とある百合好きの駄文置場。二次創作SSやアニメ・漫画等の雑記中心。ゆいあずLOVE!

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唯梓SS 『ぶらっく☆きゃっと!』

※追記からどうぞ!



「な、何…これ?」


いつものように電車に乗って通学していた私に訪れたのは、思わず目を覆いたくなるような奇妙な現象。
電車を降り、いつもの通学路を歩いていた私は、すぐにそれがおかしな事だと気が付いた。

――ニャー、ニャー!
――ニャーゴ、ニャーゴ!

だって、道行く道、いたるところにネコがいたのだから。
しかもそのネコたちは絶賛交尾中で、朝から随分とお盛んです。
とは言っても、さすがに異常だと言わざるを得ません。
1組や2組ならば、日常的な事として片付けられそうですが。

でも。

その数は圧倒的に多かった。
少なく見積もっても、20、30組くらいはいたのではないかと。

さすがにその光景には、この私――琴吹紬も息を呑みました。
一体全体これは何なのだ、と…。
何が起こってるんだ、と…。
もしかして天変地異の前触れなのではないかと思ったくらいです。
発情期と言ってしまえばそれまでですが、私はそんな風には思えませんでした。

これは何か…良くないことが起こる前兆なのではないでしょうか…?


あっちでにゃーにゃー、こっちでにゃーにゃー。
結局、学校に着くまでその鳴き声が止むことはありませんでした。







その日の放課後。
朝の出来事なんて、すっかり忘れかけていた頃。
私はいつものように、部室でティータイムの準備を進めていた。
ポットから漂うハーブの香りが鼻腔をくすぐり、私の心を落ち着けます。


「はい、りっちゃんどうぞ。今日はハーブティーにしてみたの」


そう言って、お茶を注いだカップをりっちゃんに差し出す。


「お、さんきゅームギ」


りっちゃんはニコッと笑って、それを受け取りカップに口を付けた。
コクンと一口飲み、カップから口を離す。


「うん、うまい。さすがムギだな。このまま喫茶店でも開いたらどうだ?」

「ふふ♪ ありがとりっちゃん。でもさすがにそれはいいすぎよぉ」


りっちゃんの言葉は素直に嬉しいけど、さすがに言いすぎ。
私なんかより上手にお茶を入れられる人なんて、世の中には五万といるはずだし。
私の知識なんて所詮、趣味の範囲を抜け出せない半端なものだ。
まあ、だからと言って、その位置に甘んじている気もないですが。
少しでもおいしいお茶をみんなに提供できるように、日々努力を怠りません。


「にしても、3人とも遅いなー」

「そうねー」


カップを机に置きながら、はぁっと退屈そうな溜息をつき、りっちゃんはそう言った。
りっちゃんの言うとおり、この部室にはまだ私とりっちゃんしかいなかった。
唯ちゃんと澪ちゃんは掃除当番で遅れているとして、梓ちゃんは――と、思い始めた時だった。

ガチャリという音を立てて部室の戸が開かれる。


「すみません、遅れましたぁ」


その言葉と共に、入ってきたのは梓ちゃん。
梓ちゃんは私たちの姿を認めると、トコトコとテーブルに寄ってきた。
途中、鞄とギターを置くのを忘れずに。
梓ちゃんは席に付くと私達の顔を交互に見やってから口を開く。


「ちょうど良かったです。実は律先輩とムギ先輩に見てもらいたいものがあるんです」

「んん? 何だ何だ? 何か面白いもんでも見つけたのか!」

「ふふ、りっちゃんたら…」


さっきまでの退屈そうな顔なんてなかったように、りっちゃんは目をきらきらと輝かせて梓ちゃんの言葉に反応した。
その様子はまるで、新しいオモチャを見つけた子供みたいで、なんだかちょっと可愛い。
でも、可愛いからって自分のものにしたいとか、そういった事は考えていませんのであしからず。
澪ちゃんからりっちゃんを奪う気なんて、さらさらありませんからね。
私は、みんなのいちゃいちゃぶりを見ていられれば幸せですから。

