※追記からどうぞ!
どうも、秋山澪です。
実は最近、ちょっとした悩みがあるんだ。
その悩みと言うのはもちろんあの二人のスキンシップのこと。
まあ仲がいいのは喜ぶべき事なんだけど、ちょっと度が過ぎているというか・・・。
もうちょっと回りを見てもらえると嬉しいかなって思う。
べたべたしてるのは日常茶飯事なんだけど、この前のラブレター事件みたいなイレギュラーもたまに起こる。
最近は慣れてきたからいいんだけど、イレギュラーな事が起こると、私ほとんど気絶しちゃうんだ・・・。
うぅ、誰かなんとかしてくれぇ・・・。
それは部活の練習中の事だった。
いつものティータイムが終わり、私達はそれぞれ練習を始めていた。
うん、ただの練習。練習のはずなんだけど・・・。
だけどここでもこの二人は――
「あずにゃーん、ここ分かんないよぉー」
「はいはい・・・ちょっとまってください・・・・・・えーとここは・・・こうすればいいと思いますよ」
こんな風に梓が唯に教えるのはいつもの事。
いくら唯が上達したといっても、まだまだ梓の方が腕は上だったからな。
梓の指導通りに唯がギターを弾いていくんだけど、中々上手くいっていないみたいだ。
「うーん、ちょっと難しいなぁ」
「ええっと・・・」
唯がうーんと唸る。
梓の方はというと、どうやって教えたらいいものかと悩んでいるようだ。
「あ、そうだ唯先輩、ちょっと失礼しますね?」
いい案が浮かんだのかニッコリと笑顔をうかべ、唯の手を引く梓。
いったいどうするんだろ?
そんな事を思っていると、梓は唯を椅子に座らせ自分は唯の背後に回る。
そして唯を後ろから抱きしめるようにそっと自分の手を唯の手に重ねた。
ちなみに梓の顔が唯の肩に乗っかっている状態だ。ほっぺ同士がぴったりとくっついている。
「え?・・・ひゃっ」
梓のいきなりの行動にさすがの唯も驚いているようだ。
私もかなり驚いたよ。見ているこっちが恥ずかしくなるようなこと平然とやってのけるんだからな。
うーん、昔の常識的で真面目な梓はどこにいってしまったんだろうか・・・。
それともこれが愛のなせる技なのか?
「ちょ、ええっと・・・あずにゃん?」
「ええっと・・・こうやった方が分かりやすいかなって・・・」
驚いている唯を尻目に、梓はゆっくりと丁寧にギターを教えていく。
「それじゃいきますよ、唯先輩?・・・ここがこうで・・・こう」
「・・・・・・・・」
梓の恥ずかしい指導に、唯は心ここにあらずって感じでボーっとしていた。
梓もそんな唯をおかしいと思ったのか、唯に問いかけた。
「?・・・・・唯先輩?・・・・・大丈夫ですか?」
「・・・・へっ!・・・・あ・・・う、うん・・・えと・・・あのねあずにゃん・・・」
梓の問いかけに、一瞬ビクッとなる唯。しかもなぜか頬が赤く染まっている。
「はい? なんですか唯先輩?」
ま、まさか・・・
「あ、あずにゃんのあったかいのとか柔らかいのが伝わってきて・・・・ちょっと練習にならないかも。そ、それにあずにゃんの吐息が首にかかって全然集中できないよぉ」
「なっ! な、何恥ずかしいこと言ってるんですかっ! も、もっと真面目にやってください!」
や、やっぱりそういう展開か!・・・て言うか、恥ずかしい事って言うけど梓の行動も十分恥ずかしいって・・・。
唯は振り向き、はにかんだような笑顔を梓に見せる。
梓の方は、文句を言いながらも顔を真っ赤にしていた。
なんだってこの二人は、ただの練習でここまでピンク色の空間を作れるんだろうか・・・。
「だ、だって・・・仕方ないじゃん。大好きな人にこんな事されたら・・・耐えられないよぉ」
「うぅ・・・ず、ずるいですよ。そんなこと言われたら私・・・」
あ、あれ・・・なんか・・・妙な雰囲気に・・・。
「あずにゃん・・・」
「唯先輩・・・」
二人は見つめあい・・・互いの顔をゆっくりと近づけて・・・。
――って、だ、ダメだろそんなの!!
