とある百合好きの駄文置場。二次創作SSやアニメ・漫画等の雑記中心。ゆいあずLOVE!

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ゆいあず!!シリーズSS EP02 『桜華狂咲 #1 ~人はそれを嵐の前の静けさと言う~』

追記からどうぞ!



こんなはずじゃ…なかったのに…。


目の前の光景を愕然と見つめながら、唇をギュッと噛み締めた。
自身の耳に響くギリギリという歯軋りの音が耳に煩かった。


どうしてこうなったの? 誰に文句を言えばいいの?


それは誰に対してでもない、意味のない問いかけ。
なぜならその答えの回答は、すべて私に跳ね返ってくるのだから。
そう、これは全部私のせいだ。この結果を招いたのは全部私の――。

だがいくら後悔したってもう遅い。後悔先にたたずとはよく言ったもの。
一度動き出した歯車を止めることなんて誰にも出来るはずがないのだから。


あ、れ…?


ふとした瞬間、体に異変が起こった。
それを感じた途端、ポタポタ…と、何か液体のようなものが滴る音が私の耳に響く。
気になって恐る恐る下を見てみると、地面に不可解な水溜りが出来ていた。


何、これ…?


そう思った次の瞬間、立ちくらみがしてふらっと体がよろめく。
気を強く持って何とか倒れずにはすんだが、体に力が入らない。
力を入れた先から抜けていくような感覚だった。

不可解な水溜りを作っていたその液体の正体。
それは、つまり――。


は…はは…そっか…これ、私の――。


半ば人事のように、私はその液体が滴り落ちるさまを見つめていた。
重力に逆らわず地面へと落下するそれ見つめながら、「クク…」と思わず苦笑する。

そう、それは血。人体の血液。
燃えるように赤く。どこまでも純粋で。
そして私たち人間にとっての生命ともいえるもの。

血の池地獄のような、おびただしい量の血液が私の足元を彩っている。
まるで本当に地獄に来てしまったかのような錯覚を覚え、途端に体がブルブルと震えだす。
今この瞬間、私の心を支配していたのは恐怖だけだった。

この私が。この私が恐怖を覚えている。まさか…そんな…。
ありえない。こんなことあるはずがない。あっていいわけがない。
そう心に言い聞かせても、迫り来る恐怖からは逃れられない。


うぅ…


突如、急激な立ちくらみに襲われ視界がぶれた。
目の奥がチカチカして、目に写るもの全てがぼやけて見える。
ああ、これは本格的にやばくなってきたなと、私は確信する。
そんな私に追い討ちをかけるかのように、膝がかくかくと笑いだした。まるで私をあざ笑っているかのように。
立っているのもやっとだった。少しでも気を抜いたら私の意識は確実に落ち、二度と――。


なんでっ…どうして、こんな事になっちゃったの…私はただ――


意識が朦朧としていく中、私はただひたすら自分の行動の愚かさを呪っていた――











4月も中旬から下旬に差し迫り、満開に咲き誇っていた桜もだんだんと散り始めていたそんな頃。
私たち桜高軽音部は、特に大きな事件や出来事を迎えることなく、平穏無事な毎日を送っていた。
世はすべてこともなし。平和なのはとてもいいことですが…それでも。
少しくらい刺激的なことが起こってもいいんじゃないかと思うのは、さすがに贅沢なのでしょうか。
最近、鼻血を噴くような場面に遭遇していないからか、少し気分が落ち込み気味だった。

そんな私の名前は琴吹紬。桜ヶ丘高校3年。17歳。
軽音部に悠然と咲く一輪の花、百合の伝道師とは私のことです。
もちろん知っているとは思いますが、知らない方は以後お見知りおきを。


私は今、放課後の音楽室でいつもどおりティータイムの準備に勤しんでいた。
放課後ティータイムの名のもとに、私たちの部活はまず、一杯のお茶から始まります。
それはこの2年という長い年月の間、延々と繰り返されてきた日常なのです。
そのティータイムも、進級と同時に3年目に突入しています。


