とある百合好きの駄文置場。二次創作SSやアニメ・漫画等の雑記中心。ゆいあずLOVE!

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唯梓SS 『love your life ~AZUSA~ 前編』

中野梓誕生日記念SS

※追記からどうぞ!


秋も深まる11月。その上旬のこと。
少し青かったイチョウの葉も黄色に変わり往き、季節の移り変わりを見事に感じさせていた。
紅葉も見頃を迎え、道行く道、目に飛び込んでくる全ての景色が、赤やオレンジ、黄色で埋め尽くされている。
茜色に染まる空が、それらの景色を黄金色へと変え、一種の芸術として私の目を保養していた。

秋の季節を存分に感じながらイイ気分に浸っていた私は、
何の前触れもなく突然吹いた、ぴゅ~っという冷たい風にぶるりと体を震わせる。


(寒いなぁ…)


肌に感じる寒さが、いやがおうにも私から感動を奪い去っていく。
今年は例年にも増して肌寒い気がした。
自称寒がり王の私が言うんだから、まず間違いない…と思う。
やっぱり上着着てくればよかったかなと思いつつ、溜息を一つ。



学校から自宅までの帰路をとぼとぼと歩く二つの影。
私と、もう一人。あずにゃんこと中野梓ちゃんだ。
あずにゃんはぴったりと寄り添うように、でも一定の間隔を保ちながら、私の横を歩いていた。
彼女が歩くたび、体を揺らすたび、その綺麗な黒髪のツインテールがぴょこぴょこ可愛らしく揺れている。

あずにゃんの横顔を見つめながら、黙々と世間話に身を投じる彼女の話に耳を傾けていた。


「――それでですね、今週の木曜日から再来週の土曜日まで、家に一人なんですよ私」


世間話に身を投じること数分、ふと聞き捨てなら無いセリフが耳に飛び込む。


「え? 木曜日って…」


つまりは11月11日である。
何の行事もイベントもなさそうな日ではあるが、確かその日は――。


「その日ってあずにゃんの誕生日だったよね?」


そう、それは忘れもしないあずにゃんの誕生日。
今日は11月8日の月曜日。だからあと3日。
あと3日でその日はやってくる。


「ええ、そうですよ」


自分の誕生日に対して特に何も思うこともないのか、淡々と返事を返すあずにゃん。


「あれ? そういえば私の誕生日って話したことありましたっけ?」
「え~と、確かあずにゃんが入部してすぐに聞いたよ。自己紹介で」


あずにゃんは突然立ち止まり、目を見開いて私を凝視した。
誰がどう見ても驚いているようにしか見えない。


「…よく覚えてますね、唯先輩…」
「ま、まあね」


そりゃ覚えてるよ、あずにゃんの事だもん…とは何となく恥ずかしくて言えなかった。

あずにゃんはやれやれって感じで、ハァっと溜息を付きつつ、


「その記憶力をもっと別の事に生かしてくださいよ。ギターとか。お願いですからコードの一つでも覚えてください」


呆れ顔でそんな事を言われてしまった。


「うっ…」


痛いところを突かれて言葉が詰まる。汗がたらりと頬を伝った。
確かにあずにゃんの言うとおりだった。
私はギターのコードを覚えても他の事に集中しだすと忘れることが度々ある。
一度に二度のことは出来ないのが私だった。あずにゃんの言うことも尤もだ。


(けど…)


―――あずにゃんの誕生日だって私にとっては大事なことだよ?

それは誕生日を覚えていたことが何よりの証拠。
そこのところあずにゃんは全然分かってない。分かってくれない。
言わないから分かるはずもないかもだけど、少しくらい私の気持ちを汲み取ってくれてもいいんじゃないかと。


「あずにゃん、誕生日一人なの?」


気になったから聞いてみた。遠まわしに聞いてもしょうがないので直球で。
するとあずにゃんは感情の篭っていない声で「ええまぁ」と返す。
どうしてそんなに冷めた態度なんだろうかと、少し疑問に思う。