「お、おい二人ともストップっ!!」
「「っ!」」
私は今にもキスしてしまいそうな二人を急いで止める。
すると二人はビクッとなってこちらを見つめてきた。
「「・・・・あ・・・・」」
な、なんだよその顔・・・まるでこっちの事忘れてました~みたいな顔するなよ・・・。
二人はようやく自分たちの行動を理解したのか、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「そそそ、それじゃ練習しよっかぁあずにゃんっ!」
「そ、そうですねっ」
二人とも自分達の恥ずかしい行動を誤魔化す様にギターの練習を再開していく。
ふう・・・あ、あぶなかった。
もう少しで二人のキ、キスシーンが眼前に・・・。
この二人、こうして見張ってないと時間場所問わずいちゃつきまくるから大変なんだよな。
も、もしキスシーンなんて見ちゃったら、こっちもやばかった・・・。
あ、こらムギ!どさくさに紛れてビデオ回すんじゃない、練習中だぞ!
はぁ・・・それにしても、この二人、本当に仲いいよなぁ。
ま、まあ恋人同士なんだし、あ、当たり前・・・なのかもしれないけど。
い、いやまあ・・・実際の恋人同士ってのがどんなのか分からないからなんとも言えないんだけどな・・・。
べ、別に羨ましいとか思ってないんだからな!ホントだぞ!!
わ、私だって、そ、その女の子だし・・・人並み程度には興味はあるっていうか――って、変なこと言わせるな!!
やれやれ・・・誰かこの二人を止めてくれ・・・頼むから。
「でも・・・そんな二人がこの後あんな事になるなんて夢にも思わなかったんです・・・」
――っておい律!なに変なナレーション入れてんだよ!!
次の日!
おーす! みんなのアイドルりっちゃんだぞー!
昨日は澪だったから、今日は私が実況だ!ありがたく思えよー。
私も澪ほどじゃないけど、あの二人には手をやいてんだ。
あっちでラブラブ、こっちでいちゃいちゃ。
それを所構わずだからなぁ・・・喜んでんのはムギくらいだぜ。
でもな昨日冗談で言った『あんな事』がホントに起こるなんて思わなかったよ。きっと澪もビックリだなー。
それは放課後の出来事だ。
私がいつもの様に音楽室に向かっていると、音楽室の中から大声が聞こえてきた。
扉も閉まってるのに廊下まで響いてくるなんて、この声の主は相当大声で叫んでいるようだ。
私は声の主が誰なのか気になり耳をすませてみる。
うん、どうやら二人いるようだ・・・。
「って、これって・・・あいつらか?」
毎日聞いてる声だから分かる。
この声は間違いなく唯と梓の二人だ。
何か嫌な予感がした私は、駆け足で階段を上り音楽室のドアを開けた。
するとそこには――
「そんなのおかしいよっ!!」
「なっ! おかしいのは唯先輩じゃないですかっ!!」
――お互いに怒声を浴びせあう二人がいた・・・。
「なっ!?」
私は正直驚いた。
あの唯と梓が今にも掴み掛りそうな勢いでケンカをしていたからだ。
一触即発っていうのはこういうのを言うのかもしれない。
信じられるか?
あの万年いちゃつきバカップルがだぞ?
さすがの私も目を疑ったよ。
梓はいつもプンプンしてるから珍しくないけど、あの唯の怒った顔なんて想像できるか?できないだろ?
それが今目の前に広がってんだよ・・・マジで。
「あずにゃんおかしいよっ! なんでそんな事言うのっ!!」
「唯先輩が分からずやだからですっ!!」
私が入ってきたことに気付いていないのか、さらにヒートアップしていく二人。
さすがにこれはヤバイと思った私は、二人を止めるべく声をかける。
お、おーい・・・
「分からずやなのは、あずにゃんじゃんっ!!」
「いいえっ! 唯先輩ですっ!!」
ちょ、ちょっとお前ら・・・?