私は梓ちゃんのお茶を注ぎながら、二人の様子を伺っていた。
りっちゃんはさっきも言ったとおりで。
梓ちゃんは何やらブレザーのポケットに手を突っ込みごそごそ何かを探し始ている。


「梓ちゃん、何か探してるの?」


私が聞くと、梓ちゃんは「ええ…ちょっと」と言って、今度は逆のポケットに手を突っ込む。
すると一瞬でお目当てのものに触れたのか、ニコっと微笑み、ポケットからその物を取り出す。


「実は見て欲しいのはこれなんです」


梓ちゃんはそう言って、テーブルにそれを置いた。
置かれたのは数枚の紙切れ。
しかしよく見ると――


「えーと、これは…。ってなんだ…ただの写真じゃん」


りっちゃんの言うとおり、それは写真だった。
枚数は3枚、写っているのは人で3枚とも同じ人だった。


「これって…唯ちゃん?」


私が言うと、梓ちゃんはコクンと頷いた。


「しかも唯のって…もっと面白いもん期待してたのに…」


ハァ、と溜息をついて、ちょっとがっかり気味のりっちゃん。

しかし私は、少し気になる事があった。
確かに写っているのは唯ちゃん。
だけど、その写真の唯ちゃんには明らかな違いがあった。


「ねぇ梓ちゃん、どうして幼稚園の頃の唯ちゃんなのかしら」

「え! どれどれ…あ、ホントだ。しかも小学生の頃のもあるじゃん」


りっちゃんの指摘通り、私が気付いた幼稚園児な唯ちゃんの他にも、ランドセルを背負って無邪気な笑顔を見せる唯ちゃんの写真もあった。
そして残った最後の一枚は。


「最後のは、いつもの唯ちゃんね。って、ちょっと見てりっちゃん、これ着替え中よ!」

「な、なんだって。どれどれ…てホントだ。思いっきり下着姿だし」

「あ! すみません。それは違いました。そっちは関係ないんです。見てもらいたいのはこの2枚だけで…」


梓ちゃんは「しまった!」と言わんばかりに、さっと神の如き速さでその写真を奪い取ると、何事もなかったようにポケットにしまいこんだ。
その様子をポカーンと見つめる私とりっちゃん。
一体何が何やら…。


「な、なぁ梓…何で着替え中の――」

「キッ!」

「いやすまん、なんでもない」


りっちゃんの問いは梓ちゃんの物凄い形相によって遮られた。
その凄みのある睨みは、鬼の形相と言ってもいいかもしれない。
それはまるで、これ以上聞いたら、生きてきた事を後悔させると言っているように見えた。

結局私たちは、その写真については何も聞けず仕舞いだった。
いったい、あの写真を何にどう使っているのか、かなーり気になるところです。

でも間違っても聞いてはいけません…。

これを聞いたりしたら、私の可愛い眉毛ちゃんは間違いなくむしり取られてしまうだろうから。
そんな事になったら私、明日から本物の沢庵を装備して学校に来なければなりません。
そんなのさすがに耐えられないわ。


「こほんっ! とりあえずこの2枚を見てください」

「あ、ああ…」

「はい…」


私の心の内なんてどこ吹く風。
梓ちゃんは、例の2枚――幼稚園児な唯ちゃんと小学生な唯ちゃん――の写真を指差した。


「ていうかさー、どこからこんな写真手に入れたんだ?」


確かにりっちゃんの言うとおり。
ごもっともな質問だった。


「憂にもらったんです」


ああ…なるほど。


「何でまt「え、えーと!」


りっちゃんが何か言おうとしていたみたいだったけど、私はそれを遮った。
あんまり余計な質問すると、また殺意の篭った目を向けられそうだし。
ここは当たり障りのない質問をするべきだ。


