※拍手お礼ss6
※追記からどうぞ!
とある休日の昼下がり。
私は唯先輩の部屋にいた。
今は二人してベッドの上で寝そべっている。
ギターの練習をするために来たはずなのに、いつの間にかゴロゴロしてて
ただ無言で、ボーっとベッドに横たわり天井を見上げる。
会話がないからって居心地が悪いということはなかった。
それどころか、どこか落ち着いた空気に心地よさを感じてしまう。
きっと唯先輩と一緒だから、そう感じてしまうのかもしれない。
「ねー…あずにゃん…」
ふいに唯先輩が口を開き、私の名前を呼ぶ。
その声はどこか眠たげで、いつもよりも間延びしていた。
「…はい、何ですか?」
かくいう私も、少し眠くなってきていたせいか、声に力がこもらない。
しかし――
「…ちゅー、してみない…?」
何を思ったのか、唯先輩は唐突にそんな事を言ってくる。
私はといえば、その突然のお願いによって、一瞬でおねむモードから覚醒した。
「はぁっ!な、何言って……っ!」
るんですか!…とまでは言わせて貰えなかった。
驚いて飛び起きた私の肩をすばやく掴むと、そのままの勢いで押し倒してきたのだ。
さすがに驚いて、言葉だって詰まる。
目の前には先輩の顔。
潤んだ瞳に朱に染まった頬、そして瑞々しく潤う唇がそこにあった。
それを意識して、私の胸がドキドキと高鳴り始める。
意識を逸らそうと、必死に手足を動かそうとするけど、先輩の腕が、足が、それを許さない。
こうなったらもう、言葉で抵抗するしかあとはない。
「ダメ?…あずにゃん」
そんな事を言いながらも、ゆっくりと私の顔に自分の顔を近づけてくる。
「だ、ダメです…! そう言う事は好きな人にしてやってください!」
「…私はあずにゃんの事、好きだよ?」
突然の告白に驚く暇もなく、唯先輩はさらに顔を寄せてくる。
本当なら一瞬で詰められる距離のはずなのに、それをしないで、ゆっくりと近づいてくる。
本当にゆっくり、ゆっくり…その距離感を楽しんでいるみたいに。
「あずにゃんは私の事キライ…?」
「き、キライじゃないですけど…」
話している間も決して、顔を近づける事をやめない。
15cmくらいあった距離が、今では5cmもなかった。
「じゃぁ…スキ?」
「……スキ…じゃ、ないもん…」
これが私の最後の抵抗。
もちろん分かってたよ。こんな抵抗は意味が無いって…。
先輩に押さえつけられた時点で、この結末は決まっていたんだ。
私は先輩の腕を無理に振りほどこうとしなかった。
無意味な抵抗の言葉を並べている間も、その柔らかそうな唇から目が離せなかった。
そして何より、先輩にスキと言われて、嬉しいと感じてしまっている自分がいた。
私はいつの間にか、唇を突き出していた。
先輩がそれを重ねやすいように…。
先輩もそれに気付いたのか、一瞬ふっと微笑むと目を細めた
そして唇が触れる瞬間――
「スキだよ…」
今一度、愛の言葉を囁き、そのまま唇を重ね合わせた。
「…ん…」
先輩の唇はとても柔らかくて、暖かくて、そしてちょっぴり濡れていた。
私は、その優しいキスに身も心も蕩けていくような感覚に陥いっていた。
「ふぅ…んん…」
唇の隙間から吐息が漏れたのと同時に、先輩はゆっくりと唇を離す。
「…ぁ…」
「ふふ…」
ちょっと名残惜しい気持ちで、私は思わず小さく声を上げてしまう。
先輩もそれに気付いて、優しく微笑んでいる。
「ねぇ、あずにゃん」
「…なん、ですか…?」
私は唯先輩の目をしっかりと見つめ、問い返す。
「…もう一回、してもいい?
「…」
「あずにゃん?」
「…ダメって言ったら、やめてくれるんですか?」
「………えへへ、やめてあげないよー♪」
私の質問に唯先輩は一瞬目を見開き、あははっと楽しそうに笑いながらそんな事を言ってくる。
そして今度は一瞬でその距離を詰めると、優しく唇を落とした。
「んんっ…」
ちゅっと言うリップ音の後、一瞬唇が離れたと思ったら、すぐに唇を押し付けてくる。
今度は強く、唇の感触を確かめるように…。
キスの最中、先輩は私の手に自分の手を重ね、指を絡めてきた。
私もそれに応え、しっかりと手を握る。
やがてキスは激しさを増していき、どちらからともなく舌を絡めていた。
「ちゅっ!…れろ…ちゅぷっ!…はぁっ…んんっ!…」
激しく舌を絡め、舌を吸い、お互いの唾液を交換し、さらに強く深く唇を押し付けていく。
唯先輩の唾液は、ほんのりと甘く、私にとっては甘美な媚薬にしかなりえない。
熱く、蕩けるようなキス。そこに理性や優しさなんて欠片もなかった。
ただ貪欲に相手を求める事しか頭になく、一心不乱に唾液を啜る2匹の獣。
まるで発情期の猫のよう…。
息苦しくなってきたころにはすでに頭がボーっとしており、全身が燃えるように熱くなっていて
ほとんど酸欠みたいな状態で、ようやく唇を離した私達。
唇を繋ぐ大量の唾液の橋を気にも留めず、大きく息をついて呼吸を整える。
「はぁっ…はぁっ…ごめん、あずにゃん…」
「はぁっ…はぁっ…ふぇ…?」
酸素の足りないボーっとした頭では、その謝罪の言葉の意味を理解することはできなかった。
けど、そんなのお構いなしに唯先輩は言葉を続ける。
「私…もう、我慢できないや」
先輩はそう言うと、唾液に濡れたその唇で、私の首筋に吸い付いてきた。
その痺れる様な甘い刺激に、私はただ、甘い嬌声を上げることしかできなかった。
そう――それは宴の始まり――
私達は、快楽と言う名の海の底で、互いの全てを求め合った――
END