とある百合好きの駄文置場。二次創作SSやアニメ・漫画等の雑記中心。ゆいあずLOVE!

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唯梓SS 『梅雨と雨と相合傘 ―前編― 』

※追記からどうぞ!




6月某日――日本は梅雨真っ盛りである。

放課後、お昼から降り始めた雨はいまだに止まない。
どんより曇った空から、まるで滝のような大量の雨が地面に降り注いでいた。
窓を叩くザーザーという雨音が耳に騒がしく、実にうっとおしい。
今日で雨が降るの何日目だっけ?…と考えてみたけど、すぐに考えるのを止めてしまった。
考えるだけ無駄だった。
さすがに、1週間以上も当たり前のように降り続けると数える気も失せる。
しかも性質が悪い事に、夜には晴れて朝方から降り始めるなんてこともざらにある。
いったい、何の嫌がらせなんだろう。


「はぁ…早く梅雨明けないかな…」


ソファに座って窓の外をぼんやりと眺めながら、ボソッと呟いた。
その言葉の意味するところは、私にとってかなり切実な願いだった。
いや、実際は私だけでなく、他の人達だってそう思っているはず…だと思う。

正直言って、私は梅雨がきらいだった。

毎日毎日雨ばかりで鬱になりそうだし。
それにジメジメして、外歩けば靴下までびしょ濡れで。
傘を差しても、完全防水なんてまず不可能。どうやっても濡れてしまう。
そして何より、私たちの商売道具とも言える楽器にだって影響悪いし。
毎年毎年、錆びやカビの脅威に怯えなければならないのだ。

そんな理由から、私はいつの間にか梅雨という時期が嫌いになっていた。
だって、好きになる要素がないもの。


「はぁ…」


考え事をしながら、また溜息をついた。


「あずにゃんはさー、雨きらい?」


私の溜息に反応したのは、私の隣に座っていた唯先輩だった。
唯先輩は私の隣で、ギー太をきゅきゅっと言う音をたてながら磨いていたのだが。
その手を止めて、私の顔を覗き込みながら声を掛けてくる。


「そりゃ嫌いですよ…雨が好きな人なんているんですか?」
「えーいると思うよ。農家の人とか」
「ああ、なるほど。恵みの雨ってヤツですね」
「そうそう!」


よく考えると、雨が降って嬉しい人達もいるんだよね。
でもそれって、雨がまったく降らないときのことを言うんじゃないだろうか?
あんまり降りすぎても、多分良くないと思うんだけど。


「それでもやっぱり、雨は好きになれないですねぇ……先輩はどうなんですか?」


そう問い返すと、唯先輩は目をぱちくりさせてから、ニコッと優しい笑顔を向けてくる。
その笑顔はあまりにも眩しかった。眩しすぎて思わず先輩から顔を逸らす。
本当に眩しい…まるで太陽みたいな笑顔だった。
その太陽パワーで梅雨も吹っ飛ばしてくれればいいのに。
…とは思ったけど、さすがに無理だろう。


「私は好きだよ。まぁ梅雨はあんまりだけど…雨は結構好きだなぁ」
「え?」


先輩の言っている意味が理解できなかった。


(梅雨はきらいだけど雨は好きって、矛盾してないかな…?)


いっけん矛盾を孕んでいるように聞こえるけど。
でも、よく考えてみると、別に矛盾はしていない。
梅雨は時期であって、雨そのものじゃないから。
たぶん、唯先輩が言っているのはそう言うことなんだろう。


「雨の音ってさー。なんていうか心が落ち着くんだよね……静かな気持ちになれるの。それに雨の降り方で雨音も違うし、色んな音を楽しめるんだよ」
「ふーん…そんなもんですかねー」


心が落ち着くか…。
雨音を聞いて、荒んだ心を洗い流すみたいなことだろうか。
別に唯先輩の心は荒んでないけど…。

でもさすが唯先輩、言うことが一味違うと思った。
私としては、雨音なんて耳障りなだけでしかないのに。
それに、聞いてるとイライラしてくるし。
早く止んでしまえばいいのにとしか思えない。


(これってもしかして、私の心が汚れてるって証拠かな?…いやいや、唯先輩が特殊なだけだよね…たぶん)


先輩が特殊な考えの持ち主であることは、今に始まったことじゃないから。
それで納得することにする。
でも、唯先輩のように素直な心で耳を傾ければ、私にも同じように聞こえるのかな。


(……)


試しにやってみた。
目を閉じて、息をつき、落ち着いた心で雨音に耳を傾けてみる。

――ザァー!ザァー!