「あ、梓ちゃん。この写真に何か気になるところでもあるの? 見たところ変わったところはないし…」

「ええ、変なところなんてありませんよ。あるはずがありません」


梓ちゃんは私の言葉に、ふふんっ、と得意げな顔を見せる。
何故そんなに得意げになるのか、理解が追いつかない。


「それで、結局この写真がなんだっていうんだよ」


痺れを切らしたりっちゃんが、やれやれと言った感じで、遂に核心をつく。


「ええ…それはですね」


すると梓ちゃんは途端に真剣な顔付きになった。
その真剣な雰囲気に、私たちは思わずゴクリと喉をならす。
いったい何が梓ちゃんをここまで真剣にさせているのか…。
いまだかつて見たことのない梓ちゃんの表情に、私達は驚きを隠せません。

しかし、梓ちゃんの次の一言は私の予想を遥かに上回っていた。


「可愛いと思いませんか?」

「は?」
「え?」


ザ・ワールド!! 今この瞬間、確かに時間が止まった!!
動き出すまでに一体どれだけの時間を要したことか。
1分だったのか、それとも10分だったのか
もしかしたら10秒も経っていなかったかもしれない。

そんな中りっちゃんが恐る恐る口を開いた。


「な、なんだって? あはは…ちょっと聞き間違えたかなー。何か唯が可愛いとかなんとか聞こえたんだけど…」

「ええ、言いましたよ」


梓ちゃん言い切った!
言い切りましたよこの子!
唯ちゃんが可愛いって!
え?え?何?どういうこと?
一体梓ちゃんに何があったの?


「やばいですよね、コレ。唯先輩可愛すぎます。天使ですよ天使」

「あ、そ、そう…か」


いつもと違う梓ちゃんにりっちゃんちょっと引き気味。


「もうどうしたらいいか分かんないんですよ。見てくださいよこの可愛い生き物。この無邪気な笑顔に私はノックアウトです!」

「そ、そうね~」


私達も梓ちゃんにノックアウト寸前よ。

梓ちゃんは、私達を置いてけぼりにして一人でヒートアップしていく。
そこにはいつもの真面目でツンツンした様子なんて欠片も無い。


「特にこの髪型がポイントなんですよ! 見てください小学生の頃の唯先輩を。何ですかこの天使。髪の毛の両端ちょこんと結んだりしちゃって。思わずピコピコって擬音まで聞こえてきそうじゃないですか! この天使は一体私にどうして欲しいんですか!?」

「さ、さぁ~…」

りっちゃんがめげずに相槌を打っている。

頑張って!りっちゃん!
私はもうどうしたらいいか分からないの。
世界は貴女の手に託されたわ!


「まったく!唯先輩のせいで私寝不足ですよ。昨日なんて、この写真眺めてたらいつの間にか朝方ですからね。ホント、何とかしてください」


何とかして欲しいのは私達の方です♪
誰か助けて。ヘルプミー!


「可愛い…可愛すぎるよ唯先輩。私はこの溢れんばかりの愛しさをどこにぶつければいいんでしょうか…」


そうね、ベルリンの壁にでもぶつけたらいいんじゃないかしら。
きっと、梓ちゃんの愛は国境だって破壊しちゃうわ。
冗談抜きに。


「あ、そうだ。この髪型、唯先輩してくれないかなぁ…。頼んでみたいけど…なんか恥ずかしいし…」

「「……」」


いつの間にか私とりっちゃんは、梓ちゃんの言葉に耳を傾けているだけになっていた。
何も聞かなくても、喋ってくれるから。


「はぁ、梓のヤツ、一体どうしちまったんだ?」

「そうねぇ…唯ちゃんの可愛さに理性を失ったってところかしら…。暴走してるとも言うわね」

「あはは…」


一人ぶつぶつ言っている梓ちゃんを尻目に、私たちは言葉を交わす。
正直、私たちは苦笑するしかなかった。
昨日までの梓ちゃんとは何もかもが違うんだもの。
梓ちゃんの偽者と言われたら、きっと信じてしまうくらいに。


「梓はもうダメかもなー…」

「そ、そうね…」


ちょっとひどいかもしれないけど、確かにりっちゃんの言う事にも一理ある。
もう戻ってこれない所に、梓ちゃんはいるのかもしれない。
三途の川を渡ったらもう2度と戻って来れないのと一緒だ。