ティーポットを片手に紅茶をカップに注いでいくと、途端に甘い香りが鼻腔をくすぐった。
私はフっと笑みを浮かべ、その香りを楽しみながら給仕の作業を続けていく。

ふと、私を見つめる優しい視線を感じた。

何だろう…?
そう思って、チラッと視線のする方に目を向けると、とても見慣れた顔がそこにはあった。
それは軽音部一のおっぱいを誇る恥ずかしがり屋のベーシスト、秋山澪ちゃんのそれだった。


「どうかした? 澪ちゃん」


声をかけると、澪ちゃんはフルフルと首を横に振った。


「ううん、別に何でもないよ。ただ見てるだけ」
「そっか」
「ダメだった?」
「ううん、そうじゃないの。ただ私なんか見てても退屈じゃないかなって」
「そんなことないよ」


澪ちゃんは頬杖をつき、私の作業を穏やかな笑顔で見守っていた。
じっと見られているのも緊張しちゃうけど、澪ちゃんがそれで満足ならそれでいいと思った。
私は温かい眼差しをその身に感じながら、澪ちゃんのカップに紅茶を入れる。


「はい、どうぞ澪ちゃん」
「ん」


入れ終わってカップを差し出すと、澪ちゃんは「ありがとう」と笑顔で言ってカップを手に取った。
それからカップに口をつけ紅茶を一口だけ口に含むと、ふっと笑みを漏らす。


「うん。今日もムギの入れたお茶は最高だな。とってもおいしいよ」
「うふふ、ありがとう澪ちゃん♪」


お礼を言うと、澪ちゃんはニッコリと笑って、またカップに口を付け紅茶を飲み始める。
その様子を見つめながら、私は胸にそっと手を置いた。トクントクンと優しい鼓動が手のひらに伝わる。
胸の奥から溢れてくるそれは、喜びという名の幸福。

それはいつも感じていることだった。
「おいしい」と、その一言を聞けるだけで私は言いようのない幸福感に包まれる。
そう言ってもらえるのが、私にとって何よりも嬉しくて、幸せなことだったから。
出来ることなら、これから先もずっとみんなのためにお茶を入れたい。
みんなの笑顔をこれから先もずっと――。

私は小さな幸せに浸りながらそんなことを考える。

その時だった。


「ねーあずにゃん、トンちゃんってホントに可愛いねぇー」
「そうですね」


ふと、そんな会話が耳に届く。その会話の発生源は部室の隅っこからだった。
隅っこと言ってもテーブルからそこまで離れていないので、すぐ隣から声がしたというほうが正しい。
その声の主は、何を隠そう我ら軽音部に咲く2輪の百合こと、ゆいあずの二人だった。
ゆい×あずさ。略してゆいあずです。
唯ちゃんは梓ちゃんの嫁。梓ちゃんは唯ちゃんの嫁。それが自然の摂理。宇宙の鉄則。
この二人については今更説明なんて必要ないと思いますから何も言いません。
きっと「ゆいあず」ってだけで世界に通用する気がしますから。

とりあえず私は気持ちを切り替えて、二人を横目でチラッと見ながらその会話に聞き耳を立てる。
恋人達の甘い時間を邪魔しちゃ悪いですからね。
私はただ、草葉の陰から二人の乳繰り合いを眺めているだけで幸せなので。
よく考えたら、これも私にとって幸せを感じられることの一つでした。


「う~ん、トンちゃんの可愛さはあずにゃんに匹敵するね! この可愛さは罪だよ罪!」
「…私はトンちゃんと同じってことですか?…なんか複雑な気分です…」
「ふふ、なーんちゃって♪ トンちゃんには悪いけど、あずにゃんより可愛いものなんてこの世に存在しないよ!」
「あぅ…もう、唯のバカ」
「えへへ…」


思わず「二人はゆいあずマックスハート!!」と叫びたくなるが、すんでのところで飲み込んだ。
何の前触れもなくそんな奇天烈な事を叫んだ日には、間違いなく私はHENZINの烙印を押されてしまうでしょう。
私だってまだ人としての常識は失いたくない。すでに失っていると言われればそれまでですが。