「お父さんが急な出張とかで2週間ほど家を空けるんです。お母さんもお父さんが心配だからって、それに付き添うらしくて…」
「そうなんだ…」


なんて間が悪いんだろうと思った。
せめてあずにゃんの誕生日が終わってからでもいいじゃないか。
とは思ったけど、仕事なのだからどうしようもない。

その話を聞いた私は、自分でも気付かない内に悲しげな顔をしていたらしい。
そんな私に気付いて、あずにゃんはクスっと笑って見せ、


「大丈夫ですよ」


と、私を安心させるように優しい声でそう言った。


「仕事の出張とか、ジャズバンの公演とか、両親が家空けるの結構多いんですようち。それに誕生日だって、前の日にお祝いしてくれるそうなので全然平気です。だから気にしないでください」
「で、でも…2週間もおうちに一人なんだよね?」
「ええ」


正確には2週間と2日だった。


「寂しくないの?」
「別に、一人なのには慣れてますから」


嘘や冗談には聞こえなかった。本当に慣れてしまっている感じに聞こえる。
うちの両親も仕事や旅行で家を空けることが多いから、気持ちは分からなくもない。
私には憂がいるから寂しい気持ちもそこまでじゃないけど、でもあずにゃんは独りきりだ。


(…あずにゃんだって、最初は寂しかったはずだよね…?)


勝手な想像だけど、そう思わずにはいられない。私だったらきっと耐えられないと思う。
そして先ほどあずにゃんが言ったどおり、本当に慣れてしまったんだろう。
一人でいることに。独りでいることに。
人間って言うのは、良くも悪くも慣れてしまう生き物だから。
慣れなくていいことまで慣れてしまうから。
どうしようもない生き物だから。

環境がどうあれ、できる事ならそういった寂しさには慣れて欲しくない。
いつかあずにゃんの心が乾いてしまうんじゃないかって。
いつかどんな事に対しても寂しさや悲しさを感じてくれなくなるんじゃないかって。
そんな風に思えてならない。そう思えば思うほど、胸がキュッと締付けられるように痛んだ。


『一人なのには慣れてますから』


お願い…そんな悲しいこと、平然と言わないで。


「あ、あのさあずにゃん!」
「はい?」


図々しいとは思うけど、でもあずにゃんをこのままにしておけないと思った。
だから何気なく思い浮かんだ提案を吐き出すように言った。


「そ、その! お、親御さんがいない間は私のうちに泊まるっていうのはどうかな!」
「え?」
「そしたらあずにゃん一人じゃないし!」


私からの突然の提案。あずにゃんはくりっとした大きな目を限界まで見開いた。
素直に聞き入れるとは思えない。でも黙って見過ごすことも出来なかったから。


「……」


そして案の定、あずにゃんは首を縦に振ってはくれなかった。
驚いた顔も一瞬で、すぐに悲しそうに目を伏せて首を横に振った。


「ダメですよ。迷惑になっちゃいますから」
「め、迷惑だなんて!そんな事ないよ!あずにゃんならいつでも大歓迎だよ!」
「その気持ちは凄く嬉しいです。でも、ごめんなさい。やっぱり遠慮しておきます」
「ぁ…」


バッサリと切られて思わず小さく声を上げる。
もうダメだと思った。その心は揺るがない。この子はもう決めてしまってる。
これ以上は何を言っても、あずにゃんは了解してくれないと、そんな確信が私にはあった。
そう思えるだけの遠慮に満ちた瞳をしていたから。こうなったらもう梃子でも動かない。
その頑固さがあずにゃんの長所でもあり短所でもあって。
今回はその頑固さが短所に働いた、それだけのこと。


「そ、そっか…」
「えと…すみません、唯先輩…」


ペコリと、申し訳なさそうに謝る。


「き、気にしないでいいよ」


せめて私に対してだけは遠慮して欲しくないと思うけど。
ここまで完全に退路を絶たれてしまうと、私としてももう諦めるしかない。


(でも!)


たとえ諦めるしか道が無くても。
最後の悪あがきくらいしなきゃ諦めきれないのが私と言う人間だった。
落ち込むのはその後でもいい。成せばなる!頑張れ私!