「あずにゃんのバカっ!!とーへんぼくっ!!」
「バカなのは唯先輩ですっ! ふんっ!!」
わ、私の話を・・・
「もういいよっ! あずにゃんなんて知らないっ!!」
「私だって唯先輩なんてっ・・・・」
「ちょっと私の話を聞けえぇーーーーーーーーーーーーっ!!!」
「「っ!!?」」
まったく私の話を聞かないでケンカを続ける二人に、ついに私は声を張り上げた。
大声に驚いたのか二人がようやく私に気付く。
「り、りっちゃん・・・?」
「り、律先輩・・・?」
気付くのおせーよお前ら・・・はぁ・・・。
私がいたことに驚いたのか戸惑いの表情を浮かべる二人。
そんな二人を無視して私は、さらに続ける。
「まったく・・・いったいどうしたってんだ、二人とも? ケンカなんて珍しいじゃないか」
珍しいっていうよりはケンカしてるとこなんて始めてみたんだけどな。
まあ二人っきりの時はどうか知らないけど・・・。
事実、音楽室にいる時はいちゃいちゃしているところしか見たことがない。
しかもほっとくとイクとこまでイキそうな勢いだしな。
・・・毎日大変なんだぜ?
「え、ええと・・・・それは」
「・・・・」
私の質問に二人は目を逸らして俯いた。
恋人関係に口を挟むのはどうかとも思ったけど、私はケンカの原因を聞いてみることにした。
やっぱり仲直りしてもらいたいし、それになんだかんだ言って、この二人が仲良くしてないと調子狂うからな。
「いったい何が原因なんだ? 何かあったのか?」
「えと・・・それは・・・」
「あの・・・」
二人は俯きながら話しずらそうに目を泳がせている。
うーん、どうしたらいいんだ・・・。
でもこのままじゃいけないしな。
それにこれからの部活にも影響が出ても悪いし。
ここは部長としてガツンと言ってやらないとな!
「このまま言い争いしてたってダメだぞ! これから練習だってあんだし、みんなに迷惑かけらんないだろ?」
「「うぅ・・・」」
私の言葉に途端にショボンとする二人。
そしてようやく決心がついたのか梓がおずおずと口を開き始めた。
「・・・え、えと・・・あの・・・実は・・・」
ごくりっ
私は思わず喉をならす。
いったいどんな深刻なことを言われるのかと思ったからだ。
そう考えるとやっぱり聞かなきゃよかったかなーとかちょっと思ってしまう。
だけどな、次の梓の一言は、自分の考えがいかに甘かったのかを教えてくれたよ・・・。
「実は・・・私と唯先輩・・・どっちが可愛いかってことで口論になっちゃって・・・」
・・・・・・・(°Д°)ハァ??
私は耳を疑った。
なんだって?・・・今、梓はナンテ言った?
うん、まずは落ち着こう・・・・すぅ~はぁ~すぅ~はぁ~・・・・。
「最初ねー、私が『あずにゃんってやっぱり可愛いよねー』って言ったんだけど・・・そしたらあずにゃんが『私なんかより唯先輩の方が可愛いですっ』って・・・」
思考が停止してしまった私に先ほどまで黙っていた唯がさらに詳しく付け加える。
「わ、私は、唯先輩より可愛い人なんていませんって否定したんですけど、唯先輩は私の方が一番だって聞かなくて・・・」
「だって、あずにゃんの方が可愛いもんっ」
えーとつまりこう言うことか?
唯が梓のことを可愛いといったけど、梓はそれをよしとはせず唯の方が可愛いと言ったと・・・。
それでもって、そんな梓の言葉に唯が異議を申し立てたと・・・。
さらにそれが延々と続いて口論に発展したわけだな・・・うん。
「いいえっ、絶対私なんかより唯先輩の方が可愛いですっ! だいたい唯先輩は自分がどれだけ可愛いか分かってないんですっ!」
「ぶー! だからおかしいよっ! それはっ!」
えーと。
「絶対唯先輩ですっ!!」
「ううんっ、絶対あずにゃんっ!!」
私もう帰っていいか?
唖然としている私を他所にまた口論を始めていく二人・・・・.。
そんな二人を眺めながら私は思った。
だ、ダメだこの二人っ!早くなんとかしないとっ!!!
おしまい
【あとがき】
前回はムギでしたが今回は律澪コンビが主役な作品です。
やっぱり全員だしたいですからね。
そのうち憂、和、さわちゃん視点とか書けたらいいなぁーっと!
できるだろうか・・・・