部室の隅っこはすでに二人の桃色空間で閉鎖されていた。
なんぴとたりともその間に割って入ることは出来ないだろう。
ポワポワとハートマークがあちらこちらに飛び散っている。
そんな二人に囲まれているトンちゃんが胸焼けでも起こしてしまうんじゃないかと心配になります。
私なんてすでに鼻から鮮血、目から沢庵です。


(うふふ…この二人は相変わらずニヤニヤさせてくれますね…)


ニヤニヤしすぎて顔が歪みそうになったその時、ふと唯ちゃんに動きがあった。
唯ちゃんは目の前の水槽に張り付いてトンちゃんを愛でていましたが
ふいに、餌の入った箱に手を伸ばすと中から餌を取り出しました。
どうやら餌をあげるみたいです。


「ほ~らトンちゃ~ん、餌の時間ですよー。たんと食べて大きくおなり~」
「あっ、だ、ダメですよ唯先輩! そんなにいっぱい餌入れちゃ!」


しかし、その行動を黙ってみていないのが唯ちゃんの嫁こと梓ちゃん。
梓ちゃんは持ち前のツインテールをクワガタの角みたいに逆立てながら、今まさに餌を投入しようとしている唯ちゃんを制した。
その台詞から察するに、唯ちゃんが与えようとしている餌の量に問題があったみたい。


「えーいっぱいかなぁ。そんなことないと思うけど…」
「指で一掴みならまだしも…手掴みで一握りは明らかに多いです…」


その言葉を聞いてさすがの私もギョッとして、嫌な汗が頬を伝いました。
確かに、それは多すぎです。手掴みとかどんだけですか唯ちゃん。
その量の餌を水槽に入れていたらと思うと背筋がゾッとしますね。
もし梓ちゃんが止めていなかったら、トンちゃんの見上げた先は餌と言う名の天井で覆い尽くされていたことでしょう。
ナイスです梓ちゃん。


「ぶー、いっぱい食べた方がおっきくなるよー?」


それでもこんな風に言える唯ちゃんは、さすが天然オブ天然です。
天然クイーンの名はやはり伊達ではありません。もはや手の施しようがないです。
まあ、そこが唯ちゃんの可愛いところではあるんですが。


「いっぱいって言っても限度があるでしょ? そんなに食べたら大きくなる以前にお腹壊します! ぶくぶく太って豚になっちゃったらどうするんですか!」
「ぶひぶひ~」


梓ちゃんは頬を膨らませながらプンプン怒っているが、唯ちゃんは意に介さず、すかさず豚の真似で応戦します。
当然、そのふざけた態度に梓ちゃんの怒りのボルテージはさらに上がっていくわけですが。


「真面目に聞いてください! 今日のエッチなしにしますよ!」
「ごめんなさい!」


梓ちゃんのその一言に、間髪入れずに頭を下げて謝る唯ちゃん。
いっそすがすがしいくらいの謝罪だった。


「素直でよろしい。これに懲りたら少しは常識ってものを知ってくださいね」
「了解であります、あずにゃん軍曹!」


あれ…? ていうか何か今、さらっととんでもないセリフが当たり前のように発せられた気がしましたが…。


(あはは…さすがに気のせいですよね?)


気のせいであって欲しいと願わずにはいられません。
だって、今日ICレコーダー家に忘れてきたんだもの!
確かめようがないじゃないですか!