「じゃあさ!あずにゃんの誕生日にパーティーするくらいならいいよね!みんなで集まってさ!」
「え、えと…」
「ダメなんて言わせないからね!これもう決定事項だから!」


フンスっ!と胸を張りながら言い切ってやると、あずにゃんはおかしくなったのかプっと吹き出した。
本当に楽しそうにクスクスと笑うあずにゃんを見ていたら、私まで嬉しい気持ちになってくる。
やっぱりあずにゃんは笑っていた方が可愛い。心の底からそう思う。
その笑顔をずっと見ていたいとさえ思った。


「分かりました。じゃあ誕生日楽しみにしてますね?」
「うん!」


軽音部のみんなと。それからさわちゃんに和ちゃん。憂と純ちゃんも呼んで。
みんなであずにゃんの家に押し掛けちゃおう。

そう心に決めて意気揚々だった。




    ◇




翌日――11月9日、火曜日。
朝のHR前に軽音部のみんなを机の周りに呼び集めた私は、早速あずにゃんの誕生日について相談した。
一応、あずにゃんが2週間以上、家に一人だってことは話さないでおいた。家庭の事情だし。
あずにゃんの断りも無しに話すのは何となく気が引けたから。
まぁ昨日の様子を見れば、特に隠す必要はなさそうだけど、それでもだ。
話すのは誕生日のことだけにした。


「で、どうかな? みんな予定とかある? 大丈夫かな?」


質問に質問を重ねて聞くと、みんな笑顔で首を縦に振った。
みんな乗り気のようで、大丈夫だと口々に賛成してくれた。


「はぁ…」


断られなくて良かったと、私は内心ホッとして溜息をつく。これで一安心。
これでみんなに何かしらの予定があったら、私とあずにゃん二人きりの誕生日になっちゃうところだった。


(…二人きり、か…)


ふとそれも悪くないかなーって思ったけど、すぐに思い直す。
やっぱり大勢の方が楽しいよねと、邪まな考えを振り払うべく頭をぶんぶんと振った。


「梓ちゃんの誕生日パーティーかぁ。楽しみね~♪」


ほわほわした笑顔を浮かべながらパンっと両手を合わせるムギちゃん。笑顔がとても眩しい。
「プレゼントは何にしようかしら?」と、ブツブツ呟きながら目をきらきらと輝かせている。
たとえ大切な用事があっても、あずにゃんの誕生日を優先しそうな勢いが感じ取れる。


(さすがムギちゃん…)


ふと去年のクリスマスに商店街の福引でムギちゃんがハワイ旅行を当てたことを思い出した。
あの時はハワイ旅行よりも人生ゲームを選んだムギちゃん。
何だか今回もありそうで恐い。


「でも明後日か…今からプレゼント用意できるかな?」


澪ちゃんが難しそうな顔でそう言った。
顎に手を添えながら、「うーん…」と、何かいい方法がないかと考えている。
確かに急な話なので誕生日プレゼントなんて用意していないのは言うまでもない。
用意するなら今日か、明日のうちに何とかしなくちゃいけなかった。
もともとプレゼントをあげるつもりだった私だって、まだ用意していないし。

そんな時、りっちゃんから一つ提案があがった。


「今日部活休みにして買いに行けばいいんじゃないか?」


いい事言いましたって感じで、得意げな顔でオデコをぺカーっと光らせた。
テカテカして眩しかった。いつにも増してテカってる。太陽拳みたいだ。

まぁそれはそれとして、その提案には私も賛成だった。


「りっちゃん頭いい~」
「へへ!まぁな~」


いい案を提供してくれたりっちゃんに、心ばかりのお礼にと、大いに褒めてあげる。


「さすがりっちゃん!天才だね!よっ、天才ドラマー!」
「よ、よせやい!」


褒め言葉に、りっちゃんは照れくさそうにもじもじと体をうねらせた。
そのカブトムシの幼虫みたいな動きが少し…いや思いっきり気持ち悪くて。
一瞬「きもいよりっちゃんっ!」と口を告いで出そうになったけど、すんでのところで飲み込むことに成功。

機嫌を損ねるのもアレなので黙っておこうと思った。
私もこの1年半で、少しは空気を読むってことを覚えたのだよ。
口は災いの元。いい言葉だよね。


「お前はただ部活サボりたいだけだろ!」

ポカっ!