(うーん…落ち着くといわれればそうかもしれないけど…落ち着かないといわれれば落ち着かない…)


屋根や窓に打ち付けられた雨音を聞いてみても、特に気持ちの変化は感じられなかった。


(やっぱり、唯先輩の感性が人よりもズレてるんだよね…きっと…)


でも、そんな風に思える唯先輩がちょっと羨ましい。
雨の日でもいつもの眩しい笑顔を絶やさない唯先輩みたいになりたいと思った。
この人みたいに雨を楽しめたら、溜息なんてつかなくてもすむんだろうね、きっと。


「それに、ちっちゃい頃は雨が降っててもお構いなしに外で遊んでたよ」


ふいに、先輩は窓の外を見つめながら、昔を懐かしむような目でそう言った。
それはきっと楽しい思い出の記憶なのだろう。
先輩の表情を見ていれば、その頃の情景がありありと浮かんでくる。


「雨の日に外ですか? 随分とやんちゃだったんですね」
「えへへ~。まぁさすがに大雨のときはムリだけどねー。小雨くらいならぜんぜんビクともしなかったよ!ふんすっ」
「唯先輩は子供の頃から元気いっぱいだったんですね」
「まーね!」


唯先輩は「ふふん♪」と得意げな顔で、胸を張った。
『子供は風の子、元気な子』を具現化したような人だな、この人。
和先輩の話でも唯先輩は昔からやることなすこと変だったって言ってたし。

でも…と、私は思った。


(なんだか唯先輩らしくて可愛いかも)


そんな風に思いながら、心の中でクスっと笑った。
子供の頃から今も変わらぬ純真な心を持つ唯先輩が、とても可愛く思える。


「どうせ唯先輩のことだから、憂も巻き込んで遊んでたんじゃないですか?」
「うん、そうだよ。よく分かったね」
「そりゃ分かりますよ…」


だって、あの憂が唯先輩を放っておくはずなんてないだろうし。
「お姉ちゃ~ん、濡れちゃうからお家帰ろうよ~」
とか言いながら唯先輩の後追って、結局遊びに付き合わされたんだろうな。
目を閉じればそんな光景が当たり前のように目に浮かぶ。
これも、やんちゃな姉を持ったしっかり者な妹の宿命なのだろう。

そんな風に、先輩の過去を想像していたその時――


「なんだぁ~二人してぇ~。内緒のお話かぁ~」
「「っっっ!?」」


――私たちの背後から、突然声がした。

思わず言葉が詰まる。息が止まるかと思った。
背後に人がいるなんてまったく気付かなかったから、本当に驚いた。
その声に驚いた私は、ビクンと体を震わせてしまう。
それは唯先輩も同じだったようで、手に持っていたギー太を床に落としそうになる。
本当に危なかった。

そしてその声の主はと言えば、ソファの後ろから、にょきっと顔を出した。
その人物とは、我らが軽音部部長、田井中律先輩だった。


「り、律先輩…きゅ、急に背後から声掛けないでくださいよ! 驚くじゃないですか!」
「そ、そうだよ! びっくりしたよりっちゃん! ギー太落っことしちゃうところだったじゃん!」
「あはは♪ わりーわりー。そんな怒んなって」


私は、律先輩の行動に怒りの声を上げる。もちろん唯先輩も。
さすがの唯先輩もほっぺを膨らませてプンプンしている。
しかし、当の本人はまったく悪びれもせずに、軽快に笑っている。
やれやれ、少しは反省してもらいたいものだ。

律先輩はさっきまでテーブルでお茶していたはずなのだが、いつの間にやら私たちの背後に回っていた。
その、してやったりの顔と、そ~っと気配を消してまで来たところを見ると、最初から私たちを驚かすつもりだったらしい。
本当にやれやれだ。悪戯好きの律先輩らしいといえばらしいけど。
でも、やられた方の身としては堪ったものじゃない。
正直、心臓止まるかと思ったよ。


「バカ律。あんまり人に迷惑かけるなよ」


律先輩に向かってそう言い放ったのは、テーブルで歌詞作りに勤しんでいた澪先輩だった。
ペンを片手に、ノートにすらすら歌詞を書いていたらしい澪先輩は、その手を止めて律先輩に言った。
澪先輩はやれやれって感じで、呆れ顔だった。