半ば諦めかけていた私だったけど、それでも少しの好奇心は捨てきれなくて
とりあえず澪ちゃんにそれとなく聞いてみることにした。
すぐそばにいる澪ちゃんにだって、二人の会話は届いているはずですから。

私は澪ちゃんの耳元に口を寄せて、ボソボソと耳打ちする。


「ね、ねぇ澪ちゃん? 今の二人の話聞いた? 何かとんでもないこと言わなかったかしら?」
「私は何も聞いてないよ。うん、私は何も聞いてない」
「え…で、でも…」
「あはは。ムギったら幻聴でも聞いたんじゃないかぁ?」
「…」


私の問いに、澪ちゃんは物凄くいい笑顔でそう返してくる。
その笑顔には菩薩の如く後光すら差し込んでいた。
いったい澪ちゃんに何があったというんだろう。

澪ちゃんのその様子から、やっぱり聞いていたんじゃ…と、もうちょっと追求したかったけど…でも。
これ以上澪ちゃんを困らせるのも悪いかなと思ったから、それ以上何も聞かなかった。
悪いのは全部私。ICレコーダーを忘れてきた私の責任ですから。

……。

話を戻しますが、先ほどの唯ちゃんと梓ちゃんの会話でも分かるとおり、
たとえ唯ちゃんが手の施しようのない天然でも、梓ちゃんが常に傍にいれば何ら問題ありません。
ゆいあずのバランスは世界のバランスと言っても過言ではなく、二人がラブラブなら世界も安泰だということです。
ゆいあず万歳!!ゆいあずマンセー!!

それと言い忘れていたことが一つ。ていうか本当は最初に説明するべきだったんですが。
それは先でも話に上がった“トンちゃん”という存在についてです。
トンちゃんの事を知るにはアニメ2期の第2話を見れば一番手っ取り早いけど、一応説明しておきます。
トンちゃんとは数日前、私たち軽音部に仲間入りした新入部員のことです。

新入部員といっても、残念ながら人間ではありませんよ?

さすがに人間が水槽でふよふよ浮いているはずがありませんから……浮いてたら逆に怖いです。
ホラーですよホラー。そのうち「多分私は三人目だと思うから…」とか言い出しちゃうに決まってます。
澪ちゃんが見たら間違いなく気絶モノ。もしかしたら泡噴いて倒れちゃうかも。

では人間でなければなんなのか。
単刀直入に言うと、トンちゃんというのはスッポンモドキのことです。平たく言えば亀ですね。
豚のような鼻をしているから、豚(トン)というわけです。唯ちゃんが命名したんですよ。
なかなかのネーミングセンスですよね。

スッポンモドキが新入部員。それはひとえに、人間の新入部員が入らなかったからという理由に他なりません。
残念ながら、先の新歓ライブでは思うような成果をあげることができず、部員を確保することができませんでしたから。
さすがにそれじゃあ梓ちゃんがかわいそうだと思い、さわ子先生にお願いしてトンちゃんを買ってもらったというわけです。

トンちゃんと初対面したときの梓ちゃんは何事かと唖然としていたけど、それが唯ちゃんの気遣いだと知ってすぐに顔を綻ばせました。
それからは自分が率先してトンちゃんの面倒を見ようと、亀の飼い方などの本を見て常に研究しているみたいです。
梓ちゃんたら、唯ちゃんが絡むと途端に本気になりますからね。
ニヤニヤが止まりません。もっとやってください。


「もっと詳しいことが知りたい人は、是非アニメ2話を見ることをお勧めしますよ。BD一巻、絶賛発売中です♪」
「あ、あのムギ…誰に向かって話してるんだ…? ていうか言っている意味が全然分からないんだけど…」


虚空に向かって宣伝活動に勤しんでいる私に、澪ちゃんが顔を真っ青にして声をかけてくる。
きっと、見えない何かと会話をしてるんじゃないかと思って怖くなってるのね。
澪ちゃんたら相変わらず怖がりなんだから。そこが可愛いところではあるんだけど。

とりあえず私は「なんでもないから気にしないで」と、澪ちゃんを安心させようと笑顔を見せる。
澪ちゃんはちょっと納得いかない顔をしていたけど、これ以上考えてても怖いだけだと思ったのか、素直にコクンと頷いた。


「ふぅ…」


澪ちゃんは一息ついて、紅茶を飲もうとカップに手をつける。
しかしカップを口につけたところで「あ…」と何かに気付いた。
見ればカップの中身は空だった。紅茶のこの字も残っていない。