「いってー!なにすんだよみおー!?」


鼻高々なりっちゃんの幼虫ダンスを止めてくれたのは澪ちゃんの鉄拳制裁だった。
りっちゃんの考えはお見通しだと言わんばかりに、澪ちゃんの容赦ない一撃が炸裂する。
ぷくーっと大きなタンコブが膨れ上がる。すごく痛そう。


「でもまぁ、律の言うとおりその方法しかないか…」
「あれ? 賛成ならどうして私叩かれたの?」


田井中律、不憫なり。


「き、気にするな」
「気にするよ!これじゃ殴られ損じゃねーか!このタンコブどうしてくれる!?」


「びえ~ん! 澪のアホー!」と泣き叫びながらタンコブを撫でさする。
さすがの澪ちゃんも「うっ」とバツの悪そうな顔をした。
何だかりっちゃんが可愛そうになってきたので、仕方ないから私が頭を撫でてあげる。


「よしよしりっちゃん、泣かない泣かない」
「うぅ…ぐすっ…みおのおにー、あくまー…」
「わ、悪かったよ。ご、ごめん律…」


素直に謝る澪ちゃん。何だかんだ言って、自分も悪いと分かっているのです。
澪ちゃんって、りっちゃん相手だと口よりまず先に手が出ちゃうもんね。仕方ないよ。

でもそもそもの原因はりっちゃんにあると私は思います。何故かって?
だって澪ちゃんをそう言う体質にしたのは間違いなくりっちゃんだろうからね。
ふと自業自得という言葉が思い浮かんだ。


(ご愁傷様…りっちゃん)


きっとこれから先も、何かある度に澪ちゃんの鉄拳が炸裂するんだろうなと。
そう思わずにはいられない肌寒さ感じる朝だった。



とにもかくにも、大体の事は決定した。
あずにゃんの誕生日プレゼントについては本日の部活を無しにしておのおの準備すること。
その際、あずにゃんに部活中止の連絡を入れることを忘れずに。これ絶対。
忘れて一人部室で待たせるわけにはいかないもんね。

それにしても急遽決定した割にはだいぶあずにゃんの誕生日パーティーが形になりそうで安心した。
やっぱり持つべきものは友達、仲間ということなんだろうか。


「和ちゃんとさわちゃんには後で伝えて…純ちゃんは憂に頼んだし…」


憂には純ちゃんの事だけじゃなく、ケーキやら料理なんかの用意も頼んである。
昨晩あずにゃんの誕生日の事を話したら、憂が望んで「やりたい!」と言ってきたのだ。
友達思いの妹を私は誇りに思います。


(あとは…)


懸念すべきことはもう無いと思われた。しかしやっぱり気がかりは残る。
それはあずにゃんが2週間以上も独りで過ごすということ。
こればっかりはもうどうにもならないと半ば諦めているが、それでもやっぱり、放っておけない気持ちの方が大きい。
1日、2日ならまだいいが、2週間以上ともなると、私も心配で不安で仕方なかった。
それにやっぱり、独りでいることに慣れて欲しくないという気持ちが大きかったから。

うーん…と何かいい方法はないかと考えていると、


「どうかしたの唯ちゃん?」
「ぬっふぇ!?」


突然背後からムギちゃんに声を掛けられて驚く。
驚きのあまり、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
残念ながら私の頭の上にはお花畑は乗ってない。


「む、ムギちゃん…お、驚いたよ」
「ご、ごめんなさい。何だか難しい顔してたから気になって」
「そ、そっか…」


どうやら相当難しい顔をしていたみたい。指摘されるまで全然気付かなかった。


「ジー……」


そんな擬音が聞こえてきそうなくらい、稀に見る真剣な瞳で見つめてくるムギちゃん。
ていうか本当にジーって言ってた。ムギちゃん恐るべし。


「な、なに?ムギちゃん」


決して私から目を逸らさないで、ジーっと見つめる。
まるで心の中に探りを入れているような、そんな視線を向けてくる。
私は何となく気まずくなって、パッと、思わず目を逸らしてしまった。
これ以上ムギちゃんの目を見ていたら、心の中を丸ごとサルベージされてしまいそうな気がしたから。

しかしもう大丈夫と思ったのも束の間、すぐに思い知ることになる。
ムギちゃんはやっぱり凄い子なのだということを――。


「ねぇ唯ちゃん」
「な、何かな?」
「唯ちゃん何か悩んでるでしょう? それも梓ちゃんのことで」
「っ!? な、なんで――!」


分かったの――!!

