※追記からどうぞ!
二人が結ばれてから5回目の春が来ました・・・。
春――
それは出会いと別れ、そして終わりと始まりの季節。
そんな季節の中、今一つの物語が終わり、始まろうとしていた。
「似合ってるわよ、唯ちゃん」
「えへへ・・・そっかなぁ」
純白のウエディングドレスに身を包んだ唯ちゃん。
高校の頃から変わらない、愛らしい笑顔を見せながらはにかんでいる。
「ええ・・・ホントに綺麗よ」
「ムギちゃん、それ褒めすぎだよぉ~」
5年たっても唯ちゃんはあまり変わっていない。
いや変わったかな・・・昔から可愛らしい子だったけど、今の唯ちゃんは可愛さの中にも美しさがある。
もう立派な大人の女性ですね。
「ふふ♪・・・それにしてもいよいよね・・・唯ちゃん」
「うん♪」
まだ説明していませんでしたね。
なぜ唯ちゃんがウエディングドレスに身を包んでいるのか。
・・・けどそんな事は言わなくてもわかりますよね?
――そう、今日は唯ちゃんの結婚式なんです。もちろん相手は梓ちゃんですよ?
まあと言っても正式な結婚式ってわけじゃないんです。
身内とか、二人を祝ってくれる人達が集まっての、大規模なホームパーティーみたいなものなんです。
さすがに正式な結婚式をする事は出来ませんでした。
未だに日本では同姓婚は認められていませんからね。
・・・ホントに嘆かわしい事です。こうなったら私が日本のトップになって法律を(ry
おっと、話がそれましたね。
けどホームパーティーと言っても、琴吹家が全面的にバックアップしたものです。
かなり大規模な――もしかすると正式な結婚式よりもお金が掛かったかもしれません。
「それにしても・・・ホントによかったのかなムギちゃん、何から何まで用意してもらっちゃって・・・」
「いいのよ、そんな事気にしなくっても。これは私達から二人へのプレゼントだと思ってくれればいいから・・・」
「・・・ムギちゃん・・・うん、ホントにありがとね?」
「ええ♪」
ホントに気にする必要なんてないんですよ唯ちゃん?
二人にはどうしても結婚式を挙げてもらいたかったから。
・・・まあ半分は私の我侭も入ってるんですけどね。
唯ちゃんとの雑談に花を咲かせていると、コンコンと言うノックの後に控え室の扉が開かれた。
「あら?・・・唯ちゃんもう準備終わったの?」
中にに入って来たのは山中さわ子先生だった。
この人はあの頃から本当に変わっていません。
けど先生には今でもお世話になってるんです。
もちろん私達「放課後ティータイム」の“顧問”として。
「あら綺麗じゃない唯ちゃん!」
「も、もう・・・みんな綺麗綺麗言いすぎだよぉ」
さわ子先生の言葉に顔を真っ赤にして照れる唯ちゃん。
こんな可愛い唯ちゃんを見たら梓ちゃんに食べられちゃいますね、きっと。
「それにしても・・・二人もついに結婚かぁ・・・もう!私よりも早く結婚するなんてひどいじゃない!」
涙目になって抗議してくる先生に、私達はあははっと苦笑する。
さわ子先生・・・実は今年で三十路n(ry
「ムギちゃん?今なんか失礼な事考えなかった?」
「い、いえ・・・」
こ、心を読まれた!
「まあいいわ。私より先に結婚するからには絶対に幸せにならなきゃ許さないからね!」
「はいっ!」
唯ちゃんはニッコリと微笑み、元気よく返事をする。
ふふ・・・なんだかんだ言っても、先生も嬉しいんですよね?