「澪ちゃん、おかわりいる?」
「う、うん。お願い」


どうやらまだ少しひきずってるみたい。
何だか少し悪いことしちゃったかなって思うけど、もうどうしようもないしね。
私は澪ちゃんのカップに紅茶を注ぎながら、とりあえず話題を変えることにした。


「唯ちゃんと梓ちゃんは相変わらず仲良しだね」
「…え?」
「ほら、あの二人」


少し強引かとも思ったけど、澪ちゃんには思いのほか効果があったようで。
私がそう言うと二人の方に目を向けて「ああ…」と穏やかな笑みを浮かべた。


「何だか、子育てに夢中の夫婦みたいだな」
「ふふ♪ ホントそうね」


澪ちゃんの言うことには激しく同意だった。
相変わらず二人は水槽に顔を張り付かせながらトンちゃんを愛でていた。
どうみても子育てしてる夫婦にしかみえません。本当にありがとうございます。


「二人に子供ができたらこんな風になるのかな?」
「うふふ、ぜひそうなって欲しいわね~」
「そうだな。唯ママに梓ママか…」


私と澪ちゃんは、目の前で展開される微笑ましい光景を穏やかに見守っていた。
こんな光景を延々と見せられているのだから、私の顔の筋肉も緩みっぱなしです。
この二人が恋人同士になってからというもの、あっちでイチャイチャ、こっちでイチャイチャ。
たとえ人が見ていようとお構いなしイチャつくので、私も色々と大変です。
もちろん、血が足りなくなるという意味で。


「はい、どうぞ澪ちゃん。お茶入れたよ」
「ん? ああ…ありがと」


カップにおかわりの紅茶を入れると、澪ちゃんはお礼を言ってカップを手に取った。
それから紅茶を口に含みコクンコクンと喉を鳴らし、半分くらい飲み干したところでカップから口を離した。
ふぅっと一息ついて、そして。


「律のヤツ遅いな…」


何気なく、半ば無意識にそう呟いた澪ちゃんは、扉の方に目を向ける。
澪ちゃんの言葉のとおり、実はりっちゃんはまだ音楽室には来ていない。
理由は掃除当番だからっていう単純なもの。

扉をじっと見つめる澪ちゃんの表情はどこか寂しげで、憂いを帯びているように見える。
早くりっちゃんに会いたいって気持ちがひしひしと伝わってくる、そんな表情だった。
そんな澪ちゃんの様子に、私は思わずクスクスと声を上げて笑ってしまった。


「な、なに笑ってるんだよムギ」


突然笑い出した私に、怪訝そうな顔を見せる澪ちゃん。


「んー、澪ちゃんったらりっちゃんがいなくて寂しいのかなぁーって思って」
「~~ッ!?」


私がそう言った瞬間、ボンっという音を立てて澪ちゃんの顔が真っ赤に染まった。
まるで熟したリンゴみたい。

その反応に気をよくした私は、にまにまとした笑みでさらに澪ちゃんを追撃する。


「もしかして図星だった?」
「っ…な、何言ってんだよ! べ、別にそんなこと……あ、あるわけないだろっ…!」
「うふふ♪ 別に隠さなくてもいいのに」
「隠してない!」
「あらあら♪」


相変わらずりっちゃんのこととなると素直じゃないのね。
真っ赤な顔で否定しても、全然説得力がないって分かってるのかしら?


そんな風にしばらくの間、澪ちゃんをからかっていると


ダダダ…!