そんな事を考えている私達を他所に、唯ちゃんへの愛を語りつくしていた梓ちゃんは、遂に写真の唯ちゃんにちゅっちゅっとキスをし始めた。
それを見て私は確信した。もう梓ちゃんは戻れないと。


「でもまぁ、確かに唯は可愛いよな」

「そうね」


りっちゃんは言った。確かに唯ちゃんは可愛い。
梓ちゃんがおかしくなってしまうのも分からなくもない。
理性が吹っ飛んでしまうほどの愛らしさが、あの唯ちゃんにはあるのだろう。
とは言っても、梓ちゃんのはさすがに行き過ぎな気もします。


「でも唯も可愛いけど、やっぱ澪には敵わないよなー。あはは♪」


――ピシッ


それは何気ない一言だったんだろう。
しかし、りっちゃんがそう言った瞬間、部室はピシリと軋んだような音を立てる。
部室内の温度が一気に下がったような気がした。
主に、梓ちゃん付近から。


「あの…律先輩? 今なんて言いました?」

「は? いやぁ、唯も可愛いけど、澪の可愛さには負け――ぴっ!」


りっちゃんは言葉を途中で止め、思わず悲鳴にも似た声を上げる。
それもそのはず。梓ちゃんは殺気の宿った瞳でりっちゃんを睨み付けていたから。
それはさしずめ、蛇に睨まれた蛙です。
この私ですら、恐怖から声を発することが出来ませんでした。
一歩でも動けば喉笛を掻き切られそうです。


「ははは…、何をバカなことを…」

「お、おい…梓?」

「冗談はよし子さんですよッ!! 律先輩ッ!! 気でも狂いましたかッ!!」


梓ちゃんが怒声混じりに言い放った。
その瞳には明らかな怒りを宿している。


「な! なな、なにを?」


りっちゃんは恐怖から声が裏返っている。

私はただ黙って二人の様子を伺っていた。
決して、怖いから二人の間に入りたくないとか、そんなヘタレたことは考えてない。
ホントですからね…?


「言うに事欠いて唯先輩より澪先輩の方が可愛いって? ふざけないでくださいッ!!」

「ふ、ふざけてなんかないやいっ! どう見たって澪の方が可愛いだろー!」


おお!
りっちゃんが梓ちゃんに言い返した。さすが部長!さすが澪ちゃんの夫!
たとえ恐怖を覚えても立ち向かっていくその姿勢、尊敬に値します!
澪ちゃんなら間違いなく、頭を抱えて「見えない聞こえない見えない聞こえない…」と、うずくまるだろう。


でも結局、それも長くは続かなかった。
梓ちゃんに勝てると思ったのは所詮儚い夢だったのです。


「だ、誰になんて言われたって唯より澪の方がっ――ぴぇ!?」

「…」


ギンッという眼力だけで、りっちゃんの言葉を遮る梓ちゃん。
目からビームでも放ってしまいそうな勢いです。


「はぁ…」


梓ちゃんは溜息をついて、俯いた。そして首を左右に振る。
まるで呆れてものも言えないって感じの様子だ。

梓ちゃんからは凄まじいまでの負のオーラがどんよりと漂って。
私達の心を恐怖という名の鎖で縛り付ける。
もう、彼女を止められるのは一人だけ。
もちろんそれは唯ちゃんで。でも…。
唯ちゃんがいない今、この中で梓ちゃんを正気に戻せる存在は無いにも等しい。


「確かに、澪先輩は可愛いかもしれません…。現に私もそう思っていた時期もありました。澪先輩の縞パン見て鼻血噴いたりもしました。それは認めましょう」


梓ちゃんは俯いたまま静かにポツポツ語り始める。
しかしそんな静寂も長くは続かず、梓ちゃんは顔を上げると目をクワっと見開き捲し立てるように声を荒げ始める。


「しかし!! それはあくまで人間レベルの可愛さですっ! その可愛さも唯先輩の前では霞んで見えますよっ! 何故だと思います? だってそうでしょ? 所詮人間は天使には敵わないんですよ! この意味が分かりますか律先輩!」

