※追記からどうぞ!
唯先輩にとっては2年目、私にとっては初めての夏合宿――。
これはそんな私たちの秘密のお話です…。
時刻は深夜、他の皆さんが寝静まる中、私と唯先輩はギターの練習中。なぜこんな事になっているかと言うと、トイレに起きた私が偶然ギターの練習をしている唯先輩を見つけたのが発端だった。
二人きりの練習。前から唯先輩とは、一緒に練習したいと思っていたから、すごく嬉しかった。
「できたー!」
「あずにゃんに出会えてよかったよ~・・・・あ~ずにゃ~ん!」
演奏が上手くいって嬉しかったのか、満面の笑みを浮かべて私に抱きついてくる唯先輩。
「わわっ!」
唯先輩が抱きついてくるのはいつものことだけど最近では嬉しく感じている自分がいる。
そのことを自覚して恥ずかしくなった私はいつもみたいに先輩を突き放す。
「あ、暑いから放してください!」
「え~いいじゃん!もう、あずにゃんは可愛いね♪」
離れるどころか、今度はさらに頬ずりまでしてくる始末…。
もう…こんなことされたら…私…。どきどきしちゃうよ…。
唯先輩のバカ・・・。私だって女の子なんですからね?
こんな事されたら勘違いしちゃいますよ…?
「ほ、ほら。そろそろ練習も終わりにしてもう寝ましょう?」
なかなか離してくれない唯先輩。胸のどきどきが先輩に聞かれてしまわないか心配で――。
私はそれを誤魔化すように、そろそろお開きにしようと告げる。
「わっ!ホントだ。もうこんな時間」
唯先輩は私を開放し時計に目をやると時刻はすでに深夜の2時を回っていた。練習開始から、かれこれ2時間以上経過していることが分かる。普通ならもう寝ていてもおかしくない時間だ。
「ごめんねー?こんな時間までつき合わせちゃって・・・」
「そ、そんなことないです。唯先輩と練習できてホントに嬉しかったですから・・・・」
「あはは、ありがと♪あずにゃんは優しいね・・・・・・じゃあ、そろそろ寝よっか?」
「は、はいっ」
ギターをしまい部屋の電気を消すと、頭にクエスチョンマークを付けながら唯先輩が疑問符を浮かべた。
「あれ?」
唯先輩が見つめる先は、電気を消した部屋の窓から差し込む月明かり。
それが気になったのだろう。唯先輩は駆け足でベランダに出ていった。
「うわ~!・・・・あずにゃん、あずにゃん!ちょっと来てみて、外すごいよ!?」
感嘆の声をこぼし、慌てた様子で呼ぶ唯先輩に、私も後に続くように外に出る。
「す、すごい・・・・・」
そこで私が見たのは、視界一杯に広がる満天の星空だった。
ただただすごい、という感想しか浮かばなかった。
息を飲み、呆けたように見とれることしかできない。
そんな時、不意に手がぬくもりに包まれる。
「綺麗だね・・・・・・」
私の手をキュッと握りニッコリと笑顔を見せる唯先輩。
ドキンっと、その笑顔を見た瞬間、私の胸が高鳴る。
いつもと同じ唯先輩の笑顔のはずなのに・・・。
いつもは子供っぽい無邪気な笑顔なのに…。
月明かりに照らされた先輩の笑顔は、何と言うかその、すごく神秘的だった。
「そ、そうですね・・・その・・・すごく・・・綺麗です」
唯先輩のその笑顔を直視できなくて、私は空を見上げ心を落ち着かせる。
(うう…一瞬…唯先輩の笑顔の方が綺麗かも、とか思っちゃった…)
ふいに唯先輩が嬉しそうに微笑んだ。
「ふふ」
「ど、どうしたんですか?」
「えっとね・・・なんだか幸せだな~って。こんな綺麗な星空をあずにゃんと二人で見る事が出来て・・・」
「・・・・・・・・・」
「最高の思い出ができたよ・・・・・・・・ありがと、あずにゃん」
唯先輩はさっきよりも強く私の手を握り笑顔で私にお礼を言う。
私も負けじと唯先輩の手を強く握り返す。
「お礼を言うのは私の方ですよ・・・・唯先輩」
「え?」