・・・分かりますよ、先生の笑顔を見ていれば。
「そういえば先生、梓ちゃんの方も準備出来たんですか?」
先生は澪ちゃんとりっちゃんと一緒に梓ちゃんの方の準備を手伝っていたはず。
それが今ここに居ると言うことは・・・。
「ええ。梓ちゃんの準備は終わったわよ・・・そろそろこっちに来るんじゃないかしら」
そう言い終わった瞬間、また控え室の扉が開かれた。
「お~す、唯~準備できたか~」
「お、ちゃんと終わってるみたいだな・・・綺麗だぞ唯」
そう言って入ってきたのはりっちゃんと澪ちゃん。
「えへへ、ありがと・・・澪ちゃん」
「おお~ホントに綺麗だな・・・こりゃ私達も負けてらんないな!澪!」
「な、なにがだよ・・・」
「そりゃもちろん、私達のけっこn・・・あだっ!」
りっちゃんが言い終わる前にゴンっとゲンコツを食らわせる澪ちゃん。
「な、何恥ずかしい事言ってんだよ!このバカ律!」
ふふ・・・そんな事言いながら満更でもない顔してますよ?澪ちゃん?
この二人も相変わらずで、高校の頃から全然変わってない。
やっぱりいいですね幼馴染って。
「照れんなよ~みおちゅわ~ん」
「て、照れてない!」
「あはは・・・あ、そうだ、あずにゃんは?」
二人の様子に苦笑を漏らしていた唯ちゃんだったけど、思い出したように梓ちゃんの事を尋ねる。
「ん?・・・ああ、梓なら扉の前で頭抱えて唸ってるぜ」
「え?・・・ど、どうして?」
りっちゃんの言葉に唯ちゃんはちょっと心配そうな顔をしている。
けど・・・
「はは・・・自分の格好を見せるのが恥ずかしいんだって・・・けど唯のドレス姿も見たいな~って・・・そんな感じで悩みまくってるぞ」
そう言って苦笑する澪ちゃん。
「そ、そうなの?」
「そうなんだよ、めちゃくちゃ似合ってるのになぁ・・・すごいんだぜ梓のやつ。唯も見たらビックリするぞ!」
「わぁ♪・・・見たい見たい!」
ビックリするほど似合ってるというりっちゃんに言葉に唯ちゃんは目を輝かせて扉の方に向かう。
そして・・・
「あずにゃんっ!・・・って・・・・・・・・ぁ・・・」
勢いよく扉を開け放ち、扉の先にいるであろう梓ちゃんの名を叫ぶと、何故か放心状態の唯ちゃん。
一体何が――と、思ったけど・・・扉の先で立っている梓ちゃんの姿を見てその疑問も解けた。
「綺麗・・・」
それは誰の言葉だったのか・・・私?それとも唯ちゃん?
けどその言葉通り、今目の前にいる梓ちゃんは本当に綺麗で可愛くて・・・誰が言ったかなんて小さな問題だった。
梓ちゃんは唯ちゃんとは違うドレスだった。
桃色のウエディングドレスで、いつもツインテールにしていた髪をアップにしている。
さらに化粧をしているせいかいつもの梓ちゃんには到底見えなかった。
梓ちゃんって普段からお手入れ以外、化粧はしませんからね。
「ぁ・・・・・・あ、あずにゃん?」
目の前に立っているのが梓ちゃんだと信じられなかったのか、唯ちゃんはその存在を確かめる。
「は、はい・・・」
「ぅ・・・あ、あの・・・えと・・・すごく似合ってるよ・・・綺麗だよあずにゃん・・・」
唯ちゃんのその言葉に、顔を赤くする梓ちゃん。
「ゆ、唯先輩だって・・・その・・・すごく綺麗ですよ」
「あ・・・ありがと・・・」
梓ちゃんのお返しの言葉に唯ちゃんの方も顔を真っ赤にさせている。
うーん、何でしょうね・・・この初々しい付き合いたてのカップルみたいな反応は。
けどこれこそが理想的なカップルの姿なんでしょうね。初心、忘れるべからず・・・ですよ。
「ほらほら、いつまでいちゃいちゃしてんだ。そろそろ始まるんだからしっかりしろよ?・・・和や憂ちゃんも、もう会場にいってるぞ」
いつまでもお互いを見てポーっとしてしまっている二人に痺れを切らしたのか澪ちゃんが急かす。
「あ!・・・う、うんっ」
「は、はい・・・」
「ふふ♪・・・さて・・・それじゃあ、そろそろ行きましょうか?」
私のその言葉にみんな頷き、全員で部屋を後にした・・・。
――式場――
二人の式には本当に沢山の人達が集まってくれた。