「わ、わかりましぇん…」

「アホですかっあなたはッ! だからあなたはいつまで経ってもオデコ要員なんですよッ! このデコッぱち!!」

「う…うぅ…しょ、しょんな…しどい…ぐす…」


ああ!
ぼろくそ言われてりっちゃんが涙目になっていく…。
誰かりっちゃんを助けて上げて!
このままじゃりっちゃん泣いちゃう。

そう思うなら私が助けろよ、とは言わないでください。私には荷が重過ぎます。
生身でライオンに向かっていく勇気なんて、私にはありませんから。
りっちゃんには悪いですけど、ここはいつも通り傍観者に徹します。
ごめんね、りっちゃん。


「MMQだの縞パンだのの時代はとうの昔に終わってるんです!もはや化石ですよ化石ッ!」


言いたい放題の梓ちゃん。さすがに化石はヒドイ。
澪ちゃんが聞いたらきっと、立ち直れないでしょうね。


「私はこの写真を見た瞬間に気付かされました。唯先輩は神が使わした天使なんだと。この世に唯先輩より可愛い存在などいやしないとッ! 見てください私の愛の深さをッ!」


梓ちゃんはそう言って、どこに持っていたのか分厚いアルバムを取り出した。
アルバムが開かれると、そこには沢山の唯ちゃんの姿が。
赤ん坊から始まり、幼稚園児、小学生、中学生、高校生と、アルバムのページをめくる度、だんだんと唯ちゃんは成長していく。
そのあまりに凄まじい光景に私は目を奪われる。


「こ、これはまさかッ!」


傍観者に徹すると決めておきながら、思わず声を上げてしまう私。


「ふふ、ムギ先輩は気付いたようですね。そうですッ!これは唯先輩が生まれてから今までの成長の記録。”平沢唯メモリアルフルコンプリート”ですッ!」


な、なんだってーーーー!!


「う、うそだろ…そんなのどうやって…」


りっちゃんも驚きを隠せない。
驚愕の表情で梓ちゃんを見つめている。


「ふふふ、私には木下藤吉郎ばりにできた親友がいますから」


木下藤吉郎――のちの豊臣秀吉ですね。
猿と呼ばれ、あの織田信長を天下人に導いたとされる存在。


「間違いなく憂ちゃんね」

「ふ…正解です。しかもこれは使用、観賞用、保存用と計3枚ずつあります」


あ、梓ちゃん…貴女はどこぞのオタク女子高生ですか…。
まぁ、唯ちゃんオタクだから間違いではないですけど。


「ていうか、布教用がないのね?」

「当たり前です。誰が唯先輩を布教したりするものですか。先輩は私だけの天使です」


な、なるほど…。
じゃあ「使用」って言うのはまさか…。

……。

や、やめておきましょう、考えるのは…。
何だか深く考えちゃいけない気がする。


「ちなみに、これはまだ未完成です。完成度で言えば20%と言ったところでしょうか。律先輩、ムギ先輩、その意味はもちろん分かりますよね?」


梓ちゃんが聞くと、私達は同時に唾を飲み込んだ。
だって、未完成って事はまだまだ先は続いていくって事で。


「ま、まさか…梓ちゃん。貴女、唯ちゃんの生涯をファイリングするつもりなの…?」


私が核心をつくと、梓ちゃんはフっと不敵な笑みを浮かべた。


「その通りです」


そう、言い切った。


「あ…」
「う…」


私達は衝撃の余り、ただただ言葉を失った。
まさかここまでの覚悟が梓ちゃんにあるなんて、正直思いもしなかった。
梓ちゃんにここまで思わせる唯ちゃん。
実は一番恐ろしいのは、その唯ちゃんなのではないだろうか。


「これで分かったでしょう律先輩…。唯先輩は私にここまでさせる存在なんですよ? 貴女にここまでの覚悟はありますか? 自分の人生を掛けられますか? それが出来ないならさっさと悔い改めてください!」