と聞こうとしたが、すんでのところで飲み込んだ。
ムギちゃんだからという理由だけで妙に納得している自分がいた。
しかも悩みがあることだけじゃなく、それがあずにゃんの事だということまでバレてしまうなんて。
流石としか言いようがない。

きっとこれからもムギちゃんの前では隠し事は出来ないんだろうな。
なんて、そんな確信めいたことを感じた。

だからってわけじゃないけど、私はムギちゃんにあずにゃんの事を相談することにした。
自分ではどうすることも出来ないもどかしさ。モヤモヤして胸が押し潰されそうだったから。


「……ムギちゃん」
「なぁに?」


ムギちゃんならいいアドバイスをくれるんじゃないかって、そう思った。
それに悩みがあるなら相談して欲しいと、ムギちゃんならきっとそう言うはずだから。
というより目がそう言っていた。

相談して欲しいと――。


「相談があるんだけど、いいかな?」
「……」


それはムギちゃんに限らず、澪ちゃんやりっちゃんもきっと同じなんだろうね。
友達が悩んでいたら相談に乗ってあげたいと思うのだろう。
立場が逆転すれば、私だってそうしたいと思うはずだから。

ムギちゃんは何も言わず、コクンと頷いてくれた。


「あのね…」


胸に手を当てて、一呼吸置いてから、ポツポツと話し始める。
昨日の帰り道、あずにゃんとの会話や出来事を思い出しながら、身振り手振りで事細かに説明した。
ムギちゃんは真剣な表情で私の言葉に耳を傾けてくれた。

それからほどなくして…。


「――と、言うわけなの」


話す事はそこまで多いわけじゃないから、時間にして一分ほどで説明は終わった。
ムギちゃんは一瞬考える素振りを見せたが、すぐにフっと笑みを零した。
優しさに溢れていて神々しい、そんな女神のような微笑み。


(やっぱりムギちゃんって綺麗だなぁ…)


少しの間、その笑顔に見惚れてしまった。


「唯ちゃんは本当に優しい子ね」
「えっ…そ、そんな事ないよ!」
「そんな事あるわよ。梓ちゃんも幸せね、唯ちゃんにこれだけ想って貰えて」
「お、想うだなんてそんな…」


何故か言い知れぬ恥ずかしさを覚えた。私は思わず顔を俯かせる。
頬に両手を当ててみると、熱く火照っているのが嫌でも分かる。
胸はドキドキと高鳴っていた。


「うふふ♪ 少し妬けちゃうわね」
「も、もう!ムギちゃん!」


からかわれていることに気付いて、さすがの私も黙っていられず声を荒げる。
ぷーっと頬を膨らませて「私怒ってます!」って表情を作ってみる。
でもムギちゃんは意に介した様子もなく、ただクスクスと楽しそうに笑うだけ。
私はただただ、頬を膨らませるだけ膨らませて「うー」と唸ってた。

笑い疲れたムギちゃんは、すぅ~はぁ~と一度深呼吸。


「それで、唯ちゃんは梓ちゃんを独りにしたくないのよね?」
「う、うん…でもあずにゃんには断られちゃったし…」
「一つだけいい方法があるわよ。梓ちゃんでも絶対に断れない方法が」
「え!ほ、ホント!?」
「まぁちょっと強引だけどね」


そう言って自信満々にウインクを一つ。

ムギちゃんがそう言い切るからにはそれはきっと本当にいい方法なのだろう。
あの頑固者のあずにゃんを納得させるだけの方法がある。
絶対に断れない方法が、確かに存在するのだ。

それが分かっただけでも相談した甲斐がある。相談して正解だった。
やっぱりムギちゃんは凄い子なのだと、改めて思い知った。


「唯ちゃん、耳かして?」
「う、うん」


ムギちゃんがちょいちょいと、そっと手招きしたので傍による。


「その方法はね――」


内心ドキドキしながら、聞き漏らさないように、耳をすます。
そしてムギちゃんは言った。耳元で囁くように、そっと。

そのたった一つの冴えたやり方を――。




―後編へ続く―
[ 2010/11/11 00:00 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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