大に驚くかもしれないけど…。


「そう! それは生涯をかけてあずにゃんを可愛がっていくっていう私の決意表明なのです! ふんすっ!!」
「…あー、なるほどな…」


さすが唯だ。その言葉にはただ一つの偽りも曇りもなく、絶対の自信に満ち溢れていた。
生涯とはまた大きく出たものだと思わなくもないが、それはそれで唯らしいなとしみじみ思う。唯にここまで想われている梓も、もしかしたら同じ空の下で同じように感じているのかもしれない。


(いつか私にも…)


唯にとっての梓、梓にとっての唯のような人が現われるのかな。
なんて、ちょっと乙女チックことを思い描きながら、まだ見ぬ運命の人に想いを馳せた。


「澪ちゃん。幸せの青い鳥っていうのは実はすぐ近くにいるものなのよ」


そんな事をのたまいながらポンっと肩を叩いたドヤ顔全開の少女は誰か。それは今更言わなくても分かってもらえるだろう。たまにはシリアスさせてくれと声を大にして言いたいが、そんな常識が彼女に通用するはずもなかった。
私はただ、肩を竦めながらこう言う他なかった。


やれやれ――と。



つづく
[ 2011/04/03 12:58 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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