「うぐっ…うぅ…」


りっちゃんは苦虫を噛み潰したような顔をしている。
目尻には涙を溜めて、今にも号泣してしまいそうだった。

そしてその時はすぐやってくる。
りっちゃんの目からは大粒の涙がぽろぽろと零れだした。
そして。


「うぅうわーーーーーん!! 梓のバカヤローー! 澪に言いつけてやるからなぁぁあ!!」


りっちゃんはそんな事を叫びながら、ダダっと駆け出し、部室から飛び出していった。
後に残された私と梓ちゃんは、ただ黙って、その後姿を見つめていた。


「梓ちゃん…」


私が呼びかけると、梓ちゃんは首を左右に振る。


「仕方ありませんよ…。お互い譲れないものがあるなら、衝突は必至です。今回は私が律先輩の上を行きましたが、今度はどうなるか…。あの人はこんな事くらいで終わってしまうような人じゃありませんからね。きっとリベンジに来ますよ」


そう言った梓ちゃんの表情は、まるで生涯のライバルを得たような、誇らしげな顔だった。


って、何で微妙にいい話っぽくなってるんですか?
ていうか、りっちゃん大丈夫かしら?



私がりっちゃんの心配をしていると、またもや音楽室のドアが開かれた。


「おいーっす!」


入ってきたのは、この件に実は一番関係していた唯ちゃんでした。
りっちゃんと入れ違いのように入ってきた唯ちゃんは、私達の姿を認めるとほわっとした笑顔を見せる。


「やっほー、あずにゃん、ムギちゃん」

「どうもです唯先輩」

「今、唯ちゃんの分のお茶入れるからね」

「ありがとームギちゃん」


ニッコリと微笑む唯ちゃんだったけど、急に「あっ」と何か気付いたように声を上げる。


「そういえばさっき、りっちゃんが大声上げながら廊下走り回ってたけど何かあったの?」

「え、えーと…りっちゃんは何て言ってたかしら?」

「え? うーんと、確か『澪しゃんは世界一じゃーー!!』とか何とか叫んでた気がする。さっきまで澪ちゃんも一緒だったんだけど、今はりっちゃんの事追い掛け回してるよ。『何恥ずかしい事言ってんだー!』って」

「そ、そう…」


りっちゃんも大分壊れ気味のようですね。
ご愁傷様です澪ちゃん。


「ねーねームギちゃん!お茶まだー?」

「へ…? あ、ああ、はいはい、もうちょっと待っててね?」


いつの間にか席に座っていた唯ちゃんは急かすようにそう言った。


「あの唯先輩、実は折り入ってお願いがあるんですけど」

「んーなあに、あずにゃん?」

「あの、これなんですけど…」


梓ちゃんはさっきまで持っていた小学生な唯ちゃんの写真を本人に見せる。
そういえば、さっきまで机に置かれていたアルバムやら他の写真は全て仕舞われている。
いつの間に…。


「わー懐かしー! これ小学生の頃の私だよー!」

「え、ええ…それでその、唯先輩…これと同じ髪型にしてみて欲しいんですけど…」


あ、梓ちゃん…。
そこまでその髪型見たいんですね。
さっきまであんなに葛藤していたのに。


「え? 別にいいけど…でも私ゴム持ってないよ?」

「これ使ってください。私のスペアのゴムです」


そう言って、いつ取り出したのかも分からないゴムを2つ唯ちゃんに差し出した。
さっきから気になっていましたが、ずいぶんと用意がいいですね梓ちゃん。


「おっけー!じゃあ早速…。あっ、ちょっと恥ずかしいからあっち向いてて~」


えへへっとちょっと照れる唯ちゃん。
その照れ顔が可愛いすぎて、思わずお茶のポットを落としそうになる。
梓ちゃんはポーカーフェイスを気取っているが、絶対正気ではないはずだ。
現に、頬には赤みが差している。

私達は言われた通り、席を立って後ろを向いた。
背後では唯ちゃんが髪型をセットしている最中。
半ばドキドキしながら、その瞬間を待つ私達。

梓ちゃんに目をやると、梓ちゃんは胸に手を当てて目を閉じている。
きっと心臓がバクバクなって、少しでも鎮めようと思ってるんだろう。
そんな健気な梓ちゃんをちょっと可愛いと思ってしまった。