和ちゃんや憂ちゃんはもちろんの事、二人の両親に高校時代のクラスメイト達、他にも沢山。
私としては、まさかこんなに集まってくれるとは思っていませんでした。
それだけこの二人が愛されているって事なんでしょうね。
なぜでしょう・・・自分の事ではないのに自分の事の様に嬉しく思います。
でもきっとそれは、二人が私にとって、もう家族と同じくらい大切な存在だからなんだと思います。
二人はもちろん、りっちゃんに澪ちゃん、さわ子先生も・・・。
「放課後ティータイム」は、もう一つの家族と言っていいかもしれない。
「病めるときも健やかなるときも、共に歩み、死が二人を分かつまで、お互いを慈しみ愛し続ける事を誓いますか?」
私は二人に問いかける。
ふふ・・・もう分かった人もいるでしょう。
実は私が神父役を勤めているんですよ。
「「はい!誓います!」」
元気一杯に誓う二人に私は優しく微笑む。
「それでは誓いのキスを・・・」
指輪を交換した後、私がその言葉を口にすると、二人はお互いの顔に掛かっていたヴェールを持ち上げる。
そして頬を朱に染め、一瞬微笑み合ってからゆっくりと顔を近づけて唇を重ねる。
「「・・・ん・・・」」
今この瞬間・・・二人の誓いは一生のものとなったのです。
誓いのキスが終わり見つめ合う二人の頬には一筋の涙が零れていた。
けどそれは嬉し涙で、誰が見てもそれは明らかだった。
性別という名の壁を乗り越え、共に人生を歩んでいこうとする二人。
5年の時を経て想いを実らせ、大勢の人達から祝福され幸せに包まれていた。
ふふ、お幸せにね、二人とも♪
こうして一つの物語が終わりを告げたのです。
そして――
***
**
*
「――新しい物語が始まっていくのでした・・・めでたしめでたし♪」
「「「「・・・・・・」」」」
「――と、今朝はこんな夢を見たの・・・どう?すごくリアルだったでしょ♪」
「あ、あの・・・ムギ先輩?」
話終わった私におずおずと問いかけてくる梓ちゃん。
「ん?どうしたの?」
「ず、随分とスペクタクルでしたね・・・」
「そうなのよ、私も朝起きたらビックリしちゃった。式場に居た筈なのに自室のベッドで寝てたんだから」
ホントに驚いたんですよ?それくらいリアルな夢だったんです。
「で、でも・・・私とあずにゃんが結婚って・・・」
そんな事を言いながらも顔を真っ赤にさせて俯く唯ちゃんはとても嬉しそうだった。
・・・きっと想像しちゃったのね?
「あはは♪・・・けどさぁ~、いつかホントにしちまったりしてな!」
「な、何言ってんですか!律先輩!
・・・ま、まあでも・・・いつか出来たらいいなぁ~とは思ってますけど・・・」
「あ、あずにゃん・・・」
りっちゃんの言葉に反応する梓ちゃん。けど最後の方、小声で言ってますけどダダ漏れですよ?
唯ちゃんも梓ちゃんの呟きに顔を真っ赤にしている。
「ふふ♪・・・唯も乗り気みたいだぞ、梓?」
澪ちゃんが楽しそうに梓ちゃんをからかう。
「も、もう・・・澪先輩まで!」
「はは、悪い悪い」
今日も今日とて、いつもと変わらない放課後ティータイム・・・。
けど――そう遠くない未来、本当にあの夢のような日が来るんじゃないかって、半ば本気で思ってる。
私はそう信じてるから・・・。
「あ!・・・とりあえずその時は私に相談して?琴吹家はいつでも全力でバックアップするから♪」
「「ムギちゃん(先輩)!」」
あらあら・・・二人とも真っ赤っか♪
おわり♪
次回!真・琴吹夢想に――
つづきません♪ byムギ
【あとがき】
最後まで読んでいただきありがとうございます!
さて新EPでしたがどうだったでしょうか?
それにしても最初から夢オチと気付いた方はどれ位いるでしょう?
なんか自分の書くSSって夢オチが多いなぁ・・・。
でもまあ気にしない事にします。^^
ちなみにタイトルは・・・まあ言わなくてもわかますか?
ていうかこれしか思い浮かばなかったorz
コメント等いただけると嬉しいです!
では!
と理解しました^^