「いいじゃんかよ別にー。ぶーぶー!」


律先輩はその言葉に口を尖らせて、ぶーたれる。
まったく反省の色がない…やれやれだ。


「まぁまぁ澪ちゃん。りっちゃんだって悪気があってやったわけじゃないんだし」
「いやいや…思いっきり悪気があってやってるだろ…」
「そうなの?」


澪先輩の隣で歌詞作りのお手伝いをしていたムギ先輩が、律先輩の肩を持つようにそう言った。
その表情は、いつものおっとりした、穢れを知らない笑顔である。
さすがと言うべきか、あのあからさまな悪戯を悪気がないで済ますとは恐れ入る。
何と言う聖人君子。ムギ先輩の笑顔は、すべての罪を許してくれるようなオーラを放っている。


「さすがムギ。分かってるなぁ。ちょっとしたお茶目なのに、澪ってば大人げないよな」
「はぁ…まったく…。ムギは律に甘いんだよ…」
「え、そうかしら? そんなことないと思うけど…」


顎に手を当てて「うーん…」考え込むムギ先輩を見つめながら、澪先輩は「やれやれ」と言って溜息をついた。


「まぁまぁ、それはとりあえず置いといて。そんで? 二人は何の話してたんだよ?」


律先輩が私たちに向き直って、そう言った。


「ああ…いえ、ただちょっと唯先輩の子供のころの話をしていただけで…」
「子供のころ?」
「うん。子供のころ雨の中でも遊んだなーって」


私の言葉に不思議そうな顔をした律先輩に、唯先輩が分かりやすく付け加える。
それを聞いた律先輩はポンっと手を叩いて「なるほどなー」と元気に返した。
まるで、唯先輩の言葉を理解できているみたいに聞こえる。
もしかして、律先輩も唯先輩と同じとか?


「もしかして律先輩も、雨の中でも遊びまわったとか?」
「お、よく分かったな。私もあの頃はやんちゃだったからな」


いや、今でも十分やんちゃしてると思います。
さすがに、声に出してはいいませんけど。


「澪のこと連れ回して、泥んこまみれになるまで遊んでたぞ」
「へ、へぇ…それはまた…」


澪先輩…心中お察しいたします。


「おおっ!仲間だねりっちゃん!」
「そだな! 何ていうか、雨とか台風のときって逆にテンション上がるんだよな」
「分かる分かる~♪」


仲間ができて嬉しいのか、唯先輩は目を輝かせている。
ていうか、澪先輩が「私は嫌だったのに…無理やり…」とか何とかぶつぶつ言っている。
律先輩の言う、”あの頃”とやらを思い出して、心の涙を流しているように見えた。
そんな澪先輩をムギ先輩が「まぁまぁ」と笑顔で慰めている。
きっと、私には想像もつかない過去が秘められているのだ。


「風邪引いたりとかしなかったんですか?」
「引くわけないだろ? 私は元気の塊みたいな子供だったからな。雨ごときに私の体をどうこうしようなんて100年早いぜ!」
「私も私も! 風邪引いたのなんて文化祭の一回だけだしねー」
「へ、へぇー…そうなんですか…」


それはまた丈夫な身体だったんですね、二人とも。
にしても、唯先輩の風邪が長引いたのって、今まで風邪を引いてこなかったから風邪に対する免疫が付いてなかったからか。
なるほど、納得。あの時は中々治らなくて、1週間近くも休んでたから何か変な病気かと心配したものだ。


「…はは…私は思いっきり風邪引いたけどな…」
「あらあら…」


澪先輩がずーんっと沈みながら、また何かぶつぶつ言っている。
きっと過去のことを思い出して鬱になってるんだ。可哀相に…。


「なーにしょげてんだよ、みーお!」


それに気付いた律先輩が、澪先輩の方に駆け寄って顔を覗き込みそう言った。


「お前に連れ回されるとろくな事なかったよ、ホントに」
「えーそんなことないだろ。澪だって何だかんだで楽しんでたくせに」
「うっ…それは…。うー…なんか思い出したら腹立ってきた。とりあえずほっぺ引っ張らせろ!」
「んあっ! んにゃー! にゃにふんだ、ひお~!」


なんて言うべきか、いつもどおりの二人で、見てると非常に和む。


(これ言ったら…二人とも怒るかもしれないけどね…)


それからも二人は、あれやこれやと過去の話を持ち出して。
律先輩が何か言うたびに、澪先輩がほっぺを引っ張るのだった。
そんな二人を、ムギ先輩はうっとりした顔で見つめている。
本当に、いつも通りの光景である。


「そーいえば…」


そんな光景を他所に、ふいに唯先輩が口を開いた――。




―次へ―

[ 2010/06/25 21:54 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)
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