しかし私はすぐに後悔することになる。


どうして最初に梓ちゃんのお願いを止めなかったんだろう、と。


そしてその瞬間はやってきた。


「出来たよ~」


唯ちゃんが言った。
ゆっくりと振り向く私達。

そして目の前の光景に目を奪われる。


「えへへ、どっかな? 久しぶりだからちょっと恥ずかしいかも」



梓ちゃん風に言うなら、まごうことなき天使が、そこにいた。
両側の髪をちょこんと結んで、結ばれた髪の毛がピコピコ揺れている。
小学生時の髪型で、はにかんだような笑顔を見せる唯ちゃんは、さすがに照れているのか、顔が少し赤い。
その表情がまた、唯ちゃんの可愛らしさを惹きたてている。


やばい、と思った。
これはさすがにやばすぎる。
梓ちゃんじゃないけど、これは可愛いなんてものを通り越している。

私はハッ!とした。

マズイッ!
こんな姿を今の梓ちゃんが見たら――!


「あ、梓ちゃッ――!」


そう思って梓ちゃんに目を向けようとした瞬間――!



漆黒の閃光とともに、一陣の風が吹き抜けた。



その存在は、長い黒髪のツインテールをなびかせ音も無く唯ちゃんに向かっていく。


ああ…。遅かった…。


そう思った次の瞬間、唯ちゃんの悲鳴が音楽室に響き渡った。


その後、夜になっても部室からネコの鳴き声がやむ事はありませんでした。
その泣き声はまるで発情期のネコの如く。
しかし、何があったのかはあえて言わないでおきます。


ただ、私が謎の多量出血により一週間の入院を余儀なくされたことをここに記しておきます。





おわれ!




[あとがき]
遊び心満載の8話ネタでした。
なんだこれ?どうしてこうなった?
あずにゃんの暴走っていうか私の暴走です、すみません(汗)
すでにあずにゃんが原型留めてない気がします。
でもいいですよね?たまにはSSにも遊び心は必要なんですよ!

たぶん、これがあずにゃんの最終形態です。
唯先輩ラブが高じて、いつの日かこの境地に辿り着くのがあずにゃんの運命ですw

でも最後まで読んでいただきありがとうございます!
[ 2010/06/01 05:27 ] 未分類 | TB(0) | CM(5)
感動しました
小説の内容と量の多さが素晴らしかったです!!
是非◆相互リンク◆しませんか?
『けいおん!倶楽部』
http://90.xmbs.jp/kEIONn/
ここの管理人のσ)Д`)です。けいおん!100%のサイトです。サイトに来る方々の求める物が近いと思いますのでお互いのアクセスアップに繋がるかと思います。もしよかったら、メアドに連絡or雑談板の相互リンクまでお越し下さい(´・ω・)待
[ 2010/06/01 16:21 ] [ 編集 ]
最後は唯と交尾か・・・
でも唯が可愛すぎるから仕方ないな
あの髪型なんでしょうね、ツーサイドアップなのかな
あと澪と唯は可愛さの系統が違うからなかなか優劣がつけられないよね
[ 2010/06/02 00:04 ] [ 編集 ]
あずにゃんが
ロリ唯たんにハアハアする展開がきましたね。あずにゃんに対抗心を燃やすりっちゃん隊員も面白かったですw

あとむぎちゃんはそろそろ増血剤を定期的に投与しないと命に関わると思います。

それと長編SS全話読ませてもらいました。リンク貼らせていただいたんで、私のブログもリンクやらブロとも申請よろしくお願いします。
[ 2010/06/02 01:59 ] [ 編集 ]
意見が近いです。
うちは、このあずにゃんよりヤバいです(笑)
あずにゃんと神ごときを比べるのもおこがましいとリアルにも言ってますしね♪


本当、あずにゃんにかけては誰にも譲れない、

そんな思いについては同意です
[ 2010/06/02 16:54 ] [ 編集 ]
梓壊れた!!www
ま〜、無理もないかww
[ 2010/11/02 01:35 ] [ 編集 ]
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