「私は…その…私も唯先輩と出会えて本当によかったです」
そっと唯先輩の肩に頭を乗せて寄り添う。
唯先輩の事を愛おしいという気持ちが私の中で形になっていくのを確かに感じていた。
「あずにゃん・・・・・・・・」
ギュッと、唯先輩はそっと私を抱きしめた。
唯先輩の瞳を見つる。唯先輩の瞳にも私が移っている。
潤んだ瞳、紅潮した頬。きっと私も同じような顔してるんだろうって思う。
私はそっと瞳を閉じた。
唯先輩の吐息を鼻先に感じたのは一瞬で。
私たちは満天の星空の下、口付けを交わした。
**
「えへへ♪・・・・・・なんか恥ずかしいねぇ」
あれから私たちは部屋に戻って来ていたわけだが。
唯先輩が今日は一緒に寝ようというので、今私の部屋には唯先輩がいた。
一応最後まで渋ったんだけど、唯先輩に強引に押し切られてしまったのだ。
「もう・・・・・・今日だけ特別・・・ですよ?」
ホント言うと、いろいろ我慢できるか心配だった。
雰囲気とはいえ、その、き、キスまでしちゃったし。
うう・・・唯先輩の唇の柔らかさ・・・思い出しちゃったよぉ…。
「ぶー、そんなこと言わないで明日も明後日も一緒に寝ようよ~・・・ちゅーまでした仲じゃん!」
私の気も知らないで、とんでもないことを口走る唯先輩。
「な、なんてこと言うんですか!・・・・・そ、それにそのことは他の皆さんには絶対ナイショですよ!?」
「わかってるよ~。二人だけの秘密だよね?・・・ふふ♪あずにゃん、だ~い好き!」
そう言っていつものように抱きしめてくる。
「い、いい加減にしてください!」
唯先輩の身体の柔らかさと甘い香りに理性が薄れていくのを感じる。
落ち着け私・・・、クールになるのよ!あずさ!
「ぶーぶー、あずにゃん私のこと好きじゃないのぉ?」
ぶっ!な、なんて事を聞くんだこの人は!
「べ、別に嫌いじゃないですけど・・・・・」
素直に答えるのが何か恥ずかしくて、曖昧に答える。
「じゃあ・・・・好き?」
潤んだ瞳で私を見つめてくる唯先輩。
(・・・・・・・・・・はっ!・・・・・・・・くっ、その顔は反則ですよ!)
はぁ…もうギブアップです…。
「え、えと・・・その・・・す・・・好きです・・よ」
「あずにゃ~ん!」
嬉しそうに私の頭を抱き寄せ、自分の胸に押し付ける唯先輩。
そのあまりの柔らかさと甘い香りに私の鋼の精神も崩壊寸前でした。
(ああ…私…もうゴールしていいですか?)
そんなことを思いながら二人の長い長い夜は更けていったのでした――
―おまけ―
それは朝早くの事である。
「夏合宿恒例!『寝顔を撮っちゃうぞ☆』のコーナーです!・・・・ただ今私たちは中野梓さんの部屋に来ています!」
「うぅ・・・何で私まで・・・」
朝も早くから元気な律だが、澪の方はまだ目がしょぼしょぼしている。
「それではムギに借りた予備のキーで・・・・・」
「ムギも協力してるのか・・・・・」
律はさっそくキーでドアを開け、そっと中に入る。
「失礼しま~す・・・・・・・・」
――?
「あれ?」
「すぴー」
「う~ん、う~ん」
梓一人かと思われていた部屋には、二人の少女が眠っていた。
梓に抱きつき幸せそうな寝顔を見せる唯と、唯に抱きつかれ寝苦しそうな梓である。
「いや~唯に先越されちゃったか~・・・さすが唯だなー」
「・・・・この部屋鍵がかかってたよな?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
そんな二人を他所に、秘密の夜の出来事を知る二人は未だ夢の中だった――
END
【あとがき】
アニメと原作の融合ってことで書いたやつです
最初の方がアニメでおまけだけ原作ですね
やっぱりゆいあずと言えばあの夏合宿ですな
それと前作のコメント・拍手ありがとうございました
すげー嬉しいっす^^