ふいに音楽室の外から聞きなれた音が聞こえてきた。階段をかけ上げる足音だ。
大よそ女の子が立てそうにない足音を立てながら、この音楽室へ向かってくる気配が一つ。
その人物が誰なのかなんて、火を見るより明らかだった。
当然その人物とは――


「来たな…」
「来たね…」


澪ちゃんもそうだと思ったのか、呆れ顔でやれやれと呟く。
でもその表情はどこか優しくて、温かいものだった。

さて、それじゃりっちゃんの分のお茶も用意しないとね。
それから――。


「唯ちゃん、梓ちゃん。そろそろお茶にしましょう」
「おっ! 待ってましたムギちゃん! ありがとー」
「ふふ、どういたしまして。あ、そうだ。今日は梓ちゃんの好きなバナナケーキもあるのよ」
「ホントですか! ありがとうございますムギ先輩!」
「よかったね、あずにゃん」
「はい!」


唯ちゃんも梓ちゃんもトンちゃんを愛でるのを中断し、それぞれの席についていく。
二人が席についた瞬間、音楽室の扉がバターンというけたたましい音を響かせながら開け放たれた。
丁度りっちゃんの紅茶も入れ終わったところで、タイミングはばっちりだった。


「おーす!!またせたなー! 部長様の登場だぞー!」


そう言って中に入ってきたのは我らが軽音部の部長、田井中律ちゃん。
きらりと光るオデコとカチューシャがトレードマークの元気で明るい女の子だ。
りっちゃんはソファに鞄を投げ捨てて、軽やかな足取りで自分の席に腰を下ろした。


「たく…いい加減静かに入るってことを覚えろよな」


りっちゃんが座った途端、澪ちゃんは待ってましたと言わんばかりに呆れた顔でそう言った。
しかしりっちゃんの方はまったく意に介した様子はなく「にしし」と楽しそうに笑う。


「おいおい澪~、元気だけがとりえの私にそりゃないぜー」
「元気だけがとりえって…自分で言ってて悲しくならないか?」
「それに何だか愛と勇気だけが友達のアレみたいですね」


あらあら、梓ちゃんたら上手いこと言っちゃって。
ジャムおじさんもビックリね。


「なっ! わ、私はあそこまで顔まるくねーし!」


梓ちゃんの言葉に異議を唱えたりっちゃんは、ぷくーっとほっぺを膨らませた。
それを見た唯ちゃんは、途端にプッと吹きだしてお腹を押さえて笑い出す。
かくいう私もりっちゃんのその膨れっ面に声に出して笑ってしまいました。

「あはは…♪ りっちゃん、似てる似てるー!」
「ふふ…♪ ホントに似てますね! ていうか似すぎですっ…くふっ…!」
「な、なんだとー! そんなに笑うんじゃねー!」


唯ちゃんと梓ちゃんの言うとおり、ほっぺを膨らませたりっちゃんの顔は某アンパンの人にそっくりでした。


「ぶほっ!!」


笑いは伝染して、ついには澪ちゃんまで吹きだし、笑い始めました。


「が、ガーン…み、澪まで…そんなに私はアレに似てるのかよ……」


若干落ち込み気味のりっちゃんを余所に、あはは!っという笑いの嵐が巻き起こった。
唯ちゃんも梓ちゃんも澪ちゃんも。もちろんこの私も。
そんな笑いの渦に巻き込まれるように、いつの間にかりっちゃんまで笑い出していました。



こうしてたくさんの笑顔と笑い声に包まれながら始まっていく私たちの放課後ティータイム。
それはいつもと変わらない穏やかで優しい日々。今日も明日も明後日も。
きっとこれから先もずっと、こんな平穏無事な毎日が続いて――。

――でも。

このときの私はまだ気付いていなかった。
この数日後、まさかあんな事件が起こってしまうなんて――。





―続く―




【あとがき】
お久しぶりのシリーズです。ずいぶんご無沙汰しちゃってすみません(汗)
目まぐるしい忙しさから、中々後編の方が進まないので先に前編の方を上げておきます。
今回はちょっとしたほのぼの日常のお話ですが、後編からはひと悶着ありますのでw
どんなと言われると答えにくいですが、一応タイトルの「桜」に関係する話です。

では、後編もできるだけ早くうpできるように頑張ります。
出来れば今週中を目指して!
[ 2010/08/29 21:29 ] 未分類 | TB(0) | CM(1)
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[ 2010/08/29 22:37 ] [ 編集 ]
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